司法書士試験対策・憲法11条その4
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
6 人権の私人間効力
国家権力が国民の人権を侵害するのを憲法によって排除するというのが憲法の人権規定のそもそもの趣旨です。 しかしそれを理由に、憲法の人権規定は私人間には適用がない(無効力説といいます)と言ってしまうと、私人による人権侵害を防ぐことができず、国民の人権が十分に確保できません。
今日では企業、マスメディアなど巨大な力をもった国家類似の私的団体、社会的権力が生まれ、それらによって一般国民の人権が侵害されるという事態が生じて来たからです。
そこで、何らかの形で私人間にも人権保障を及ぼしていこうという考えが支配的です。以下の2つの考え方を理解しておきましょう。
①直接適用説
私人間においても憲法の人権規定を直接適用するとする考え方です。
⇒◆批判
私人間では私的自治の原則が基本原則であるのに、この立場では私人間の行為が大幅に憲法によって規律されることになり私的自治の原則が害される問題があります。また、人権はまず国家権力から守られなければならないという基本思想を見失わせる恐れがあります。
②間接適用説(通説・判例)
民法90条のような私法の一般条項に憲法の趣旨を取り込んで解釈・適用することによって、憲法の人権規定を間接的に適用していく考え方です。この考え方が私的自治の原則を尊重しつつ、憲法の人権規定の趣旨を実現するものとして判例・通説となっています。
なお、②説も人権の性質等から、私人間に直接適用される人権規定があることは否定しません。15条4項、18条、28条などです。
☆司法書士試験対策 判例
学生時代の学生運動歴を理由に本採用を拒否された原告が、特定の思想を理由に拒否することは、憲法の思想・良心の自由を侵害するとして争った事件。
憲法19条、14条は、「もっぱら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。」
「私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存する」
(三菱樹脂事件・最S48.12.12)。
☆司法書士試験対策 判例
定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた会社の就業規則は、性別による不合理な差別を定めたものとして民法90条により無効とされた事件
「上告会社の就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。」
(日産自動車事件・最S56.3.24)。