司法書士試験対策・憲法21条その3
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
7 表現の自由の限界
表現の自由といえども無制約ではありません。しかしその重要な価値からその制約が認められる場合及び程度は、できるだけ厳格に必要最小限度に止められなければなりません。
本サイトの憲法12条その1で述べましたが、「二重の基準」の理論が大事です。表現の自由を制約する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法よりも、特に厳しい基準によって審査されなければならないという理論です。
表現の自由に対して用いられる厳格な基準として、次のものがあります。
8 事前抑制の禁止
表現活動を事前に抑制することは許されないという原則です。この原則が認められる理由としては、下記のように色々とあります。
①事前規制は、規制すべきかどうかは憶測で判断せざるを得ないので、安全を期して規制してしまうというように、規制の範囲が広くなりやすい。
②憶測で規制するので、恣意的な判断が入る余地が広くなり、公権力にとって不都合な表現が妨害されがちである。
③憶測で規制されるので、どのような場合に規制されるかがわかりにくく、表現者が規制を恐れて自己抑制をしやすい(萎縮的効果)
④事前抑制されても、問題のない表現は裁判で取り消される事になりますが、時宜性を要する表現にとっては致命的である。表現者が規制を恐れて自己抑制し易い(萎縮的効果)。
(ロ)例外的に事前抑制が許される場合の判例
☆司法書士試験対策 判例
北海道知事選挙の立候補予定者が自己を中傷誹謗する記事の掲載を予定している雑誌の出版差止を請求し、これが認められた。この仮処分が21条に違反するとして争われた事件。
「表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件の下においてのみ許容されうるものである」。
厳格かつ明確な要件とは「その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがある」ときであるとしました。本件ではこの要件が充たされており、例外的に事前差止が許されると判示しています。
(北方ジャーナル事件・最S61.6.11)
⇒判例は、次の二つの要件を充たす場合には事前差止を認めてよいとしている。
① 表現内容が真実でなく、公益目的でもないこと
② 被害者が重大かつ回復困難な損害を被るおそれがあること
(ハ)検閲の禁止
憲法21条2項の「検閲の禁止」が「事前抑制の禁止」と同じものか大別して2つの見解があります。ただ、どちらの説も以下の(a)(b)を導きたいという結論には差はありません。
(a)行政権が特定の表現を事前に規制することを絶対に禁止したい。
(b)裁判所が問題のある表現を事前に差し止めることは厳格な要件のもとで認めたい。
◆①検閲と事前抑制を区別する説(判例)
検閲は、21条2項で絶対的に禁止されるとします。
事前抑制は、21条1項で保障されるとします。ここでの事前抑制は、検閲以外の事前抑制を意味します。事前抑制は原則禁止ですが、例外的に裁判所による差し止めは認められるられると解します。
結局、(a)は21条2項の問題で、(b)は21条1項の問題とします。
この説では、検閲とは「行政権が思想内容等の表現物を、発表の禁止を目的として網羅的一般的に審査し、不適当と認めるときは発表を禁止すること」とします(狭義説)。判例はこのように21条検閲の概念を狭く解したうえで、検閲は絶対的に禁止されるとします。
◆②検閲と事前抑制を同じとする説
21条2項の検閲とは、事前抑制のことであるとします。そして、21条2項で定める検閲(=事前抑制)は原則禁止ですが、例外的に裁判所による差し止めは認められると解します。
結局、(a)・(b)とも21条2項の問題とします。
この説では、検閲(=事前抑制)とは「公権力が表現内容を事前に審査し、不適当と認めるときはその発表を禁止すること」とします(広義説)。
この立場からは、裁判所による出版物の差止請求も検閲に該ることになりますが、裁判所が行うものであり濫用のおそれが少ないため厳格な要件の下に例外的に認められると解することになります。
◆①説と②説の検閲概念の整理
狭義説 広義説
主体→ 行政権 公権力
対象→ 思想内容等の表現物 思想内容
時期→ 発表前 発表前
裁判所による 検閲に該らない 検閲に該る
差止仮処分→ (検閲は絶対的禁止) (検閲は例外を認める相対的禁止)
☆司法書士試験対策 判例
欧米の商社に注文した八ミリフィルムや雑誌が税関で輸入禁止処分となった。この処分が検閲に該るとして争われた事件。
「検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき、網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することをその特質とするものを指す」と定義しました。
(札幌税関検査事件・最S59.12.12)
⇒税関検査が検閲にあたるかどうかですが、①表現物は国外で発表ずみである(発表を禁止していない)、②税徴収の目的で行うものであって、思想内容等の審査を目的としていないなどを理由に、検閲に該らないとしました。
☆司法書士試験対策 判例
家永三郎教授が、教科書の検定不合格処分に対して、検定は検閲に該るとして処分の取消を求めて争った事件。
「本件検定は・・・一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、検閲に当たらず、憲法21条Ⅱ項の規定に違反するものではない」
「本件検定による表現の自由の制限は、合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであって、憲法21条1項の規定に違反するものではない。」
(第一次家永教科書検定事件・最H5.3.16)。
⇒教科書としては発行できないが、一般図書としてなら発行できるので、発表禁止ではなく検閲に該らないとしました。