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2006年08月17日

司法書士試験対策 憲法前文

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

1 憲法の意義
憲法とは、国家の根本法をいいます。この憲法は、まず「国家」が守るべきルールであることに注意してください(99条)。ですから憲法に違反する法律等は無効ということになります。

憲法の価値観は、「個人の尊重(24・13条)」です。個人主義の思想が根底にあるのです。

この個人の尊重の最大の脅威は国家権力です(封建社会を考えるとわかりますね)。そこで、憲法は、個人の尊重のため、濫用の危険のある国家権力に歯止めをかけているのです。

*憲法を読むときは、思想書を読んでいると思われると良いでしょう。

前文は、個人の尊重の手段として「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」が憲法の基本原則であることを示しています。司法書士試験対策のはじめの一歩として、この3原則は覚えておきましょう。

実は、この憲法は様々な意味で使われます。ここで整理しておきます。

①形式的意味の憲法
憲法という名前で呼ばれる成文の法典(憲法典)を意味します。

②固有の意味の憲法
国の統治の基本ルールを定めた基本法のことを意味します。この意味の憲法は、およそ国家が存在する以上必ず存在するものであり、いつの時代どこの国でも存在します。

③立憲的意味の憲法(近代的意味の憲法)
国家権力を制限して国民の自由・権利を保障しようとする立憲主義の思想に基づく憲法を意味します。立憲主義とは、国家権力の行使を憲法に基づかせることによって、強大な国家権力を制限し、国民の自由・権利を保障しようという思想です。この憲法は、権力分立や基本的人権の尊重と結びつくことになります。

固有の意味の憲法と異なって、すべての国家がこれを有するわけではありません。日本国憲法もこの意味の憲法に属します。通常、憲法と言うときは、「立憲的意味の憲法」を指します。

【参考】フランスの人権宣言(1789年)16条は「権利の保障が確保されず、権力分立が定められていない社会は、憲法をもつものではない」と規定します。立憲的意味の憲法(近代的意味の憲法)の典型です。

*②と③は、憲法の内容に着目した区別です。

2 国民主権
主権は、次の3つの異なる意味で用いられます。資格試験で問われる可能性があります。

国家権力そのもの(統治権) 

たとえば、「北方領土には日本の主権が及ばない」と言う場合の主権です。

ポツダム宣言の「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾らの吾等ノ決定スル諸諸島ニ局限セラルベシ」という文章中の「主権」も国家権力そのもの(=統治権)という意味です。

日本国との平和条約の「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する」という文章中の「主権」も国家権力そのもの(=統治権)という意味です。

国家権力の最高独立性・対外的な独立性

たとえば、「日本は主権国家なので内政干渉はしてほしくない」という場合の主権です。

憲法前文の「・・・自国の主権を維持し・・・」の主権がこの意味です。

国政についての最高の決定権

この意味の主権が国民にあるとする考えが国民主権です。君主にあるとするのが君主主権です。

前文では、「ここに主権が国民に」とあるように国民主権を明らかにしています。

3 前文の法的性質(司法書士試験上、重要度は低い。)
憲法の前文も憲法の一部であり、法的性質を持つと解されます。よって、本文と同様に改正には96条の改正手続によらなければ改正できません。

しかし、法的性質(法規範性)があるといっても裁判規範性は否定するのが通説です。裁判所は、前文に基づいて裁判はすることができないという意味です。

というのは、①裁判規範とするには前文は抽象的すぎる、②前文の内容は本文各条項に具体化されており、前文を裁判規範とする必要がないというのが理由です。

裁判規範性があるという反対説もありますが、司法書士試験上、覚える必要はありません。

2006年08月16日

司法書士試験対策 憲法1条

天皇は、日本国の、象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

1 象徴とは

「象徴」とは、無形的なものを有形的なものによって具体化することです。シンボルともいいます。

明治憲法下では、天皇は「統治権の総覧者(=国家権力を一手に握って治める者)」と「象徴」としての地位をもっていました。しかし、日本国憲法では、天皇の「統治権の総覧者の地位」は否定され、「象徴」としての地位のみとなりました(通説)。

天皇は、「日本国」と「日本国民の統合」の象徴と位置づけられています。

2 主権
1条の文中の「主権」は、国政の最高決定権という意味です。天皇主権では無く、国民主権が基本原則であることを1条は述べています。司法書士試験対策として前文の「主権」の箇所を再確認してください。


☆司法書士試験対策・判例
 天皇が「象徴」であるという理由だけで、天皇に対する民事裁判権を否定しました(最H元.11.20)。

 ⇒象徴と民事裁判権は関係がないのに、象徴が理由で民事裁判権を否定するのは、象徴天皇を神聖視しするものであると批判されています。

司法書士試験対策 憲法2条

皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

明治憲法下では、「皇室典範」は憲法と同格の法規範でした。日本国憲法においては、憲法の下の法形式の通常の法律の1つです。

「皇位」とは天皇の地位ですが、「世襲」とありますので一定の血縁関係のある者のみが皇位を継承することになります。この世襲制は平等原則(14条)の例外です。

司法書士試験対策・憲法3条

天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

国事行為に「内閣の助言と承認」が必要であるということは、行為の実質的決定権が内閣にあり、天皇は内閣が決めたとおりに行動するにすぎないということです。よって天皇の国事行為は形ばかりの形式的・儀礼的行為と解されています。

また、天皇の国事行為は、内閣の助言と承認によってなされるため、天皇には責任はなく内閣に政治責任があるとされます。

国事行為は、6条・7条・4条2項で定まっています。

司法書士試験対策・憲法4条

1 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
 
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

戦前の反省もあり、天皇は政治にタッチしてはいけないことを定めています。

天皇が自ら国事行為ができない場合に、他の者が国事行為を行う制度として「摂政」と「臨時代行」があります。摂政は天皇が未成年であるとか心身に重大な事故が生じた場合の制度で(5条)、臨時代行は天皇が外国訪問や病気などで一時的に国事行為を行いえない場合の制度です(4条2項)。

臨時代行制度(4条2項)により、天皇が国事行為を他の者に委任する行為も「国事行為」であり、内閣の助言と承認が必要です。

摂政や臨時代行による国事行為も、当然、内閣の助言と承認を必要とします。

司法書士試験対策・憲法5条

皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

摂政は、天皇の委任よるのではなく(臨時代行(4条2項)と異なります)、皇室典範で定める原因があれば当然に設置される法定代行機関です。

「天皇の名で」とは、天皇に代わっての意味です。国事行為を行うには、やはり内閣の助言と承認が必要であると解されています。なお、5条は4条1項のみを準用していますが、2項も当然準用されると解されています。

司法書士試験対策・憲法6条

1 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

象徴としての役割を示すために、天皇に任命権を与えていると解されています。

最高裁判所の「長官」のみ、任命するのに注意をしてください。「長官」以外の最高裁判所裁判官は、内閣が任命します(79条1項)。

司法書士試験対策・憲法7条

天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

7条は、①号を司法書士試験対策上しっかり暗記しておいてください。また、7条にからむ問題点として「衆議院の解散」があります。

1 衆議院の解散
衆議院の解散とは、衆議院議員の任期満了前に、その全員の身分を喪失させることをいいます(45条但書)。

2 解散権は誰が持つか。
憲法7条③号により、形式的解散権が天皇にあることは明らかですが、実質的解散権はどこにあるかですが、通説は「内閣」にあるとします。その憲法上の根拠については争いがあります。

(イ)7条説
7条③号は、天皇は国事行為として「衆議院を解散する」とあります。天皇の国事行為は内閣の助言と承認によるのだから(3条)、実質的な解散の決定権は内閣にあると解する立場です。実務ではこれが慣行とされ、解散詔書も「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」という表現が用いられています。

(ロ)69条説
内閣の解散につき述べられている条文は69条しかないとして、69条に内閣の解散権の根拠を求める説です。

3 解散する場合はどのようなときか。
69条説は、解散原因を69条所定の場合、つまり衆議院の内閣不信任決議があったときに限定します(69条に限定)。7条説は、69条は解散事由の一場合を定めたにすぎず、解散事由はそれに限定されないとします(69条非限定)。

4 解散の効果
(イ)衆議院議員の任期(4年)満了前に、任期は終了する(45条)。
(ロ)衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる(同時活動の原則・54条)。
(ハ)解散の日から40日以内に総選挙を行い、総選挙の日から30日以内に、国会(特別国会)を召集しなければならない(54条)。
(ニ)特別国会の召集があったときは、内閣は総辞職しなければならない(70条)。

司法書士試験対策・憲法8条

皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。

戦前のように、皇室が莫大な財産によって不当な支配力を有しないように皇室の財産を国会のコントロール下に置いています。

司法書士試験対策・憲法9条

1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

大変重要な条文ですが、司法書士試験対策上は、出題される確率は低いです。

司法書士試験対策・憲法10条

日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

法律とは、国籍法のことです。

司法書士試験対策・憲法11条その1

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

1 人権とは
人権(基本的人権)とは、人が生まれながら当然にもっている権利をいいます。個人の尊重の観点から不可欠なものを人権と呼ぶのです。

2 人権の分類
人権はさまざまな角度から分類できますが、大別して自由権と社会権等に分類できます。

①「自由権」は、国家の介入を排除して、個人の自由な意思と活動とを保障する人権です。「国家からの自由」といわれます。

②「社会権」は、社会的・経済的弱者が人間に値する生活ができるよう国家の積極的な配慮を求めることができる権利です。「国家による自由」といわれます。

③ 「参政権」は、国民が国政に参加する権利です。国民が自由であるためには、国民が自ら政治に参加するのが良いと考えられ認められた人権です。「国家への自由」といわれます。

また、他にも人権を下記のように分類する代表的な学説もあります。
①消極的権利(法の下の平等・自由権)
 ・・・国家の不作為を請求する権利
②積極的権利(受益権・社会権)
 ・・・国民が国家に対して、一定の積極的作為を要求する権利
   cf.受益権とは、裁判を受ける権利、請願権などのことを指します。
③能動的権利(参政権)
 ・・・国民が能動的地位にあって、国家意思の形成に参加する権利

*この人権の分類は、人権の共通の性質に着目として人権を大枠として区分するものにすぎません。

たとえば、一般に社会権とされる生存権や教育を受ける権利でも、国家権力によって不当に制限されてはならないという意味では自由権的側面を有しています。また、表現の自由の保障から導かれる「知る権利」も、国や地方公共団体、マスメディアなどに対して積極的に情報の開示(公開)を求める権利という面から見れば社会権的側面を有しています。よって、人権の分類はあくまで相対的なものです。

司法書士試験対策・憲法11条その2

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

3外国人(日本国籍を有しない者)に日本国憲法の人権規定が適用されるか。

(イ)否定説
憲法第三章が「国民の権利及び義務」と題しているところから、日本国民に限られるとする説です。

(ロ)肯定説(判例・通説)
①人権は人が人であることによって認められる権利であること、②日本国憲法が国際協調主義を採用していることから、人権規定は外国人にも適用されるとする説です。

一人一人の人(個人)を大事にしようとする思想から認められた権利が人権なので、外国人も人である以上、人権が認められるとします。

4 外国人にも基本的人権の保障が及ぶとしても、外国人に保障される人権の範囲が問題となります。

(イ)文言説
憲法の規定の文言に注目をして「何人も」と規定している場合(18、20、22条など)は外国人にも適用されるが、「国民は」と規定している場合は日本人に限られるとする説です。

(ロ)性質説(判例・通説)
権利の性質上日本国民に限るべき場合を除き、人権保障規定は可能な限り外国人にも適用されるする説です。

☆司法書士試験対策 判例

「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである」(マクリーン事件 ・最S53.10.4)。


5 外国人に認められる人権
「性質説」を採った場合、具体的にいかなる人権が性質上外国人に認められるかが問題となります。

(イ)入国の自由・在留の権利・再入国の自由
否定するのが判例・通説です。国際慣習法上、国家の安全のため入国の自由などの権利を外国人に保障している国はないからです。

☆司法書士試験対策 判例

「憲法上、外国人は日本に入国する自由を保障されているものでないことはもとより、在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものではない」「外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎない」(マクリーン事件 ・最S53.10.4)。cf.再入国の自由を否定する判例(森川キャサリーン事件・最4.11.16)。

(ロ)政治活動の自由
判例は、外国人にも原則として政治活動の自由を認めますが、表現の自由と国民主権の調和から以下のように考えます。
 
・政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等⇒保障が及ばない。
・上記以外の政治活動⇒保障が及ぶ。


☆司法書士試験対策 判例

「政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に照らしこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ」(マクリーン事件 ・最S53.10.4)。

(ハ)参政権
特に選挙権については、国会議員選挙と地方議会議員選挙とを区別して考える必要があります。

①国会議員選挙
否定するのが通説・判例です。外国人に選挙権を与えることは国民主権原理に反するからです。

②地方議会議員選挙
判例は、「定住外国人」に選挙権は憲法上保障はされていないが、立法政策によって認めることは憲法上禁止されていないとします。国民主権の観点からも不都合はないと考えられるからです。つまり、法律で地方レベルの選挙権を外国人に、与えても与えなくてもどちらでもよい(合憲)こととなります。

☆司法書士試験対策 判例

日本に永住資格をもつ在日韓国人が選挙人名簿への登録を拒否された事件。

「国民主権原理及び地方公共団体が我国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法93条2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味すると解するのが相当であり、右規定は、我国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない」。
「憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性にかんがみ、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に密接な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない」(定住外国人地方参政権事件・最H7.2.28)。

(ニ)公務就任権
判例は、国民主権の観点から外国人は、公権力の行使にかかわる公務員にはなれないとしています。

☆司法書士試験対策 判例

東京都に保健師として採用された特別永住者である外国人が管理職選考試験の受験を拒否された事件。

「国民主権の原理に基づき、国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条、15条1項参照)に照らし、原則として日本国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、我が国以外の国家に帰属し、その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。」

「日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、上記の措置は、労働基準法3条にも、憲法14条1項に違反するものではない」(定住外国人公務就任事件・最H17.1.26)。

(ホ)社会権
① 否定説(判例)は、社会権は各人の所属する国によって保障されるべき権利であるから外国人には認められないとします。もっともこの説も社会権を法律によって外国人に保障することを否定するわけではありません。

② 肯定説は、社会構成員である定住外国人については社会権も保障されるとします。生存権は社会構成員の権利と考えるべきで、日本社会の一員として労働し生活する定住外国人については否定される理由はないと考えます。

☆司法書士試験対策 判例

定住外国人が障害福祉年金の支給対象から除外されたことが生存権を保障する憲法25条に違反しないかが争われた事件。

「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては・・・その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許されるべきことと解される。したがって、障害福祉年金の支給対象者から在留外国人を除外することは、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきである」(塩見訴訟 ・ 最H元.3.2)。

司法書士試験対策・憲法11条その3

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

5 法人の人権享有主体性
人権は個人尊重の観点から、個人としての人間に認められる権利であるから、法人には人権がないと考えられます。

しかし法人についても「性質上可能なかぎり」人権規定が適用されると解するのが通説・判例です。というのは、①法人の活動は自然人を通じて行われ、その効果は究極的には自然人に帰属すること、②法人も社会において個人同様一個の社会的実体として重要な活動をしていることが理由です。

(イ)法人に保障されない人権
もともと人権は個人の権利として生まれ、発展して来たものです。それを法人に認めるとしても限界があります。自然人にだけ考えられる人権(たとえば、人身の自由・生存権など)は法人には当然認められません。

法人に保障されない人権としては、
① 奴隷的拘束及び苦役からの自由(18)
② 不法に逮捕・監禁されない権利(33、34)
③ 拷問及び残虐な刑罰の禁止(36)
④ 生存権(25)
⑤ 選挙権(15-Ⅰ)などがあります。

(ハ)法人にも保障される人権
①信教の自由(20)、学問の自由(23)、報道の自由(21)
②財産権(29)、営業の自由・居住移転の自由(22)
③請願権(16)、裁判を受ける権利(32)、国家賠償請求権(17)
④適正手続の保障(31)、居住の不可侵(35)
⑤ 平等権(14)などがあります。

☆司法書士試験対策 判例

八幡製鉄の代表取締役が自民党に政治献金をしたことに対して株主が会社へ損害賠償をするよう訴えた。会社は政治活動の自由を有するのか、献金も適法かが争われた事件。

「国税等の負担を負う会社が、自然人たる国民同様、納税者たる立場において国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁ずべき理由はない。さらに憲法第三章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、国や政党の特定の政策を支持、推進し又は反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄付もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄付と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない」

「憲法上は会社といえども政治資金の寄付の自由を有する」
(八幡製鉄政治献金事件・最S45.6.24)。

☆司法書士試験対策 判例

南九州税理士会が税理士法改正の運動資金として会員から特別会費の徴収し政治団体である南九州各県税理士政治連盟へ配布するとの決議をした。それに反対な会員が法改正運動に反対の意見をもつ会員からも強制的に徴収することは思想・信条の自由を侵害するとして争った事件。

「税理士会が強制加入の団体であり、その会員である税理士に実質的には脱退の自由が保障されていない」

「会社とは法的性格を異にする法人であり、・・・」

「法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条を有するものが存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、自ずから限界がある。

特に政党など政治資金規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏をなすものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断などに基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。」

「そうすると、前記のような公的な性格を有する税理士会が、このような事柄を多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務づけることはできないというべきであり・・・」

「税理士会が・・・政治団体などに金員の寄付をすることは、・・・税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。」⇒徴収決議は目的範囲外の行為を目的とするものとして無効であるとした。(税理士会政治献金事件・最H8.3.19)。

⇒ポイント 法人の政治資金の寄付の自由(政治献金の自由)が、認められるか争いがあります。上の判例(八幡製鉄)は認め、下の判例(南九州税理士会)は認めていません。これは、税理士会は強制加入であることが大きな理由の1つとされています。八幡製鉄は、株式会社ですのでそこの株主になるかどうかは自由です(任意加入)。八幡製鉄の政治献金が嫌なら脱退すれば、自己の思想良心は守ることができます。税理士会は、税理士は強制加入なので嫌でも脱退できないところが判決が分かれた理由の1つと考えられているわけです。税理士会のメンバーの思想良心の自由を害すると裁判所が判断したと考えられています。

司法書士試験対策・憲法11条その4

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

6 人権の私人間効力
国家権力が国民の人権を侵害するのを憲法によって排除するというのが憲法の人権規定のそもそもの趣旨です。 しかしそれを理由に、憲法の人権規定は私人間には適用がない(無効力説といいます)と言ってしまうと、私人による人権侵害を防ぐことができず、国民の人権が十分に確保できません。

今日では企業、マスメディアなど巨大な力をもった国家類似の私的団体、社会的権力が生まれ、それらによって一般国民の人権が侵害されるという事態が生じて来たからです。

そこで、何らかの形で私人間にも人権保障を及ぼしていこうという考えが支配的です。以下の2つの考え方を理解しておきましょう。

①直接適用説
私人間においても憲法の人権規定を直接適用するとする考え方です。
⇒◆批判
私人間では私的自治の原則が基本原則であるのに、この立場では私人間の行為が大幅に憲法によって規律されることになり私的自治の原則が害される問題があります。また、人権はまず国家権力から守られなければならないという基本思想を見失わせる恐れがあります。

②間接適用説(通説・判例)
民法90条のような私法の一般条項に憲法の趣旨を取り込んで解釈・適用することによって、憲法の人権規定を間接的に適用していく考え方です。この考え方が私的自治の原則を尊重しつつ、憲法の人権規定の趣旨を実現するものとして判例・通説となっています。

なお、②説も人権の性質等から、私人間に直接適用される人権規定があることは否定しません。15条4項、18条、28条などです。

☆司法書士試験対策 判例

学生時代の学生運動歴を理由に本採用を拒否された原告が、特定の思想を理由に拒否することは、憲法の思想・良心の自由を侵害するとして争った事件。

憲法19条、14条は、「もっぱら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。
私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存する
(三菱樹脂事件・最S48.12.12)。

☆司法書士試験対策 判例
定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた会社の就業規則は、性別による不合理な差別を定めたものとして民法90条により無効とされた事件

「上告会社の就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。」
(日産自動車事件・最S56.3.24)。

司法書士試験対策・憲法12条その1

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

1 人権と公共の福祉
人権は全くの無制約ではありません。他の人権との調整のため制約を受けることがあります。たとえば表現の自由があるからといって、他人のプライバシーの権利を侵害することができないのは当然でしょう。

このことを憲法では、人権には「公共の福祉」による制約があると規定しています(12・13・22・29条)。公共の福祉とは人権相互の矛盾・衝突を調整を意味します(通説)。衝突する人権の性質の違いにより公共の福祉の具体的内容は変わりうると考えます。

2 人権の限界と違憲審査基準
公共の福祉による人権の制約が認められるとしてもどのようなルールで制約が認められるのか問題となります。特に、人権制約立法の合憲性判定基準が問題となります。

(イ)比較衡量論(利益衡量論)
比較衡量論とは、人権の制限によって得られる利益と失われる利益とを比較し、前者の利益が大きい場合には人権を制約する立法も許される(合憲)とする審査基準をいいます。

⇒◆批判
しかしこの基準は一般的に比較の準則が明確でなく、特に国家権力と国民との利益の衡量が行われる憲法の分野においては、概して国家権力の利益が優先する可能性が強い。

☆司法書士試験対策 判例

東京拘置所に勾留・収容されていた被疑者が新聞を私費で定期購入していたところ、よど号ハイジャック事件の新聞記事が塗りつぶされて交付されたので、知る権利を侵害したとして争った事件。

未決拘禁者の自由について、逃亡ないしないし罪証隠滅の防止の目的又は内部の規律及び秩序の維持という在監目的のため、「必要かつ合理的な範囲内において一定の制約が加えられることは已むをえない」。

その制限が是認されるかどうかは「右の目的のために制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである」
(よど号ハイジャック記事抹消事件・最S58.6.22)。

☆司法書士試験対策 判例

教科書検定が表現の自由を侵害するかが争われた事件。

表現の自由も「公共の福祉による合理的で必要已むをえない程度の制限を受けることがあり、・・・制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである」
(第一次家永教科書事件・最H5.3.16)。

(ロ)二重の基準論
二重の基準論とは、精神的自由を規制する法律の合憲性の判断基準は、経済的自由を規制する法律の場合よりも厳しい基準で合憲性を審査すべきとする理論をいいます。

同じ人権であっても、精神的自由権と経済的自由権とで合憲か否かの審査基準が異なるのは、以下の理由からです。

①経済的自由については、民主制の過程が正常に機能している限り、それによって不当な規制を改廃していくことが可能です。それに対し、精神的自由が不当に制約されると、民主制の過程そのものが傷つけられている(不当な規制に対する反対意見がいえないので改廃できない!)ので裁判所が積極的に介入して民主制の過程自体を回復させる必要がある。

②経済的自由を制約する法律は、経済政策・社会政策に基づいて作られることが多く、裁判所は政策判断には不向きであり、国会の判断を尊重せざるを得ない。それに対し、精神的自由の規制については政策的判断は必要でなく、裁判所にも判断能力があるという理由です。

司法書士試験対策・憲法12条その2

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

3 特別な法律関係における人権の限界
在監者や公務員などは、一般国民と異なる特別の人権制限がされています。例えば、公務員の政治活動の制限などがあります。なぜ、一般国民と異なるのか、ここでは在監者を取り上げます。

在監者が特別な人権制限をうける根拠は、憲法自身が在監関係を認めており(18・31条)、その目的を達成するためには、一定の人権制限が必要されるからで、人権制限は在監目的を達成するために必要最少限度にとどまると考えるのが有力説です。

☆司法書士試験対策 判例

公職選挙法違反で逮捕された者が、刑務所内における喫煙禁止に対し、自由及び幸福追求の人権を侵害するものだとして争った事件。

監獄内においては、「被拘禁者の身体の自由を拘束するだけではなく、右の目的に照らし、必要な限度においてその他の自由に対し、合理的制限を加えることも已むをえない」

「制限が必要かつ合理的なものであるかどうかは、制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容、これに加えられる制限の具体的態様との較量のうえに立って決せられるべきというべきである。」

「喫煙の禁止という程度の自由の制限は必要かつ合理的なものと解するのが相当であり、・・・憲法13条に違反するものといえない」
(被拘禁者の喫煙禁止事件・最S45.9.16)。

☆司法書士試験対策 判例

東京拘置所に勾留・収容されていた被疑者が新聞を私費で定期購入していたところ、よど号ハイジャック事件の新聞記事が塗りつぶされて交付されたので、知る権利を侵害したとして争った事件。

「未決勾留は、逃亡や証拠隠滅の防止を目的とする限度で、身体的行動の自由を制限されるのみならず、それ以外の行為の自由も制限されることはやむをえない。」
(よど号ハイジャック新聞記事抹消事件 最S58.6.22)。

司法書士試験対策・憲法13条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

1 幸福追求権とは
13条は、個人の尊重(個人主義の思想)を表明しています。そして、もう少し具体化して、国民が「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」(幸福追求権といいます。)を有することを明らかにしています。

ところで、憲法の各条項に列挙された人権は歴史的に重要な人権を列挙したものにすぎず、すべての人権を網羅したわけではありません。社会の変化等により個人の尊重の観点から認められるべき新しい人権は13条(幸福追求権)によって保障されると解されています。

①憲法も時代の変化とともに、新たな人権がでてくることは憲法も当然予想していたであろうし、②新たな人権を認めるには、憲法を改正しないといけないとするのは、時代の要請に対応できない恐れがあるからです。

つまり13条は、個人の尊重から認められるべき人権を包括的に保障するものと考えるわけです。そこから13条は「包括的基本権」であると言われます。

幸福追求権と憲法に規定する個別の人権規定との関係は、一般法と特別法の関係にあり、個別の人権で保障されない場合に限って13条が適用されると考えるのが通説です(補充的保障説)。個別の人権も、13条でも保障されるとするのは意味がないからです。結局、個別の人権規定でカバーできない場合に13条は意味を持つことになります。
 
2 幸福追求権から導き出される人権
(イ)プライバシー権
従来、 プライバシー権は「ひとりで放っておいてもらう権利」と解されていました。プライバシー権はこのように、個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという意味で自由権的・消極的権利と解されていました。しかし情報化社会の発展に伴い、公権力や大組織が個人に関する情報を収集・保管することこそが、個人に対する脅威であると認識されてきました。

そこで、プライバシー権は「自己に関する情報をコントロールする権利」(情報プライバシー権)であると解する見解が有力となりました。つまりプライバシー権とは、放っておいてもらう権利に止まらず、自己情報の開示請求権や訂正請求権も含む権利と考えるのです。個人情報が行政機関によって集中的に管理される現代社会において、個人が自己情報を自らコントロールし、自己の情報についての閲覧、訂正、抹消を求める権利と積極的に捉えるのです。

判例は、プライバシー権を正面から承認していませんが、実質的にはそれを認めています。

☆司法書士試験対策 判例

三島由紀夫のモデル小説「宴のあと」が、プライバシーの侵害であるとして争われた事件。

東京地裁はプライバシー権を「私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利」であると定義づけ、この私法上の権利(人格権)は、個人の尊重を保ち幸福の追求を保障するうえにおいて必要不可欠なものであるとし、それが憲法に基礎づけられた権利であることを認めています。(宴のあと事件・東京地S39.9.28)。
⇒最高裁レベルでは、プライバシー権を正面から定義をしたものはありません。

☆司法書士試験対策 判例

地方公共団体が弁護士による前科の照会に安易に応じた事件。

「前科及び犯罪経歴は人の名誉・信用にかかわり、これをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益である」
(前科照会事件・最S56.4.14)。
⇒前科をみだりに公開されない自由をプライバシー権の一つとして認めたものです。

☆司法書士試験対策 判例

デモ行進に際し、警察が犯罪捜査のため写真撮影を行った事件。

「個人の私生活上の自由の1つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも警察官が正当な理由もなく個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されない」
(京都府学連事件・最S44.12.24)。
⇒プライバシーの権利の一種として肖像権を認めたものと解されています。

(ロ)自己決定権
自己決定権とは、個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項を公権力の介入・干渉なしに自ら決定できる権利をいいます(人格的利益説)。

家族のあり方を決定する自由(結婚、離婚、避妊、出産、堕胎の自由)、自己の生死を決定する自由(安楽死、尊厳死)、 ライフスタイルを決定する自由(髪型、服装の自由)などが主要な例として掲げられます。

判例は自己決定権を真正面から認めているわけではありませんが、実質的にこれを認めています。

☆司法書士試験対策 判例

東大附属病院(医科研)の医師が患者の意思に反して輸血をしたのに対し、医師の説明義務違反により患者の自己決定権が侵害されたとして提訴した事件。

「患者が輸血をうけることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない」

「説明を怠ったことにより、原告が輸血を伴う可能性のあった本件手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪ったものといわざるを得ず、この点において同人の人格権を侵害したものとして、同人がこれによって被った精神的苦痛を慰謝すべき責任を負うものというべきである。」
(エホバの証人輸血拒否事件・最H12.2.29)。

☆司法書士試験対策 判例

酒税の徴収を確保するために酒類製造の自由を制約する免許制の合憲性を争った事件。

「自己消費目的の酒類製造の自由が制約されるとしても、そのような規制が立法府の裁量権を逸脱し、著しく不合理であることが明白であるとは言えず、憲法三十一条、十三条に違反するものでない」
(最H元12.14)
⇒どぶろく作りの自由が13条で保障されるかは、最高裁は明確な回答をしていない。

(ハ)名誉権

☆司法書士試験対策 判例

北海道の雑誌が知事選立候補者の名誉毀損記事の掲載を予定したため、その雑誌の出版差止めが認められた事件。

「名誉を違法に侵害された者は、人格権としての名誉権に基づき、侵害行為の差止めを求めることができる」
(北方ジャーナル事件・最S61.6.11)。
⇒人格権としての名誉権を憲法13条により認めたものとされます。

(ニ)その他の判例

☆司法書士試験対策 判例
在監者に対する喫煙制限について争われた事件。

「喫煙の自由は、憲法13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆるとき、所において保障されなければならないものではない。」
(最S45年9月16日)

☆司法書士試験対策 判例

外国人の指紋押捺拒否事件。

「憲法13条は、国民の私生活上の自由が国家権力の行使に対して保護されるべきことを規定しているとかいされるので、個人の私生活上の自由の1つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有する」

「公共の福祉のために必要がある場合には相当の制限を受ける」

「方法として一般的に許容される限度を超えない相当なものであり、憲法13条に違反しない。」
(最H7.12.15)。
⇒判例は、13条を根拠に「個人の私生活上の自由の1つとして、何人もみだりに指紋の押捺を強制されない自由を有する」ことを認めました。しかし、外国人の指紋押捺制度は、違憲ではないとしました。なお現在では、指紋押捺制度は廃止されています。

司法書士試験対策・憲法14条その1

1 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

1 法の下の平等の意味
(イ)法適用の平等と法内容の平等
「法の下に」平等とは、立法者を拘束するか争いがあります。

①立法者非拘束説
「法の下に」平等とは法の適用の平等を意味し、立法者を拘束しないとする説です。文言上「法の下」に平等とある以上、法の存在を前提とし、その適用について平等を言っていると読めるからです。
◆⇒批判
法内容が不平等であれば、その適用をいくら平等にしても不平等は残るという問題があります。

②立法者拘束説(通説)
「法の下に」平等は立法者をも拘束し、法内容の平等まで要求しているとする説です。平等原則は法の適用に当たる行政権、司法権のみならず、法を制定する際にも要求され、立法者をも拘束するとする考え方です。個人の尊重の思想からこの説が妥当と解されています。

(ロ)絶対的平等と相対的平等
ここでいう法の下に「平等」は、どういう意味か争いがあります。

①絶対的平等説
平等とは、事実的差異を無視し、全ての人を完全に均等に扱うことを意味すると考えます。

②相対的平等説(通説)
平等とは、事実的差異を前提として、同一の事情と条件の下では均等に扱うことを意味すると考えます。事実状態が異なる場合には、合理的な理由のある区別をすることは許され平等原則違反ではないと解します。

人にはさまざまな「事実の差異」があるから、それらを無視して機械的に均一に取り扱うことはかえって不合理を招くからです(絶対平等であると、赤ん坊にも選挙権を与えるとなる等)。

2 合理的差別の判断基準
相対的平等説をとると、何が合理的な取扱で、なにが不合理な差別かが問題となります。

判例は「目的と手段」の両面から合理性を判断しています。

☆司法書士試験対策・判例

旧刑法200条(平成7年削除)は、普通殺人に比べ尊属殺人(ex.親殺し)に重罰を科していました。これが憲法14条に違反しないかが問題となった事件(尊属殺重罰規定違憲判決)。

判例は、立法目的と目的達成の手段の両面から合理性があるか否かを審査し、尊属に対する尊重報恩という目的は正当であるが、手段が法定刑が死刑か無期かに限られている点で目的達成のための必要な限度を超え、違憲であるとしました(最S48.4.4)。

☆司法書士試験対策・判例

非嫡出子の相続分が嫡出子の2分の1とされていること(民法900‐④)が法の下の平等に反しないかが争われた事件(非嫡出子相続分規定合憲判決)。

判例は、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整という立法目的には合理的な根拠があり、その手段も右立法目的との関連で著しく不合理であって立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないとしました(最H7.7.5)。

☆司法書士試験対策・判例

大学教授が、サラリーマンの租税負担が他の事業所得者に比べて高いのは、憲法14条に違反するとして争った事件(サラリーマン税金訴訟)。

「租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取り扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することができず、これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできない」
(最S60.3.27)。



3 差別禁止事項列挙の意義
14条1項後段は特に「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」による差別を禁止する。この列挙の意味については大別して二つの考え方がある。

(イ)単なる例示であるとする説(判例・通説)
これらは単なる例示であって、それら以外でも不合理な差別は前段の原則によって禁止されるとする考え方です。

(ロ)限定列挙であるとする説
立法者非拘束説の立場に立つ学説は、後段に特別の意味を認め、後段列挙事由については立法者をも拘束するとし、これらを限定列挙だと考えます。

司法書士試験対策・憲法14条その2

1 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

4 議員定数不均衡
(イ)投票価値の平等
選挙権の平等は、「一人一票」の形式的平等が守られれば足りるというものではなく、各投票が選挙の結果に対してもつ影響力の平等すなわち「投票価値の平等」をも要求するとするのが判例・通説です。たとえば人口が1万人の中から1人を当選させる場合と、人口が50万人の中から1人当選させる場合では、1票の重みに50倍の格差があることになるのは不平等だからです。憲法14条は、選挙権に関しては、投票価値の平等まで要求したものと解されています。

(ロ)較差の合理性
議員一人当たりの人口較差は、1:1が望ましいとしても技術的な困難性もあり、また人口比以外の政策的要素や技術的要素も加味した結果の合理的差別は許されると解されます。この場合、どの程度の較差が許容されるのか問題になります。

通説は、いかに非人口的要素を考慮したとしても、1:2が限度であり、それ以上の較差は違憲だとします(通説)。それ以上の較差は一人一票の原則に反することになるからです。

(ハ)違憲無効とされる選挙の範囲
違憲無効とされる選挙は、定数配分規定のうち問題のある選挙区に関する規定のみならず、定数配分規定全体が違憲となると解されています(判例・通説)。議員定数というのは、全選挙区に影響を及ぼすものだからです。

(ニ)違憲判決の方法
① 合理的期間論
定数配分は、公職選挙法の配分表に基づいて行われます。その変更には公職選挙法の改正が必要となりますが、法改正は直ちにできるわけではありません。定数不均衡が判明したあと改正のための合理的期間を経過し、なお改正しない場合に違憲となるとするのが判例です。

② 事情判決の法理
それでは、改正のための合理的期間を経過し当該選挙が違憲となった場合に、いったん行われた選挙が無効となってしまうのかについて争いがあります。選挙無効とすると、当該選挙で選出された議員は資格を喪失することになり(前議員も任期満了で居なくなっている)法改正すらできなくなってしまいます。また、その選挙で選出された国会議員は、正当な国会議員でないことになるので、その国会議員による国会の判断も効力がないということになりかねません。

その不都合を避けるため、行政事件訴訟法31条のいわゆる「事情判決」の法理を適用し、違憲の定数配分規定に基づいて行われた選挙を無効とせず、違憲であることを宣言するに止めるのが判例です。

*事情判決の法理とは
処分などが違法であるが、これを取り消すことで公の利益に著しい障害を生ずる場合、裁判所は一切の事情を考慮して、当該処分を判決主文で違法と宣言するが取り消さないことができるとする法理(行政事件訴訟法31条)をいいます。

☆司法書士試験対策・判例

昭和47年衆議院議員選挙において、千葉一区と兵庫五区との間で1:4.99の較差が生じた。千葉一区の住民らが、投票価値の平等に反するとして選挙無効の訴えを提起した事件。

「本件議員定数配分規定の下における各選挙区の議員定数と人口数との比率の偏差は、右選挙当時には、憲法の選挙権の平等の要求に反する程度になっていたものといわなければならない。」

「合理的期間内における是正が憲法上要求されている考えられるのにそれが行われない場合に始めて憲法違反と断ぜられるべきものと解するのが、相当である。」

本件の場合は、「憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったものと認めざるをえない」

「選挙区割及び議員定数の配分は・・・相互に有機的に関連し、一の部分おける変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有するものと認められ、その意味において不可分一体をなすと考えられるから、右配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招来する部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである」

「これらの事情を考慮するときは、本件においては前記の法理(事情判決の法理)にしたがい、本件選挙は憲法に違反する議員定数配分規定に基づいて行われた点において違法である旨を判示するにとどめ、選挙自体はこれを無効としないこととするのが相当であり・・・」
(議員定数不均衡事件 最S51.4.14)。

司法書士試験対策・憲法15条

1 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

4 すべての選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

選挙権は、国政に関して自己の意思を表明することができる権利と公務の執行という二重の性格を持つと解されています。

選挙権は、人権の1つである参政権の行使という意味で権利ですが、代表者となる公務員(国家機関)を選定するという公的な役割を果たすので、純粋な個人の権利とは違った面があるからです。

また、「立候補の自由(被選挙権)」は、直接には規定されていませんが、15条1項で保障される人権であるとするのが判例です(最S43.12.4)。選挙権と表裏一体のものだからです。

司法書士試験対策・憲法16条

何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

請願権とは、国または地方公共団体の機関に対し、それぞれの機関が処理しうる事項について、苦情や要請を申し出る権利です。国民の参政権を補充する意味を持ちます。

司法書士試験対策・憲法17条

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

☆司法書士試験対策 判例

郵便法が賠償責任の制限・免除を定めていたことを憲法17条違反と争った事件

郵便物の亡失・き損などについての国の損害賠償責任を免除・制限しているのは憲法17条に違反するとした判例があります(最H14.9.11)。

司法書士試験対策 憲法18条

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

個人の尊重の観点から、自由な人格者であることと両立しないような身体の拘束(奴隷的拘束)、強制的な労役(意に反する苦役)を否定しています。

奴隷的拘束は、たとえ本人の同意があったとしても許されません。また、犯罪による処罰の場合でも許されません。

意に反する苦役は、犯罪による処罰を除いて禁止されます。

私人間にも適用されると解されています(直接適用)。

司法書士試験対策・憲法19条

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

1 思想・良心の自由の意義
「思想・良心」の意味をめぐっては、これを広く捉える説と狭く捉える説とがあります。

(イ)信条説(狭義説)
世界観、人生観など、個人の人格形成の核心をなすものを意味すると解します。

(ロ)内心説(広義説)
広く内心におけるものの見方、考え方、事物に関する是非善悪の判断を包括的に保障していると解します。

2 思想・良心の自由の内容
思想・良心の自由は下記の内容を含みます。

(イ)特定の思想・良心をもつこと、持たないことの自由
(ロ)特定の思想・良心をもつこと、持たないことによって不利益を受けない自由
(ハ)思想・良心につき「沈黙の自由」

3 制 約
思想・良心の自由は、内心の領域に属する問題であるので、他人の人権との調整を必要としません。公共の福祉によって制約されない絶対的な保障をうける人権です。

☆司法書士試験対策 判例

ラジオ及び新聞で対立候補の名誉を毀損した候補者に対し、裁判所は「放送及び記事は真実に相違しており、貴下の名誉を傷つけ御迷惑をおかけいたしました。ここに陳謝の意を表します」という文面の謝罪広告を命じた。これが憲法19条の保障する「良心の自由」を侵害するとして争われた事件。

謝罪広告が「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表するに止まる程度」であれば、これを強制することも憲法19条には反しないと判示した。
(謝罪公告事件・最S31.7.4)。
⇒学説では、信条説(狭義説)では、世界観、人生観等とは異なり、事物の是非、善悪の判断等は思想・両親の自由の保障の範囲に含まれないので、判例の認める程度のものであれば謝罪広告を命令することも許されるとします。しかし、内心説(広義説)では、違憲になると思われます。

☆司法書士試験対策 判例


区立中学生が、内申書に「校内において麹町中全共闘を名乗り、機関紙「砦」を発行した。学校文化祭の際、粉砕を叫んで他校の生徒と共に校内に乱入し、ビラまきを行った。大学生ML派の集会に参加している」などの記載があったことで、受験したすべての高校が不合格となった。この記載が思想・良心の自由を侵害したとして争われた事件。

「いずれの記載も、上告人の思想、信条そのものを記載したものでないことは明らかであり、右の記載に係る外部的行為によっては上告人の思想・信条を了知し得るものではないし、また上告人の思想・信条自体を高等学校の入学者選抜の資料に供したものとは到底解することができない」とし憲法19条違反はないとした。
(麹町中学内申書事件・最S63.7.15)。

司法書士試験対策・憲法20条

1 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

1 信教の自由と政教分離
(イ)20条1項前段・2項
20条1項前段は「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」と規定し、2項は「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」と規定します。これらはいずれも「信教の自由」を保障する人権規定です。

(ロ)20条1項後段・3項
20条1項後段は「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」とし、3項は「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と規定します。これらは、宗教団体や国を義務づける規定であって人権規定ではなく、いずれも政治と宗教との結び付きを禁止する「政教分離」の規定です。

政教分離の規定は89条にもあり「公金、その他の公の財産は、宗教上の組織、若しくは団体の使用、便益、若しくは維持のため・・・これを支出し又はその利用に供してはならない」とあります。これは国と宗教団体との癒着を金銭面で禁じた政教分離を定めた条文です。

(ハ)制度的保障
政教分離は制度的保障であるといわれます。そして「制度的保障」の規定とは、この場合の政教分離規定のような、政治と宗教を分離するという制度(システム)によって、より完全に人権(この場合は信教の自由)を保障しようとする条文のことをいいます。

2 信教の自由
(イ)信教の自由の内容
「信教の自由」には、次の三つが含まれます。

・信仰の自由
① 宗教を信仰すること、しないことの自由
② 宗教を信仰すること、しないことにより不利益を受けない自由
③ 信仰告白の自由

信仰の自由はあくまで内心の問題であり他人の人権と衝突することがありません。従って思想・良心の自由と同様、絶対的に保障されます。

・宗教的行為の自由
① 宗教上の行為、行事、儀式などを行い又は行わない自由
② それらに参加し、又は参加しない自由

・宗教的結社の自由
① 宗教的結社をつくること、つくらないことの自由
② 宗教的結社に入ること、入らないことの自由
③ 宗教的結社から脱退すること、しないことの自由

宗教的行為の自由、宗教的結社の自由については、他人の人権との衝突の可能性があります。従って必要不可欠な目的を達成するための最小限度の制約は認められます。

☆司法書士試験対策 判例

信仰上の理由に基づいて必修科目である体育の剣道の実技の履修を拒否した高専生徒が、2年連続の留年処分の後退学処分を受けた。これが信仰の自由を害するとして争われた事件。

「高等専門学校においては、剣道実技の履修が必須のものとまではいい難く、体育科目による教育目的の達成は、他の体育種目の履修などの代替的方法によってこれを行うことも性質上可能・・・」。

学生の剣道実技への参加拒否の理由は「信仰の核心的部分と密接に関連する真しなものであった」「裁量権の行使に当たり、当然そのことに相応の考慮を払う必要があった」。

本件処分は、「考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく・・・裁量権の範囲を超える違法なもの」である
(エホバの証人剣道拒否事件・最H8.3.8)。

☆司法書士試験対策 判例

宗教法人オウム真理教に対する解散命令が信教の自由を害しないかが争われた事件。

宗教法人法上の解散命令の制度は「宗教団体や信者の精神的、宗教的側面に容かいする意図によるものではなく、その制度の目的も合理的である」

大量殺人を目的とするサリンの生成は、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為であることは明らかである。

解散命令によってオウム真理教やその信者らの宗教上の行為に支障が生じても、それは解散命令に伴う間接的で事実上のものにすぎず、それは「必要でやむを得ない法的規制である」とし、憲法20条1項に反しないと判示した。
(オウム真理教解散事件 ・最H8.1.30)。

3 国家と宗教の分離の原則(政教分離の原則)
(イ)政教分離の意義と趣旨
「政教分離」とは、国家の非宗教性ないし中立性をいいます(最S52.7.13)。簡単にいえば政治と宗教を切り離しておけということです。これは下記の理由からです。

①信教の自由の確保
国家を宗教的に中立にしておくことによって間接的に信教の自由を確保する。戦前、国と神道とが結びつくことによって、他の宗教は弾圧され信教の自由が害された経緯があるからです。

②宗教の堕落の防止
国家と宗教が結合した場合、両者が堕落したことは歴史が証明するところであってそれを防止するためです。

③民主主義からの要請
民主主義は、多様な価値観を許容する相対的価値観に基づきます。それに対し宗教は他の宗教を受け容れない絶対的価値観に基づきます。これは民主主義に反するので、政治と宗教は切り離しておく必要があるわけです。

(ロ)政教分離の内容
①国の特権付与の禁止
他の宗教団体から区別して特定の宗教団体を優遇すること、他の団体から区別してすべての宗教団体を優遇することが禁止されます。ただし、一般国民や団体に対する利益付与でその中に宗教団体が含まれることはここでいう特権付与に当りません。他の文化財とともに神社等の文化財に対する補助金の交付がこの例にあたります。

②政治権力行使の禁止
宗教団体が政治上の権力(国、地方公共団体がもつ統治的権力)を行使することが禁止されます。

③国の宗教活動の禁止
国及びその機関が宗教教育その他一切の宗教的活動をすることが禁止されます。

(ハ)政教分離の限界
①完全分離と限定分離
政教分離の趣旨からすれば、政治と宗教とは分離すればするほど人権保障が徹底することになりそうです。そこから、政教分離の原則は、国家と宗教との結び付きを完全に否定するものなのかが問題となります。

・「完全分離説」はこれを肯定し、国家と宗教は完全に分離し、国家は宗教に関与し得ないと考えます。

・ 限定分離説(判例)は、一定の限度で国と宗教とのかかわり合いを認めざるを得ないとします。現実の問題として、宗教系私学への補助金など国家と宗教との完全な分離は不可能に近いからです。

(ニ)目的・効果基準
限定分離説からは、20条3項が禁止する宗教活動とは、「相当程度のかかわり合い」を超えるものを指すことになります。それでは相当程度のかかわり合いか否かは何を基準に判断するのかですが、この基準が「目的・効果基準」といわれるものです。

目的・効果基準とは、国の行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教を援助、助長、促進又は圧迫、干渉になる場合は、20条3項で禁止される宗教活動にあたるとするものです。

☆司法書士試験対策 判例

津市が体育館建設に際し、地鎮祭を行いそれに公金を支出したことが政教分離原則に反しないかが争われた事件。

「政教分離規定は、制度的保障の規定であって、国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由を確保しようとするものである」

「しかし、国家と宗教との完全な分離は不可能に近く、また、不合理な事態を生じる。それゆえ、政教分離原則は、宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的および効果にかんがみ、そのかかわり合いが相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないものと解すべきである」

「憲法20条3項にいう宗教的活動とは、政教分離原則の意義に照らしてこれを見れば、そのかかわり合いが右にいう相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであって、当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉となるような行為をいうものと解すべきである」

「本件起工式は、工事の無事安全を願うといった社会の一般慣習に従った儀礼を行うというもっぱら世俗的なものにすぎないと認められ、憲法20条3項により禁止される宗教的活動にはあたらない」
(津地鎮祭事件・最S52.7.13)。

☆司法書士試験対策 判例

愛媛県が靖国神社に玉串料として県の公金を支出したことが政教分離原則に反するかが争われた事件。

判例は、政教分離原則が制度的保障であること、憲法20条3項が禁止する宗教的活動に当たるか否かは、目的・効果基準によって判断すべきことを述べたのち、次のように判示。「一般に、玉串料などの奉納は、起工式などとは異なり・・・その宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼にすぎないものとなっているとはとうていいえない。そうであれば奉納者も、それが宗教的意義を有するものであるとの意識を大なり小なり持たざるを得ない。さらに愛媛県は、他の宗教団体の同種の儀式に同様の支出をしておらず、特定の宗教団体との間にのみ意識的な特別な関わり合いをもったことは否定できない。このような特別の関わりは、一般人に対して愛媛県が当該特定の宗教団体を特別に支援しており、それらの宗教団体が他の宗教団体とは異なる特別なものであるとの印象を与える。したがって、本件玉串料などを奉納したことは、その目的が宗教的意義をもつことを免れず、その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進になると認めるべきであり、これによってもたらされる愛媛県と靖国神社などとの関わり合いはわが国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものであって、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たり、また89条にも反する」
(愛媛玉串料事件・最H9.4.2)。

【ポイント】同じ公金支出が一方は合憲、他方は違憲とされた理由は、地鎮祭は誰でもが行う慣習化した社会的儀礼にすぎないから専ら世俗的目的で宗教目的ではないが、玉串料の奉納はそうではないということです。

司法書士試験対策・憲法21条その1

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

1 表現の自由とは
「表現の自由」とは、人の内心における精神作用を外部に表明する自由をいいます。
この表現の自由は、次のような重要な価値があるといわれます。

(イ)自己実現の価値
個人が表現活動を通じて自己の人格を発展させるという個人的価値です。

(ロ)自己統治の価値
表現活動によって国民が政治的意思決定に関与していくという、民主的な価値です。国民が政治に参加していくためには、表現の自由が必要不可欠というわけです。

2 表現の自由と知る権利
「知る権利」とは、国民が情報源から自由に情報を受け取り、又は情報の開示を要求する権利をいいます。

そもそも表現行為は情報の「送り手」と「受け手」の双方から成り立ちます。よって、表現の自由は、知る権利を表裏一体のものとして保障する意味も含まれています。かつては、特に知る権利を問題にする必要はありませんでした。

しかし現代社会のように、情報が国家やマスメディアに集中し、個人が専ら情報の受け手の側に回る時代(情報の送り手と受け手の分離の時代)では、受け手の側の「知る権利」が重要な意味を持つようになり再構築されたのです。現代では、知る権利の保障がなければ表現の自由の価値である自己実現・自己統治が不十分なものとならざるを得ないからです。

(イ)知る権利の法的性格
①知る権利の自由権的側面
知る権利は、国民が情報を収集することを国家によって妨げられないという自由権としての性格をもちます。

②参政権的側面
個人がさまざまな事実や意見を知ることによってはじめて有効に政治に参加できるという意味で、参政権的な役割をもちます。

③請求権的側面
国家に対して積極的に情報の公開を要求する請求権的性格をもちます。知る権利は、国家による情報の集中という状況から主張されたものだから、この請求権的側面が中心となります。

(ロ)請求権的側面における具体的権利性
知る権利は、国家などに対する情報開示請求権であるという点に大きな意義がありますが、しかしそれは抽象的な権利に止まり、それが具体的権利となるためには、請求権者、請求手続、開示を求めうる情報の範囲、請求が拒否された場合の救済方法などが法令によって制定されなければならないと解されています。具体的な定めがないと国としても困るからです。この考えから現在では「情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)」や各地方の「情報公開条例」などが定められています。

【注】「抽象的権利」とは、たとえば21条を根拠にして具体的に国に対して請求することはできず、具体的な立法を待ってはじめて請求できる権利ということです。

3 アクセス権
知る権利の関連事項としてアクセス権があります。アクセスとは、「接近する」との意味です。

アクセス権とは、情報の受け手である一般国民が、情報の送り手であるマスメディアに対して自己の意見の場を提供することを要求する権利(意見広告や反論文の掲載、番組への参加など)をいいます。

しかし、私企業であるマス・メディアに対する具体的なアクセス権を21条から直接導き出すことは困難で、それが具体的権利となるためには特別の法律(反論権法と呼ばれたりします)の制定が必要と解されています。ただ、法律によりアクセス権を設定することは、マズ・メディアの表現の自由との関係で違憲と考えるのが通説です。

☆司法書士試験対策 判例

日本共産党が自由民主党の意見公告により名誉を毀損されたとしてサンケイ新聞に反論文を無料掲載させるよう主張した事件。

判例は、反論権の制度は、名誉、プライバシーの保護には役立つが、「新聞を発行・販売する者にとっては、反論文が誤りであると確信している場合でもその掲載を強制されることになり、そのための紙面を割かなければならなくなる等の負担を強いられるのであって、これらの負担が、批判的記事、ことに公的記事に関する批判記事の掲載をちゅうちょさせ、憲法の保障する表現の自由を間接的に侵す危険につながるおそれが多分に存する」

「具体的な成文法の根拠がない限り、認めることはできない」
(サンケイ新聞意見広告事件・最S62.4.24)

司法書士試験対策・憲法21条その2

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

4 報道の自由
「報道の自由」とは、事実を知らせる自由をいいます。報道の自由は、①国民の知る権利に重要な意義を持つ、②報道のために報道内容の編集に報道機関の意見が表明される点から言っても、21条1項によって保障されると解するのに異論はありません。

☆司法書士試験対策 判例

米原子力空母寄港に反対の学生と機動隊の衝突事件の現場撮影TVフィルムの提出が裁判所により命ぜられた。これが放送会社の報道の自由を侵害するとして争われた事件。

「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものである。したがって、思想の表明の自由とならんで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあることはいうまでもない」
(博多駅TVフィルム提出事件・ 最S44.11.26)。

5 取材の自由
「取材の自由」とは、報道すべき生の事実に接し、これを獲得する自由をいいます。取材の自由も報道の自由の一環として21条によって保障されます(学説)。取材は報道の自由にとって不可欠な前提であり、国民の知る権利を充足するためには、取材活動の自由が確保されなければならないからです。

しかし判例は取材の自由については21条で保障されるとは言わないで「憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する」というに止まります。

☆司法書士試験対策 判例(上記の博多駅TVフィルム提出事件)

「報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない」。
(博多駅TVフィルム提出事件・ 最S44.11.26)。

☆司法書士試験対策 判例

アメリカ人弁護士レペタ氏が裁判傍聴の際にメモを採ることの許可を求めたが認められなかった。そこでメモを採ることは知る権利を行使することで21条で保障されているとして争った事件。

「傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、尊重に値し、故なく妨げられてはならない」

「メモを取る行為が・・・公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げる場合には、それが制限又は禁止されるべきことは当然である。」

「しかしながら・・・傍聴人のメモを取る行為が公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げるに至ることは通常はあり得ないのであって、これを傍聴人の自由に委せるべきであり、それが憲法21条1項の規定の精神に合致するものということができる」
(法廷メモ採取(レペタ)事件 ―― 最H元.3.8)。

6 取材源の秘匿
「取材源の秘匿権」とは、取材源の開示を強要されない権利をいいます。将来の取材を困難にするような国家からの要求を報道機関が拒めるかがここでの問題です。

これも21条によって保障されているとする学説が有力です。取材源の秘匿の保障があって今後の取材ができ、それによって国民の知る権利も充足されるからです。しかし、判例はこれを否定します。

☆司法書士試験対策 判例

新聞紙上に公務員が守秘義務に違反して秘密を漏らしたと推測できる記事が掲載された。検察官が記者の出廷と証言を求めたが拒否されたので、記者が証言拒絶罪(刑訴161条)で起訴された事件。

「一般国民の証言義務は国民の重大な義務である点に鑑み、証言拒絶権を認められる場合は極めて例外に属するのであり、また制限的である」

憲法21条は「一般人に対し平等に表現の自由を保障したものであって、新聞記者に特種の保障を与えたものではない。」

「取材源について、公の福祉のため最も重大な司法権の公正な発動につき必要欠くべからざる証言の義務をも犠牲にして、証言拒絶の権利までも保障したもの・・・ではない」
(石井記者事件・最S27.8.6)。

司法書士試験対策・憲法21条その3

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

7 表現の自由の限界
表現の自由といえども無制約ではありません。しかしその重要な価値からその制約が認められる場合及び程度は、できるだけ厳格に必要最小限度に止められなければなりません。

本サイトの憲法12条その1で述べましたが、「二重の基準」の理論が大事です。表現の自由を制約する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法よりも、特に厳しい基準によって審査されなければならないという理論です。


表現の自由に対して用いられる厳格な基準として、次のものがあります。

8 事前抑制の禁止
表現活動を事前に抑制することは許されないという原則です。この原則が認められる理由としては、下記のように色々とあります。

①事前規制は、規制すべきかどうかは憶測で判断せざるを得ないので、安全を期して規制してしまうというように、規制の範囲が広くなりやすい。

②憶測で規制するので、恣意的な判断が入る余地が広くなり、公権力にとって不都合な表現が妨害されがちである。

③憶測で規制されるので、どのような場合に規制されるかがわかりにくく、表現者が規制を恐れて自己抑制をしやすい(萎縮的効果)

④事前抑制されても、問題のない表現は裁判で取り消される事になりますが、時宜性を要する表現にとっては致命的である。表現者が規制を恐れて自己抑制し易い(萎縮的効果)。

(ロ)