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2006年08月17日

司法書士試験対策 憲法前文

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

1 憲法の意義
憲法とは、国家の根本法をいいます。この憲法は、まず「国家」が守るべきルールであることに注意してください(99条)。ですから憲法に違反する法律等は無効ということになります。

憲法の価値観は、「個人の尊重(24・13条)」です。個人主義の思想が根底にあるのです。

この個人の尊重の最大の脅威は国家権力です(封建社会を考えるとわかりますね)。そこで、憲法は、個人の尊重のため、濫用の危険のある国家権力に歯止めをかけているのです。

*憲法を読むときは、思想書を読んでいると思われると良いでしょう。

前文は、個人の尊重の手段として「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」が憲法の基本原則であることを示しています。司法書士試験対策のはじめの一歩として、この3原則は覚えておきましょう。

実は、この憲法は様々な意味で使われます。ここで整理しておきます。

①形式的意味の憲法
憲法という名前で呼ばれる成文の法典(憲法典)を意味します。

②固有の意味の憲法
国の統治の基本ルールを定めた基本法のことを意味します。この意味の憲法は、およそ国家が存在する以上必ず存在するものであり、いつの時代どこの国でも存在します。

③立憲的意味の憲法(近代的意味の憲法)
国家権力を制限して国民の自由・権利を保障しようとする立憲主義の思想に基づく憲法を意味します。立憲主義とは、国家権力の行使を憲法に基づかせることによって、強大な国家権力を制限し、国民の自由・権利を保障しようという思想です。この憲法は、権力分立や基本的人権の尊重と結びつくことになります。

固有の意味の憲法と異なって、すべての国家がこれを有するわけではありません。日本国憲法もこの意味の憲法に属します。通常、憲法と言うときは、「立憲的意味の憲法」を指します。

【参考】フランスの人権宣言(1789年)16条は「権利の保障が確保されず、権力分立が定められていない社会は、憲法をもつものではない」と規定します。立憲的意味の憲法(近代的意味の憲法)の典型です。

*②と③は、憲法の内容に着目した区別です。

2 国民主権
主権は、次の3つの異なる意味で用いられます。資格試験で問われる可能性があります。

国家権力そのもの(統治権) 

たとえば、「北方領土には日本の主権が及ばない」と言う場合の主権です。

ポツダム宣言の「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾らの吾等ノ決定スル諸諸島ニ局限セラルベシ」という文章中の「主権」も国家権力そのもの(=統治権)という意味です。

日本国との平和条約の「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する」という文章中の「主権」も国家権力そのもの(=統治権)という意味です。

国家権力の最高独立性・対外的な独立性

たとえば、「日本は主権国家なので内政干渉はしてほしくない」という場合の主権です。

憲法前文の「・・・自国の主権を維持し・・・」の主権がこの意味です。

国政についての最高の決定権

この意味の主権が国民にあるとする考えが国民主権です。君主にあるとするのが君主主権です。

前文では、「ここに主権が国民に」とあるように国民主権を明らかにしています。

3 前文の法的性質(司法書士試験上、重要度は低い。)
憲法の前文も憲法の一部であり、法的性質を持つと解されます。よって、本文と同様に改正には96条の改正手続によらなければ改正できません。

しかし、法的性質(法規範性)があるといっても裁判規範性は否定するのが通説です。裁判所は、前文に基づいて裁判はすることができないという意味です。

というのは、①裁判規範とするには前文は抽象的すぎる、②前文の内容は本文各条項に具体化されており、前文を裁判規範とする必要がないというのが理由です。

裁判規範性があるという反対説もありますが、司法書士試験上、覚える必要はありません。

2006年08月16日

司法書士試験対策 憲法1条

天皇は、日本国の、象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

1 象徴とは

「象徴」とは、無形的なものを有形的なものによって具体化することです。シンボルともいいます。

明治憲法下では、天皇は「統治権の総覧者(=国家権力を一手に握って治める者)」と「象徴」としての地位をもっていました。しかし、日本国憲法では、天皇の「統治権の総覧者の地位」は否定され、「象徴」としての地位のみとなりました(通説)。

天皇は、「日本国」と「日本国民の統合」の象徴と位置づけられています。

2 主権
1条の文中の「主権」は、国政の最高決定権という意味です。天皇主権では無く、国民主権が基本原則であることを1条は述べています。司法書士試験対策として前文の「主権」の箇所を再確認してください。


☆司法書士試験対策・判例
 天皇が「象徴」であるという理由だけで、天皇に対する民事裁判権を否定しました(最H元.11.20)。

 ⇒象徴と民事裁判権は関係がないのに、象徴が理由で民事裁判権を否定するのは、象徴天皇を神聖視しするものであると批判されています。

司法書士試験対策 憲法2条

皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

明治憲法下では、「皇室典範」は憲法と同格の法規範でした。日本国憲法においては、憲法の下の法形式の通常の法律の1つです。

「皇位」とは天皇の地位ですが、「世襲」とありますので一定の血縁関係のある者のみが皇位を継承することになります。この世襲制は平等原則(14条)の例外です。

司法書士試験対策・憲法3条

天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

国事行為に「内閣の助言と承認」が必要であるということは、行為の実質的決定権が内閣にあり、天皇は内閣が決めたとおりに行動するにすぎないということです。よって天皇の国事行為は形ばかりの形式的・儀礼的行為と解されています。

また、天皇の国事行為は、内閣の助言と承認によってなされるため、天皇には責任はなく内閣に政治責任があるとされます。

国事行為は、6条・7条・4条2項で定まっています。

司法書士試験対策・憲法4条

1 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
 
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

戦前の反省もあり、天皇は政治にタッチしてはいけないことを定めています。

天皇が自ら国事行為ができない場合に、他の者が国事行為を行う制度として「摂政」と「臨時代行」があります。摂政は天皇が未成年であるとか心身に重大な事故が生じた場合の制度で(5条)、臨時代行は天皇が外国訪問や病気などで一時的に国事行為を行いえない場合の制度です(4条2項)。

臨時代行制度(4条2項)により、天皇が国事行為を他の者に委任する行為も「国事行為」であり、内閣の助言と承認が必要です。

摂政や臨時代行による国事行為も、当然、内閣の助言と承認を必要とします。

司法書士試験対策・憲法5条

皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

摂政は、天皇の委任よるのではなく(臨時代行(4条2項)と異なります)、皇室典範で定める原因があれば当然に設置される法定代行機関です。

「天皇の名で」とは、天皇に代わっての意味です。国事行為を行うには、やはり内閣の助言と承認が必要であると解されています。なお、5条は4条1項のみを準用していますが、2項も当然準用されると解されています。

司法書士試験対策・憲法6条

1 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

象徴としての役割を示すために、天皇に任命権を与えていると解されています。

最高裁判所の「長官」のみ、任命するのに注意をしてください。「長官」以外の最高裁判所裁判官は、内閣が任命します(79条1項)。

司法書士試験対策・憲法7条

天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

7条は、①号を司法書士試験対策上しっかり暗記しておいてください。また、7条にからむ問題点として「衆議院の解散」があります。

1 衆議院の解散
衆議院の解散とは、衆議院議員の任期満了前に、その全員の身分を喪失させることをいいます(45条但書)。

2 解散権は誰が持つか。
憲法7条③号により、形式的解散権が天皇にあることは明らかですが、実質的解散権はどこにあるかですが、通説は「内閣」にあるとします。その憲法上の根拠については争いがあります。

(イ)7条説
7条③号は、天皇は国事行為として「衆議院を解散する」とあります。天皇の国事行為は内閣の助言と承認によるのだから(3条)、実質的な解散の決定権は内閣にあると解する立場です。実務ではこれが慣行とされ、解散詔書も「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」という表現が用いられています。

(ロ)69条説
内閣の解散につき述べられている条文は69条しかないとして、69条に内閣の解散権の根拠を求める説です。

3 解散する場合はどのようなときか。
69条説は、解散原因を69条所定の場合、つまり衆議院の内閣不信任決議があったときに限定します(69条に限定)。7条説は、69条は解散事由の一場合を定めたにすぎず、解散事由はそれに限定されないとします(69条非限定)。

4 解散の効果
(イ)衆議院議員の任期(4年)満了前に、任期は終了する(45条)。
(ロ)衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる(同時活動の原則・54条)。
(ハ)解散の日から40日以内に総選挙を行い、総選挙の日から30日以内に、国会(特別国会)を召集しなければならない(54条)。
(ニ)特別国会の召集があったときは、内閣は総辞職しなければならない(70条)。

司法書士試験対策・憲法8条

皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。

戦前のように、皇室が莫大な財産によって不当な支配力を有しないように皇室の財産を国会のコントロール下に置いています。

司法書士試験対策・憲法9条

1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

大変重要な条文ですが、司法書士試験対策上は、出題される確率は低いです。

司法書士試験対策・憲法10条

日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

法律とは、国籍法のことです。

司法書士試験対策・憲法11条その1

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

1 人権とは
人権(基本的人権)とは、人が生まれながら当然にもっている権利をいいます。個人の尊重の観点から不可欠なものを人権と呼ぶのです。

2 人権の分類
人権はさまざまな角度から分類できますが、大別して自由権と社会権等に分類できます。

①「自由権」は、国家の介入を排除して、個人の自由な意思と活動とを保障する人権です。「国家からの自由」といわれます。

②「社会権」は、社会的・経済的弱者が人間に値する生活ができるよう国家の積極的な配慮を求めることができる権利です。「国家による自由」といわれます。

③ 「参政権」は、国民が国政に参加する権利です。国民が自由であるためには、国民が自ら政治に参加するのが良いと考えられ認められた人権です。「国家への自由」といわれます。

また、他にも人権を下記のように分類する代表的な学説もあります。
①消極的権利(法の下の平等・自由権)
 ・・・国家の不作為を請求する権利
②積極的権利(受益権・社会権)
 ・・・国民が国家に対して、一定の積極的作為を要求する権利
   cf.受益権とは、裁判を受ける権利、請願権などのことを指します。
③能動的権利(参政権)
 ・・・国民が能動的地位にあって、国家意思の形成に参加する権利

*この人権の分類は、人権の共通の性質に着目として人権を大枠として区分するものにすぎません。

たとえば、一般に社会権とされる生存権や教育を受ける権利でも、国家権力によって不当に制限されてはならないという意味では自由権的側面を有しています。また、表現の自由の保障から導かれる「知る権利」も、国や地方公共団体、マスメディアなどに対して積極的に情報の開示(公開)を求める権利という面から見れば社会権的側面を有しています。よって、人権の分類はあくまで相対的なものです。

司法書士試験対策・憲法11条その2

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

3外国人(日本国籍を有しない者)に日本国憲法の人権規定が適用されるか。

(イ)否定説
憲法第三章が「国民の権利及び義務」と題しているところから、日本国民に限られるとする説です。

(ロ)肯定説(判例・通説)
①人権は人が人であることによって認められる権利であること、②日本国憲法が国際協調主義を採用していることから、人権規定は外国人にも適用されるとする説です。

一人一人の人(個人)を大事にしようとする思想から認められた権利が人権なので、外国人も人である以上、人権が認められるとします。

4 外国人にも基本的人権の保障が及ぶとしても、外国人に保障される人権の範囲が問題となります。

(イ)文言説
憲法の規定の文言に注目をして「何人も」と規定している場合(18、20、22条など)は外国人にも適用されるが、「国民は」と規定している場合は日本人に限られるとする説です。

(ロ)性質説(判例・通説)
権利の性質上日本国民に限るべき場合を除き、人権保障規定は可能な限り外国人にも適用されるする説です。

☆司法書士試験対策 判例

「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである」(マクリーン事件 ・最S53.10.4)。


5 外国人に認められる人権
「性質説」を採った場合、具体的にいかなる人権が性質上外国人に認められるかが問題となります。

(イ)入国の自由・在留の権利・再入国の自由
否定するのが判例・通説です。国際慣習法上、国家の安全のため入国の自由などの権利を外国人に保障している国はないからです。

☆司法書士試験対策 判例

「憲法上、外国人は日本に入国する自由を保障されているものでないことはもとより、在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものではない」「外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎない」(マクリーン事件 ・最S53.10.4)。cf.再入国の自由を否定する判例(森川キャサリーン事件・最4.11.16)。

(ロ)政治活動の自由
判例は、外国人にも原則として政治活動の自由を認めますが、表現の自由と国民主権の調和から以下のように考えます。
 
・政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等⇒保障が及ばない。
・上記以外の政治活動⇒保障が及ぶ。


☆司法書士試験対策 判例

「政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に照らしこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ」(マクリーン事件 ・最S53.10.4)。

(ハ)参政権
特に選挙権については、国会議員選挙と地方議会議員選挙とを区別して考える必要があります。

①国会議員選挙
否定するのが通説・判例です。外国人に選挙権を与えることは国民主権原理に反するからです。

②地方議会議員選挙
判例は、「定住外国人」に選挙権は憲法上保障はされていないが、立法政策によって認めることは憲法上禁止されていないとします。国民主権の観点からも不都合はないと考えられるからです。つまり、法律で地方レベルの選挙権を外国人に、与えても与えなくてもどちらでもよい(合憲)こととなります。

☆司法書士試験対策 判例

日本に永住資格をもつ在日韓国人が選挙人名簿への登録を拒否された事件。

「国民主権原理及び地方公共団体が我国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法93条2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味すると解するのが相当であり、右規定は、我国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない」。
「憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性にかんがみ、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に密接な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない」(定住外国人地方参政権事件・最H7.2.28)。

(ニ)公務就任権
判例は、国民主権の観点から外国人は、公権力の行使にかかわる公務員にはなれないとしています。

☆司法書士試験対策 判例

東京都に保健師として採用された特別永住者である外国人が管理職選考試験の受験を拒否された事件。

「国民主権の原理に基づき、国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条、15条1項参照)に照らし、原則として日本国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、我が国以外の国家に帰属し、その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。」

「日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、上記の措置は、労働基準法3条にも、憲法14条1項に違反するものではない」(定住外国人公務就任事件・最H17.1.26)。

(ホ)社会権
① 否定説(判例)は、社会権は各人の所属する国によって保障されるべき権利であるから外国人には認められないとします。もっともこの説も社会権を法律によって外国人に保障することを否定するわけではありません。

② 肯定説は、社会構成員である定住外国人については社会権も保障されるとします。生存権は社会構成員の権利と考えるべきで、日本社会の一員として労働し生活する定住外国人については否定される理由はないと考えます。

☆司法書士試験対策 判例

定住外国人が障害福祉年金の支給対象から除外されたことが生存権を保障する憲法25条に違反しないかが争われた事件。

「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては・・・その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許されるべきことと解される。したがって、障害福祉年金の支給対象者から在留外国人を除外することは、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきである」(塩見訴訟 ・ 最H元.3.2)。

司法書士試験対策・憲法11条その3

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

5 法人の人権享有主体性
人権は個人尊重の観点から、個人としての人間に認められる権利であるから、法人には人権がないと考えられます。

しかし法人についても「性質上可能なかぎり」人権規定が適用されると解するのが通説・判例です。というのは、①法人の活動は自然人を通じて行われ、その効果は究極的には自然人に帰属すること、②法人も社会において個人同様一個の社会的実体として重要な活動をしていることが理由です。

(イ)法人に保障されない人権
もともと人権は個人の権利として生まれ、発展して来たものです。それを法人に認めるとしても限界があります。自然人にだけ考えられる人権(たとえば、人身の自由・生存権など)は法人には当然認められません。

法人に保障されない人権としては、
① 奴隷的拘束及び苦役からの自由(18)
② 不法に逮捕・監禁されない権利(33、34)
③ 拷問及び残虐な刑罰の禁止(36)
④ 生存権(25)
⑤ 選挙権(15-Ⅰ)などがあります。

(ハ)法人にも保障される人権
①信教の自由(20)、学問の自由(23)、報道の自由(21)
②財産権(29)、営業の自由・居住移転の自由(22)
③請願権(16)、裁判を受ける権利(32)、国家賠償請求権(17)
④適正手続の保障(31)、居住の不可侵(35)
⑤ 平等権(14)などがあります。

☆司法書士試験対策 判例

八幡製鉄の代表取締役が自民党に政治献金をしたことに対して株主が会社へ損害賠償をするよう訴えた。会社は政治活動の自由を有するのか、献金も適法かが争われた事件。

「国税等の負担を負う会社が、自然人たる国民同様、納税者たる立場において国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁ずべき理由はない。さらに憲法第三章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、国や政党の特定の政策を支持、推進し又は反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄付もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄付と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない」

「憲法上は会社といえども政治資金の寄付の自由を有する」
(八幡製鉄政治献金事件・最S45.6.24)。

☆司法書士試験対策 判例

南九州税理士会が税理士法改正の運動資金として会員から特別会費の徴収し政治団体である南九州各県税理士政治連盟へ配布するとの決議をした。それに反対な会員が法改正運動に反対の意見をもつ会員からも強制的に徴収することは思想・信条の自由を侵害するとして争った事件。

「税理士会が強制加入の団体であり、その会員である税理士に実質的には脱退の自由が保障されていない」

「会社とは法的性格を異にする法人であり、・・・」

「法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条を有するものが存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、自ずから限界がある。

特に政党など政治資金規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏をなすものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断などに基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。」

「そうすると、前記のような公的な性格を有する税理士会が、このような事柄を多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務づけることはできないというべきであり・・・」

「税理士会が・・・政治団体などに金員の寄付をすることは、・・・税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。」⇒徴収決議は目的範囲外の行為を目的とするものとして無効であるとした。(税理士会政治献金事件・最H8.3.19)。

⇒ポイント 法人の政治資金の寄付の自由(政治献金の自由)が、認められるか争いがあります。上の判例(八幡製鉄)は認め、下の判例(南九州税理士会)は認めていません。これは、税理士会は強制加入であることが大きな理由の1つとされています。八幡製鉄は、株式会社ですのでそこの株主になるかどうかは自由です(任意加入)。八幡製鉄の政治献金が嫌なら脱退すれば、自己の思想良心は守ることができます。税理士会は、税理士は強制加入なので嫌でも脱退できないところが判決が分かれた理由の1つと考えられているわけです。税理士会のメンバーの思想良心の自由を害すると裁判所が判断したと考えられています。

司法書士試験対策・憲法11条その4

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

6 人権の私人間効力
国家権力が国民の人権を侵害するのを憲法によって排除するというのが憲法の人権規定のそもそもの趣旨です。 しかしそれを理由に、憲法の人権規定は私人間には適用がない(無効力説といいます)と言ってしまうと、私人による人権侵害を防ぐことができず、国民の人権が十分に確保できません。

今日では企業、マスメディアなど巨大な力をもった国家類似の私的団体、社会的権力が生まれ、それらによって一般国民の人権が侵害されるという事態が生じて来たからです。

そこで、何らかの形で私人間にも人権保障を及ぼしていこうという考えが支配的です。以下の2つの考え方を理解しておきましょう。

①直接適用説
私人間においても憲法の人権規定を直接適用するとする考え方です。
⇒◆批判
私人間では私的自治の原則が基本原則であるのに、この立場では私人間の行為が大幅に憲法によって規律されることになり私的自治の原則が害される問題があります。また、人権はまず国家権力から守られなければならないという基本思想を見失わせる恐れがあります。

②間接適用説(通説・判例)
民法90条のような私法の一般条項に憲法の趣旨を取り込んで解釈・適用することによって、憲法の人権規定を間接的に適用していく考え方です。この考え方が私的自治の原則を尊重しつつ、憲法の人権規定の趣旨を実現するものとして判例・通説となっています。

なお、②説も人権の性質等から、私人間に直接適用される人権規定があることは否定しません。15条4項、18条、28条などです。

☆司法書士試験対策 判例

学生時代の学生運動歴を理由に本採用を拒否された原告が、特定の思想を理由に拒否することは、憲法の思想・良心の自由を侵害するとして争った事件。

憲法19条、14条は、「もっぱら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。
私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存する
(三菱樹脂事件・最S48.12.12)。

☆司法書士試験対策 判例
定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた会社の就業規則は、性別による不合理な差別を定めたものとして民法90条により無効とされた事件

「上告会社の就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。」
(日産自動車事件・最S56.3.24)。

司法書士試験対策・憲法12条その1

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

1 人権と公共の福祉
人権は全くの無制約ではありません。他の人権との調整のため制約を受けることがあります。たとえば表現の自由があるからといって、他人のプライバシーの権利を侵害することができないのは当然でしょう。

このことを憲法では、人権には「公共の福祉」による制約があると規定しています(12・13・22・29条)。公共の福祉とは人権相互の矛盾・衝突を調整を意味します(通説)。衝突する人権の性質の違いにより公共の福祉の具体的内容は変わりうると考えます。

2 人権の限界と違憲審査基準
公共の福祉による人権の制約が認められるとしてもどのようなルールで制約が認められるのか問題となります。特に、人権制約立法の合憲性判定基準が問題となります。

(イ)比較衡量論(利益衡量論)
比較衡量論とは、人権の制限によって得られる利益と失われる利益とを比較し、前者の利益が大きい場合には人権を制約する立法も許される(合憲)とする審査基準をいいます。

⇒◆批判
しかしこの基準は一般的に比較の準則が明確でなく、特に国家権力と国民との利益の衡量が行われる憲法の分野においては、概して国家権力の利益が優先する可能性が強い。

☆司法書士試験対策 判例

東京拘置所に勾留・収容されていた被疑者が新聞を私費で定期購入していたところ、よど号ハイジャック事件の新聞記事が塗りつぶされて交付されたので、知る権利を侵害したとして争った事件。

未決拘禁者の自由について、逃亡ないしないし罪証隠滅の防止の目的又は内部の規律及び秩序の維持という在監目的のため、「必要かつ合理的な範囲内において一定の制約が加えられることは已むをえない」。

その制限が是認されるかどうかは「右の目的のために制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである」
(よど号ハイジャック記事抹消事件・最S58.6.22)。

☆司法書士試験対策 判例

教科書検定が表現の自由を侵害するかが争われた事件。

表現の自由も「公共の福祉による合理的で必要已むをえない程度の制限を受けることがあり、・・・制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである」
(第一次家永教科書事件・最H5.3.16)。

(ロ)二重の基準論
二重の基準論とは、精神的自由を規制する法律の合憲性の判断基準は、経済的自由を規制する法律の場合よりも厳しい基準で合憲性を審査すべきとする理論をいいます。

同じ人権であっても、精神的自由権と経済的自由権とで合憲か否かの審査基準が異なるのは、以下の理由からです。

①経済的自由については、民主制の過程が正常に機能している限り、それによって不当な規制を改廃していくことが可能です。それに対し、精神的自由が不当に制約されると、民主制の過程そのものが傷つけられている(不当な規制に対する反対意見がいえないので改廃できない!)ので裁判所が積極的に介入して民主制の過程自体を回復させる必要がある。

②経済的自由を制約する法律は、経済政策・社会政策に基づいて作られることが多く、裁判所は政策判断には不向きであり、国会の判断を尊重せざるを得ない。それに対し、精神的自由の規制については政策的判断は必要でなく、裁判所にも判断能力があるという理由です。

司法書士試験対策・憲法12条その2

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

3 特別な法律関係における人権の限界
在監者や公務員などは、一般国民と異なる特別の人権制限がされています。例えば、公務員の政治活動の制限などがあります。なぜ、一般国民と異なるのか、ここでは在監者を取り上げます。

在監者が特別な人権制限をうける根拠は、憲法自身が在監関係を認めており(18・31条)、その目的を達成するためには、一定の人権制限が必要されるからで、人権制限は在監目的を達成するために必要最少限度にとどまると考えるのが有力説です。

☆司法書士試験対策 判例

公職選挙法違反で逮捕された者が、刑務所内における喫煙禁止に対し、自由及び幸福追求の人権を侵害するものだとして争った事件。

監獄内においては、「被拘禁者の身体の自由を拘束するだけではなく、右の目的に照らし、必要な限度においてその他の自由に対し、合理的制限を加えることも已むをえない」

「制限が必要かつ合理的なものであるかどうかは、制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容、これに加えられる制限の具体的態様との較量のうえに立って決せられるべきというべきである。」

「喫煙の禁止という程度の自由の制限は必要かつ合理的なものと解するのが相当であり、・・・憲法13条に違反するものといえない」
(被拘禁者の喫煙禁止事件・最S45.9.16)。

☆司法書士試験対策 判例

東京拘置所に勾留・収容されていた被疑者が新聞を私費で定期購入していたところ、よど号ハイジャック事件の新聞記事が塗りつぶされて交付されたので、知る権利を侵害したとして争った事件。

「未決勾留は、逃亡や証拠隠滅の防止を目的とする限度で、身体的行動の自由を制限されるのみならず、それ以外の行為の自由も制限されることはやむをえない。」
(よど号ハイジャック新聞記事抹消事件 最S58.6.22)。

司法書士試験対策・憲法13条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

1 幸福追求権とは
13条は、個人の尊重(個人主義の思想)を表明しています。そして、もう少し具体化して、国民が「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」(幸福追求権といいます。)を有することを明らかにしています。

ところで、憲法の各条項に列挙された人権は歴史的に重要な人権を列挙したものにすぎず、すべての人権を網羅したわけではありません。社会の変化等により個人の尊重の観点から認められるべき新しい人権は13条(幸福追求権)によって保障されると解されています。

①憲法も時代の変化とともに、新たな人権がでてくることは憲法も当然予想していたであろうし、②新たな人権を認めるには、憲法を改正しないといけないとするのは、時代の要請に対応できない恐れがあるからです。

つまり13条は、個人の尊重から認められるべき人権を包括的に保障するものと考えるわけです。そこから13条は「包括的基本権」であると言われます。

幸福追求権と憲法に規定する個別の人権規定との関係は、一般法と特別法の関係にあり、個別の人権で保障されない場合に限って13条が適用されると考えるのが通説です(補充的保障説)。個別の人権も、13条でも保障されるとするのは意味がないからです。結局、個別の人権規定でカバーできない場合に13条は意味を持つことになります。
 
2 幸福追求権から導き出される人権
(イ)プライバシー権
従来、 プライバシー権は「ひとりで放っておいてもらう権利」と解されていました。プライバシー権はこのように、個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという意味で自由権的・消極的権利と解されていました。しかし情報化社会の発展に伴い、公権力や大組織が個人に関する情報を収集・保管することこそが、個人に対する脅威であると認識されてきました。

そこで、プライバシー権は「自己に関する情報をコントロールする権利」(情報プライバシー権)であると解する見解が有力となりました。つまりプライバシー権とは、放っておいてもらう権利に止まらず、自己情報の開示請求権や訂正請求権も含む権利と考えるのです。個人情報が行政機関によって集中的に管理される現代社会において、個人が自己情報を自らコントロールし、自己の情報についての閲覧、訂正、抹消を求める権利と積極的に捉えるのです。

判例は、プライバシー権を正面から承認していませんが、実質的にはそれを認めています。

☆司法書士試験対策 判例

三島由紀夫のモデル小説「宴のあと」が、プライバシーの侵害であるとして争われた事件。

東京地裁はプライバシー権を「私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利」であると定義づけ、この私法上の権利(人格権)は、個人の尊重を保ち幸福の追求を保障するうえにおいて必要不可欠なものであるとし、それが憲法に基礎づけられた権利であることを認めています。(宴のあと事件・東京地S39.9.28)。
⇒最高裁レベルでは、プライバシー権を正面から定義をしたものはありません。

☆司法書士試験対策 判例

地方公共団体が弁護士による前科の照会に安易に応じた事件。

「前科及び犯罪経歴は人の名誉・信用にかかわり、これをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益である」
(前科照会事件・最S56.4.14)。
⇒前科をみだりに公開されない自由をプライバシー権の一つとして認めたものです。

☆司法書士試験対策 判例

デモ行進に際し、警察が犯罪捜査のため写真撮影を行った事件。

「個人の私生活上の自由の1つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも警察官が正当な理由もなく個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されない」
(京都府学連事件・最S44.12.24)。
⇒プライバシーの権利の一種として肖像権を認めたものと解されています。

(ロ)自己決定権
自己決定権とは、個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項を公権力の介入・干渉なしに自ら決定できる権利をいいます(人格的利益説)。

家族のあり方を決定する自由(結婚、離婚、避妊、出産、堕胎の自由)、自己の生死を決定する自由(安楽死、尊厳死)、 ライフスタイルを決定する自由(髪型、服装の自由)などが主要な例として掲げられます。

判例は自己決定権を真正面から認めているわけではありませんが、実質的にこれを認めています。

☆司法書士試験対策 判例

東大附属病院(医科研)の医師が患者の意思に反して輸血をしたのに対し、医師の説明義務違反により患者の自己決定権が侵害されたとして提訴した事件。

「患者が輸血をうけることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない」

「説明を怠ったことにより、原告が輸血を伴う可能性のあった本件手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪ったものといわざるを得ず、この点において同人の人格権を侵害したものとして、同人がこれによって被った精神的苦痛を慰謝すべき責任を負うものというべきである。」
(エホバの証人輸血拒否事件・最H12.2.29)。

☆司法書士試験対策 判例

酒税の徴収を確保するために酒類製造の自由を制約する免許制の合憲性を争った事件。

「自己消費目的の酒類製造の自由が制約されるとしても、そのような規制が立法府の裁量権を逸脱し、著しく不合理であることが明白であるとは言えず、憲法三十一条、十三条に違反するものでない」
(最H元12.14)
⇒どぶろく作りの自由が13条で保障されるかは、最高裁は明確な回答をしていない。

(ハ)名誉権

☆司法書士試験対策 判例

北海道の雑誌が知事選立候補者の名誉毀損記事の掲載を予定したため、その雑誌の出版差止めが認められた事件。

「名誉を違法に侵害された者は、人格権としての名誉権に基づき、侵害行為の差止めを求めることができる」
(北方ジャーナル事件・最S61.6.11)。
⇒人格権としての名誉権を憲法13条により認めたものとされます。

(ニ)その他の判例

☆司法書士試験対策 判例
在監者に対する喫煙制限について争われた事件。

「喫煙の自由は、憲法13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆるとき、所において保障されなければならないものではない。」
(最S45年9月16日)

☆司法書士試験対策 判例

外国人の指紋押捺拒否事件。

「憲法13条は、国民の私生活上の自由が国家権力の行使に対して保護されるべきことを規定しているとかいされるので、個人の私生活上の自由の1つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有する」

「公共の福祉のために必要がある場合には相当の制限を受ける」

「方法として一般的に許容される限度を超えない相当なものであり、憲法13条に違反しない。」
(最H7.12.15)。
⇒判例は、13条を根拠に「個人の私生活上の自由の1つとして、何人もみだりに指紋の押捺を強制されない自由を有する」ことを認めました。しかし、外国人の指紋押捺制度は、違憲ではないとしました。なお現在では、指紋押捺制度は廃止されています。

司法書士試験対策・憲法14条その1

1 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

1 法の下の平等の意味
(イ)法適用の平等と法内容の平等
「法の下に」平等とは、立法者を拘束するか争いがあります。

①立法者非拘束説
「法の下に」平等とは法の適用の平等を意味し、立法者を拘束しないとする説です。文言上「法の下」に平等とある以上、法の存在を前提とし、その適用について平等を言っていると読めるからです。
◆⇒批判
法内容が不平等であれば、その適用をいくら平等にしても不平等は残るという問題があります。

②立法者拘束説(通説)
「法の下に」平等は立法者をも拘束し、法内容の平等まで要求しているとする説です。平等原則は法の適用に当たる行政権、司法権のみならず、法を制定する際にも要求され、立法者をも拘束するとする考え方です。個人の尊重の思想からこの説が妥当と解されています。

(ロ)絶対的平等と相対的平等
ここでいう法の下に「平等」は、どういう意味か争いがあります。

①絶対的平等説
平等とは、事実的差異を無視し、全ての人を完全に均等に扱うことを意味すると考えます。

②相対的平等説(通説)
平等とは、事実的差異を前提として、同一の事情と条件の下では均等に扱うことを意味すると考えます。事実状態が異なる場合には、合理的な理由のある区別をすることは許され平等原則違反ではないと解します。

人にはさまざまな「事実の差異」があるから、それらを無視して機械的に均一に取り扱うことはかえって不合理を招くからです(絶対平等であると、赤ん坊にも選挙権を与えるとなる等)。

2 合理的差別の判断基準
相対的平等説をとると、何が合理的な取扱で、なにが不合理な差別かが問題となります。

判例は「目的と手段」の両面から合理性を判断しています。

☆司法書士試験対策・判例

旧刑法200条(平成7年削除)は、普通殺人に比べ尊属殺人(ex.親殺し)に重罰を科していました。これが憲法14条に違反しないかが問題となった事件(尊属殺重罰規定違憲判決)。

判例は、立法目的と目的達成の手段の両面から合理性があるか否かを審査し、尊属に対する尊重報恩という目的は正当であるが、手段が法定刑が死刑か無期かに限られている点で目的達成のための必要な限度を超え、違憲であるとしました(最S48.4.4)。

☆司法書士試験対策・判例

非嫡出子の相続分が嫡出子の2分の1とされていること(民法900‐④)が法の下の平等に反しないかが争われた事件(非嫡出子相続分規定合憲判決)。

判例は、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整という立法目的には合理的な根拠があり、その手段も右立法目的との関連で著しく不合理であって立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないとしました(最H7.7.5)。

☆司法書士試験対策・判例

大学教授が、サラリーマンの租税負担が他の事業所得者に比べて高いのは、憲法14条に違反するとして争った事件(サラリーマン税金訴訟)。

「租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取り扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することができず、これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできない」
(最S60.3.27)。



3 差別禁止事項列挙の意義
14条1項後段は特に「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」による差別を禁止する。この列挙の意味については大別して二つの考え方がある。

(イ)単なる例示であるとする説(判例・通説)
これらは単なる例示であって、それら以外でも不合理な差別は前段の原則によって禁止されるとする考え方です。

(ロ)限定列挙であるとする説
立法者非拘束説の立場に立つ学説は、後段に特別の意味を認め、後段列挙事由については立法者をも拘束するとし、これらを限定列挙だと考えます。

司法書士試験対策・憲法14条その2

1 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

4 議員定数不均衡
(イ)投票価値の平等
選挙権の平等は、「一人一票」の形式的平等が守られれば足りるというものではなく、各投票が選挙の結果に対してもつ影響力の平等すなわち「投票価値の平等」をも要求するとするのが判例・通説です。たとえば人口が1万人の中から1人を当選させる場合と、人口が50万人の中から1人当選させる場合では、1票の重みに50倍の格差があることになるのは不平等だからです。憲法14条は、選挙権に関しては、投票価値の平等まで要求したものと解されています。

(ロ)較差の合理性
議員一人当たりの人口較差は、1:1が望ましいとしても技術的な困難性もあり、また人口比以外の政策的要素や技術的要素も加味した結果の合理的差別は許されると解されます。この場合、どの程度の較差が許容されるのか問題になります。

通説は、いかに非人口的要素を考慮したとしても、1:2が限度であり、それ以上の較差は違憲だとします(通説)。それ以上の較差は一人一票の原則に反することになるからです。

(ハ)違憲無効とされる選挙の範囲
違憲無効とされる選挙は、定数配分規定のうち問題のある選挙区に関する規定のみならず、定数配分規定全体が違憲となると解されています(判例・通説)。議員定数というのは、全選挙区に影響を及ぼすものだからです。

(ニ)違憲判決の方法
① 合理的期間論
定数配分は、公職選挙法の配分表に基づいて行われます。その変更には公職選挙法の改正が必要となりますが、法改正は直ちにできるわけではありません。定数不均衡が判明したあと改正のための合理的期間を経過し、なお改正しない場合に違憲となるとするのが判例です。

② 事情判決の法理
それでは、改正のための合理的期間を経過し当該選挙が違憲となった場合に、いったん行われた選挙が無効となってしまうのかについて争いがあります。選挙無効とすると、当該選挙で選出された議員は資格を喪失することになり(前議員も任期満了で居なくなっている)法改正すらできなくなってしまいます。また、その選挙で選出された国会議員は、正当な国会議員でないことになるので、その国会議員による国会の判断も効力がないということになりかねません。

その不都合を避けるため、行政事件訴訟法31条のいわゆる「事情判決」の法理を適用し、違憲の定数配分規定に基づいて行われた選挙を無効とせず、違憲であることを宣言するに止めるのが判例です。

*事情判決の法理とは
処分などが違法であるが、これを取り消すことで公の利益に著しい障害を生ずる場合、裁判所は一切の事情を考慮して、当該処分を判決主文で違法と宣言するが取り消さないことができるとする法理(行政事件訴訟法31条)をいいます。

☆司法書士試験対策・判例

昭和47年衆議院議員選挙において、千葉一区と兵庫五区との間で1:4.99の較差が生じた。千葉一区の住民らが、投票価値の平等に反するとして選挙無効の訴えを提起した事件。

「本件議員定数配分規定の下における各選挙区の議員定数と人口数との比率の偏差は、右選挙当時には、憲法の選挙権の平等の要求に反する程度になっていたものといわなければならない。」

「合理的期間内における是正が憲法上要求されている考えられるのにそれが行われない場合に始めて憲法違反と断ぜられるべきものと解するのが、相当である。」

本件の場合は、「憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったものと認めざるをえない」

「選挙区割及び議員定数の配分は・・・相互に有機的に関連し、一の部分おける変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有するものと認められ、その意味において不可分一体をなすと考えられるから、右配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招来する部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである」

「これらの事情を考慮するときは、本件においては前記の法理(事情判決の法理)にしたがい、本件選挙は憲法に違反する議員定数配分規定に基づいて行われた点において違法である旨を判示するにとどめ、選挙自体はこれを無効としないこととするのが相当であり・・・」
(議員定数不均衡事件 最S51.4.14)。

司法書士試験対策・憲法15条

1 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

4 すべての選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

選挙権は、国政に関して自己の意思を表明することができる権利と公務の執行という二重の性格を持つと解されています。

選挙権は、人権の1つである参政権の行使という意味で権利ですが、代表者となる公務員(国家機関)を選定するという公的な役割を果たすので、純粋な個人の権利とは違った面があるからです。

また、「立候補の自由(被選挙権)」は、直接には規定されていませんが、15条1項で保障される人権であるとするのが判例です(最S43.12.4)。選挙権と表裏一体のものだからです。

司法書士試験対策・憲法16条

何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

請願権とは、国または地方公共団体の機関に対し、それぞれの機関が処理しうる事項について、苦情や要請を申し出る権利です。国民の参政権を補充する意味を持ちます。

司法書士試験対策・憲法17条

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

☆司法書士試験対策 判例

郵便法が賠償責任の制限・免除を定めていたことを憲法17条違反と争った事件

郵便物の亡失・き損などについての国の損害賠償責任を免除・制限しているのは憲法17条に違反するとした判例があります(最H14.9.11)。

司法書士試験対策 憲法18条

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

個人の尊重の観点から、自由な人格者であることと両立しないような身体の拘束(奴隷的拘束)、強制的な労役(意に反する苦役)を否定しています。

奴隷的拘束は、たとえ本人の同意があったとしても許されません。また、犯罪による処罰の場合でも許されません。

意に反する苦役は、犯罪による処罰を除いて禁止されます。

私人間にも適用されると解されています(直接適用)。

司法書士試験対策・憲法19条

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

1 思想・良心の自由の意義
「思想・良心」の意味をめぐっては、これを広く捉える説と狭く捉える説とがあります。

(イ)信条説(狭義説)
世界観、人生観など、個人の人格形成の核心をなすものを意味すると解します。

(ロ)内心説(広義説)
広く内心におけるものの見方、考え方、事物に関する是非善悪の判断を包括的に保障していると解します。

2 思想・良心の自由の内容
思想・良心の自由は下記の内容を含みます。

(イ)特定の思想・良心をもつこと、持たないことの自由
(ロ)特定の思想・良心をもつこと、持たないことによって不利益を受けない自由
(ハ)思想・良心につき「沈黙の自由」

3 制 約
思想・良心の自由は、内心の領域に属する問題であるので、他人の人権との調整を必要としません。公共の福祉によって制約されない絶対的な保障をうける人権です。

☆司法書士試験対策 判例

ラジオ及び新聞で対立候補の名誉を毀損した候補者に対し、裁判所は「放送及び記事は真実に相違しており、貴下の名誉を傷つけ御迷惑をおかけいたしました。ここに陳謝の意を表します」という文面の謝罪広告を命じた。これが憲法19条の保障する「良心の自由」を侵害するとして争われた事件。

謝罪広告が「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表するに止まる程度」であれば、これを強制することも憲法19条には反しないと判示した。
(謝罪公告事件・最S31.7.4)。
⇒学説では、信条説(狭義説)では、世界観、人生観等とは異なり、事物の是非、善悪の判断等は思想・両親の自由の保障の範囲に含まれないので、判例の認める程度のものであれば謝罪広告を命令することも許されるとします。しかし、内心説(広義説)では、違憲になると思われます。

☆司法書士試験対策 判例


区立中学生が、内申書に「校内において麹町中全共闘を名乗り、機関紙「砦」を発行した。学校文化祭の際、粉砕を叫んで他校の生徒と共に校内に乱入し、ビラまきを行った。大学生ML派の集会に参加している」などの記載があったことで、受験したすべての高校が不合格となった。この記載が思想・良心の自由を侵害したとして争われた事件。

「いずれの記載も、上告人の思想、信条そのものを記載したものでないことは明らかであり、右の記載に係る外部的行為によっては上告人の思想・信条を了知し得るものではないし、また上告人の思想・信条自体を高等学校の入学者選抜の資料に供したものとは到底解することができない」とし憲法19条違反はないとした。
(麹町中学内申書事件・最S63.7.15)。

司法書士試験対策・憲法20条

1 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

1 信教の自由と政教分離
(イ)20条1項前段・2項
20条1項前段は「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」と規定し、2項は「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」と規定します。これらはいずれも「信教の自由」を保障する人権規定です。

(ロ)20条1項後段・3項
20条1項後段は「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」とし、3項は「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と規定します。これらは、宗教団体や国を義務づける規定であって人権規定ではなく、いずれも政治と宗教との結び付きを禁止する「政教分離」の規定です。

政教分離の規定は89条にもあり「公金、その他の公の財産は、宗教上の組織、若しくは団体の使用、便益、若しくは維持のため・・・これを支出し又はその利用に供してはならない」とあります。これは国と宗教団体との癒着を金銭面で禁じた政教分離を定めた条文です。

(ハ)制度的保障
政教分離は制度的保障であるといわれます。そして「制度的保障」の規定とは、この場合の政教分離規定のような、政治と宗教を分離するという制度(システム)によって、より完全に人権(この場合は信教の自由)を保障しようとする条文のことをいいます。

2 信教の自由
(イ)信教の自由の内容
「信教の自由」には、次の三つが含まれます。

・信仰の自由
① 宗教を信仰すること、しないことの自由
② 宗教を信仰すること、しないことにより不利益を受けない自由
③ 信仰告白の自由

信仰の自由はあくまで内心の問題であり他人の人権と衝突することがありません。従って思想・良心の自由と同様、絶対的に保障されます。

・宗教的行為の自由
① 宗教上の行為、行事、儀式などを行い又は行わない自由
② それらに参加し、又は参加しない自由

・宗教的結社の自由
① 宗教的結社をつくること、つくらないことの自由
② 宗教的結社に入ること、入らないことの自由
③ 宗教的結社から脱退すること、しないことの自由

宗教的行為の自由、宗教的結社の自由については、他人の人権との衝突の可能性があります。従って必要不可欠な目的を達成するための最小限度の制約は認められます。

☆司法書士試験対策 判例

信仰上の理由に基づいて必修科目である体育の剣道の実技の履修を拒否した高専生徒が、2年連続の留年処分の後退学処分を受けた。これが信仰の自由を害するとして争われた事件。

「高等専門学校においては、剣道実技の履修が必須のものとまではいい難く、体育科目による教育目的の達成は、他の体育種目の履修などの代替的方法によってこれを行うことも性質上可能・・・」。

学生の剣道実技への参加拒否の理由は「信仰の核心的部分と密接に関連する真しなものであった」「裁量権の行使に当たり、当然そのことに相応の考慮を払う必要があった」。

本件処分は、「考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく・・・裁量権の範囲を超える違法なもの」である
(エホバの証人剣道拒否事件・最H8.3.8)。

☆司法書士試験対策 判例

宗教法人オウム真理教に対する解散命令が信教の自由を害しないかが争われた事件。

宗教法人法上の解散命令の制度は「宗教団体や信者の精神的、宗教的側面に容かいする意図によるものではなく、その制度の目的も合理的である」

大量殺人を目的とするサリンの生成は、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為であることは明らかである。

解散命令によってオウム真理教やその信者らの宗教上の行為に支障が生じても、それは解散命令に伴う間接的で事実上のものにすぎず、それは「必要でやむを得ない法的規制である」とし、憲法20条1項に反しないと判示した。
(オウム真理教解散事件 ・最H8.1.30)。

3 国家と宗教の分離の原則(政教分離の原則)
(イ)政教分離の意義と趣旨
「政教分離」とは、国家の非宗教性ないし中立性をいいます(最S52.7.13)。簡単にいえば政治と宗教を切り離しておけということです。これは下記の理由からです。

①信教の自由の確保
国家を宗教的に中立にしておくことによって間接的に信教の自由を確保する。戦前、国と神道とが結びつくことによって、他の宗教は弾圧され信教の自由が害された経緯があるからです。

②宗教の堕落の防止
国家と宗教が結合した場合、両者が堕落したことは歴史が証明するところであってそれを防止するためです。

③民主主義からの要請
民主主義は、多様な価値観を許容する相対的価値観に基づきます。それに対し宗教は他の宗教を受け容れない絶対的価値観に基づきます。これは民主主義に反するので、政治と宗教は切り離しておく必要があるわけです。

(ロ)政教分離の内容
①国の特権付与の禁止
他の宗教団体から区別して特定の宗教団体を優遇すること、他の団体から区別してすべての宗教団体を優遇することが禁止されます。ただし、一般国民や団体に対する利益付与でその中に宗教団体が含まれることはここでいう特権付与に当りません。他の文化財とともに神社等の文化財に対する補助金の交付がこの例にあたります。

②政治権力行使の禁止
宗教団体が政治上の権力(国、地方公共団体がもつ統治的権力)を行使することが禁止されます。

③国の宗教活動の禁止
国及びその機関が宗教教育その他一切の宗教的活動をすることが禁止されます。

(ハ)政教分離の限界
①完全分離と限定分離
政教分離の趣旨からすれば、政治と宗教とは分離すればするほど人権保障が徹底することになりそうです。そこから、政教分離の原則は、国家と宗教との結び付きを完全に否定するものなのかが問題となります。

・「完全分離説」はこれを肯定し、国家と宗教は完全に分離し、国家は宗教に関与し得ないと考えます。

・ 限定分離説(判例)は、一定の限度で国と宗教とのかかわり合いを認めざるを得ないとします。現実の問題として、宗教系私学への補助金など国家と宗教との完全な分離は不可能に近いからです。

(ニ)目的・効果基準
限定分離説からは、20条3項が禁止する宗教活動とは、「相当程度のかかわり合い」を超えるものを指すことになります。それでは相当程度のかかわり合いか否かは何を基準に判断するのかですが、この基準が「目的・効果基準」といわれるものです。

目的・効果基準とは、国の行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教を援助、助長、促進又は圧迫、干渉になる場合は、20条3項で禁止される宗教活動にあたるとするものです。

☆司法書士試験対策 判例

津市が体育館建設に際し、地鎮祭を行いそれに公金を支出したことが政教分離原則に反しないかが争われた事件。

「政教分離規定は、制度的保障の規定であって、国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由を確保しようとするものである」

「しかし、国家と宗教との完全な分離は不可能に近く、また、不合理な事態を生じる。それゆえ、政教分離原則は、宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的および効果にかんがみ、そのかかわり合いが相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないものと解すべきである」

「憲法20条3項にいう宗教的活動とは、政教分離原則の意義に照らしてこれを見れば、そのかかわり合いが右にいう相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであって、当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉となるような行為をいうものと解すべきである」

「本件起工式は、工事の無事安全を願うといった社会の一般慣習に従った儀礼を行うというもっぱら世俗的なものにすぎないと認められ、憲法20条3項により禁止される宗教的活動にはあたらない」
(津地鎮祭事件・最S52.7.13)。

☆司法書士試験対策 判例

愛媛県が靖国神社に玉串料として県の公金を支出したことが政教分離原則に反するかが争われた事件。

判例は、政教分離原則が制度的保障であること、憲法20条3項が禁止する宗教的活動に当たるか否かは、目的・効果基準によって判断すべきことを述べたのち、次のように判示。「一般に、玉串料などの奉納は、起工式などとは異なり・・・その宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼にすぎないものとなっているとはとうていいえない。そうであれば奉納者も、それが宗教的意義を有するものであるとの意識を大なり小なり持たざるを得ない。さらに愛媛県は、他の宗教団体の同種の儀式に同様の支出をしておらず、特定の宗教団体との間にのみ意識的な特別な関わり合いをもったことは否定できない。このような特別の関わりは、一般人に対して愛媛県が当該特定の宗教団体を特別に支援しており、それらの宗教団体が他の宗教団体とは異なる特別なものであるとの印象を与える。したがって、本件玉串料などを奉納したことは、その目的が宗教的意義をもつことを免れず、その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進になると認めるべきであり、これによってもたらされる愛媛県と靖国神社などとの関わり合いはわが国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものであって、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たり、また89条にも反する」
(愛媛玉串料事件・最H9.4.2)。

【ポイント】同じ公金支出が一方は合憲、他方は違憲とされた理由は、地鎮祭は誰でもが行う慣習化した社会的儀礼にすぎないから専ら世俗的目的で宗教目的ではないが、玉串料の奉納はそうではないということです。

司法書士試験対策・憲法21条その1

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

1 表現の自由とは
「表現の自由」とは、人の内心における精神作用を外部に表明する自由をいいます。
この表現の自由は、次のような重要な価値があるといわれます。

(イ)自己実現の価値
個人が表現活動を通じて自己の人格を発展させるという個人的価値です。

(ロ)自己統治の価値
表現活動によって国民が政治的意思決定に関与していくという、民主的な価値です。国民が政治に参加していくためには、表現の自由が必要不可欠というわけです。

2 表現の自由と知る権利
「知る権利」とは、国民が情報源から自由に情報を受け取り、又は情報の開示を要求する権利をいいます。

そもそも表現行為は情報の「送り手」と「受け手」の双方から成り立ちます。よって、表現の自由は、知る権利を表裏一体のものとして保障する意味も含まれています。かつては、特に知る権利を問題にする必要はありませんでした。

しかし現代社会のように、情報が国家やマスメディアに集中し、個人が専ら情報の受け手の側に回る時代(情報の送り手と受け手の分離の時代)では、受け手の側の「知る権利」が重要な意味を持つようになり再構築されたのです。現代では、知る権利の保障がなければ表現の自由の価値である自己実現・自己統治が不十分なものとならざるを得ないからです。

(イ)知る権利の法的性格
①知る権利の自由権的側面
知る権利は、国民が情報を収集することを国家によって妨げられないという自由権としての性格をもちます。

②参政権的側面
個人がさまざまな事実や意見を知ることによってはじめて有効に政治に参加できるという意味で、参政権的な役割をもちます。

③請求権的側面
国家に対して積極的に情報の公開を要求する請求権的性格をもちます。知る権利は、国家による情報の集中という状況から主張されたものだから、この請求権的側面が中心となります。

(ロ)請求権的側面における具体的権利性
知る権利は、国家などに対する情報開示請求権であるという点に大きな意義がありますが、しかしそれは抽象的な権利に止まり、それが具体的権利となるためには、請求権者、請求手続、開示を求めうる情報の範囲、請求が拒否された場合の救済方法などが法令によって制定されなければならないと解されています。具体的な定めがないと国としても困るからです。この考えから現在では「情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)」や各地方の「情報公開条例」などが定められています。

【注】「抽象的権利」とは、たとえば21条を根拠にして具体的に国に対して請求することはできず、具体的な立法を待ってはじめて請求できる権利ということです。

3 アクセス権
知る権利の関連事項としてアクセス権があります。アクセスとは、「接近する」との意味です。

アクセス権とは、情報の受け手である一般国民が、情報の送り手であるマスメディアに対して自己の意見の場を提供することを要求する権利(意見広告や反論文の掲載、番組への参加など)をいいます。

しかし、私企業であるマス・メディアに対する具体的なアクセス権を21条から直接導き出すことは困難で、それが具体的権利となるためには特別の法律(反論権法と呼ばれたりします)の制定が必要と解されています。ただ、法律によりアクセス権を設定することは、マズ・メディアの表現の自由との関係で違憲と考えるのが通説です。

☆司法書士試験対策 判例

日本共産党が自由民主党の意見公告により名誉を毀損されたとしてサンケイ新聞に反論文を無料掲載させるよう主張した事件。

判例は、反論権の制度は、名誉、プライバシーの保護には役立つが、「新聞を発行・販売する者にとっては、反論文が誤りであると確信している場合でもその掲載を強制されることになり、そのための紙面を割かなければならなくなる等の負担を強いられるのであって、これらの負担が、批判的記事、ことに公的記事に関する批判記事の掲載をちゅうちょさせ、憲法の保障する表現の自由を間接的に侵す危険につながるおそれが多分に存する」

「具体的な成文法の根拠がない限り、認めることはできない」
(サンケイ新聞意見広告事件・最S62.4.24)

司法書士試験対策・憲法21条その2

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

4 報道の自由
「報道の自由」とは、事実を知らせる自由をいいます。報道の自由は、①国民の知る権利に重要な意義を持つ、②報道のために報道内容の編集に報道機関の意見が表明される点から言っても、21条1項によって保障されると解するのに異論はありません。

☆司法書士試験対策 判例

米原子力空母寄港に反対の学生と機動隊の衝突事件の現場撮影TVフィルムの提出が裁判所により命ぜられた。これが放送会社の報道の自由を侵害するとして争われた事件。

「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものである。したがって、思想の表明の自由とならんで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあることはいうまでもない」
(博多駅TVフィルム提出事件・ 最S44.11.26)。

5 取材の自由
「取材の自由」とは、報道すべき生の事実に接し、これを獲得する自由をいいます。取材の自由も報道の自由の一環として21条によって保障されます(学説)。取材は報道の自由にとって不可欠な前提であり、国民の知る権利を充足するためには、取材活動の自由が確保されなければならないからです。

しかし判例は取材の自由については21条で保障されるとは言わないで「憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する」というに止まります。

☆司法書士試験対策 判例(上記の博多駅TVフィルム提出事件)

「報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない」。
(博多駅TVフィルム提出事件・ 最S44.11.26)。

☆司法書士試験対策 判例

アメリカ人弁護士レペタ氏が裁判傍聴の際にメモを採ることの許可を求めたが認められなかった。そこでメモを採ることは知る権利を行使することで21条で保障されているとして争った事件。

「傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、尊重に値し、故なく妨げられてはならない」

「メモを取る行為が・・・公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げる場合には、それが制限又は禁止されるべきことは当然である。」

「しかしながら・・・傍聴人のメモを取る行為が公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げるに至ることは通常はあり得ないのであって、これを傍聴人の自由に委せるべきであり、それが憲法21条1項の規定の精神に合致するものということができる」
(法廷メモ採取(レペタ)事件 ―― 最H元.3.8)。

6 取材源の秘匿
「取材源の秘匿権」とは、取材源の開示を強要されない権利をいいます。将来の取材を困難にするような国家からの要求を報道機関が拒めるかがここでの問題です。

これも21条によって保障されているとする学説が有力です。取材源の秘匿の保障があって今後の取材ができ、それによって国民の知る権利も充足されるからです。しかし、判例はこれを否定します。

☆司法書士試験対策 判例

新聞紙上に公務員が守秘義務に違反して秘密を漏らしたと推測できる記事が掲載された。検察官が記者の出廷と証言を求めたが拒否されたので、記者が証言拒絶罪(刑訴161条)で起訴された事件。

「一般国民の証言義務は国民の重大な義務である点に鑑み、証言拒絶権を認められる場合は極めて例外に属するのであり、また制限的である」

憲法21条は「一般人に対し平等に表現の自由を保障したものであって、新聞記者に特種の保障を与えたものではない。」

「取材源について、公の福祉のため最も重大な司法権の公正な発動につき必要欠くべからざる証言の義務をも犠牲にして、証言拒絶の権利までも保障したもの・・・ではない」
(石井記者事件・最S27.8.6)。

司法書士試験対策・憲法21条その3

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

7 表現の自由の限界
表現の自由といえども無制約ではありません。しかしその重要な価値からその制約が認められる場合及び程度は、できるだけ厳格に必要最小限度に止められなければなりません。

本サイトの憲法12条その1で述べましたが、「二重の基準」の理論が大事です。表現の自由を制約する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法よりも、特に厳しい基準によって審査されなければならないという理論です。


表現の自由に対して用いられる厳格な基準として、次のものがあります。

8 事前抑制の禁止
表現活動を事前に抑制することは許されないという原則です。この原則が認められる理由としては、下記のように色々とあります。

①事前規制は、規制すべきかどうかは憶測で判断せざるを得ないので、安全を期して規制してしまうというように、規制の範囲が広くなりやすい。

②憶測で規制するので、恣意的な判断が入る余地が広くなり、公権力にとって不都合な表現が妨害されがちである。

③憶測で規制されるので、どのような場合に規制されるかがわかりにくく、表現者が規制を恐れて自己抑制をしやすい(萎縮的効果)

④事前抑制されても、問題のない表現は裁判で取り消される事になりますが、時宜性を要する表現にとっては致命的である。表現者が規制を恐れて自己抑制し易い(萎縮的効果)。

(ロ)例外的に事前抑制が許される場合の判例

☆司法書士試験対策 判例

北海道知事選挙の立候補予定者が自己を中傷誹謗する記事の掲載を予定している雑誌の出版差止を請求し、これが認められた。この仮処分が21条に違反するとして争われた事件。

「表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件の下においてのみ許容されうるものである」。

厳格かつ明確な要件とは「その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがある」ときであるとしました。本件ではこの要件が充たされており、例外的に事前差止が許されると判示しています。
(北方ジャーナル事件・最S61.6.11)
⇒判例は、次の二つの要件を充たす場合には事前差止を認めてよいとしている。
 ① 表現内容が真実でなく、公益目的でもないこと
② 被害者が重大かつ回復困難な損害を被るおそれがあること


(ハ)検閲の禁止

憲法21条2項の「検閲の禁止」が「事前抑制の禁止」と同じものか大別して2つの見解があります。ただ、どちらの説も以下の(a)(b)を導きたいという結論には差はありません。

(a)行政権が特定の表現を事前に規制することを絶対に禁止したい。
(b)裁判所が問題のある表現を事前に差し止めることは厳格な要件のもとで認めたい。


◆①検閲と事前抑制を区別する説(判例)

検閲は、21条2項で絶対的に禁止されるとします。

事前抑制は、21条1項で保障されるとします。ここでの事前抑制は、検閲以外の事前抑制を意味します。事前抑制は原則禁止ですが、例外的に裁判所による差し止めは認められるられると解します。

結局、(a)は21条2項の問題で、(b)は21条1項の問題とします。

この説では、検閲とは「行政権が思想内容等の表現物を、発表の禁止を目的として網羅的一般的に審査し、不適当と認めるときは発表を禁止すること」とします(狭義説)。判例はこのように21条検閲の概念を狭く解したうえで、検閲は絶対的に禁止されるとします。

◆②検閲と事前抑制を同じとする説

21条2項の検閲とは、事前抑制のことであるとします。そして、21条2項で定める検閲(=事前抑制)は原則禁止ですが、例外的に裁判所による差し止めは認められると解します。

結局、(a)・(b)とも21条2項の問題とします。

この説では、検閲(=事前抑制)とは「公権力が表現内容を事前に審査し、不適当と認めるときはその発表を禁止すること」とします(広義説)。

この立場からは、裁判所による出版物の差止請求も検閲に該ることになりますが、裁判所が行うものであり濫用のおそれが少ないため厳格な要件の下に例外的に認められると解することになります。

◆①説と②説の検閲概念の整理

         狭義説             広義説

主体→      行政権             公権力

対象→      思想内容等の表現物       思想内容

時期→      発表前             発表前

裁判所による  検閲に該らない        検閲に該る
差止仮処分→  (検閲は絶対的禁止)     (検閲は例外を認める相対的禁止)


☆司法書士試験対策 判例

欧米の商社に注文した八ミリフィルムや雑誌が税関で輸入禁止処分となった。この処分が検閲に該るとして争われた事件。

「検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき、網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することをその特質とするものを指す」と定義しました。
(札幌税関検査事件・最S59.12.12)
⇒税関検査が検閲にあたるかどうかですが、①表現物は国外で発表ずみである(発表を禁止していない)、②税徴収の目的で行うものであって、思想内容等の審査を目的としていないなどを理由に、検閲に該らないとしました。

☆司法書士試験対策 判例

家永三郎教授が、教科書の検定不合格処分に対して、検定は検閲に該るとして処分の取消を求めて争った事件。

「本件検定は・・・一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、検閲に当たらず、憲法21条Ⅱ項の規定に違反するものではない」
「本件検定による表現の自由の制限は、合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであって、憲法21条1項の規定に違反するものではない。」
(第一次家永教科書検定事件・最H5.3.16)。
⇒教科書としては発行できないが、一般図書としてなら発行できるので、発表禁止ではなく検閲に該らないとしました。

司法書士試験対策・憲法21条その4

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

9 表現の内容規制
表現内容の規制とは、表現の内容に着目した規制をいいます。表現内容の規制は権力者が自己に都合の悪い表現を規制する等、表現の自由にとって致命的な規制となるので、それを規制する立法の合憲性は厳格に審査されなければならないと考えられます。ただ、さまざまな種類があるので一律の扱いは不可能とされます。

◆名誉とプライバシー
刑法230条の2第1項は、下記の①~③の条件がそろったときは処罰をしないとして、表現の自由と名誉・プライバシー(13条で保障)の調整を図っています。
①公共の利害に関する事実に係り、
②その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、
③事実の真否を判断し、真実であることの証明があったとき

☆司法書士試験対策 判例

夕刊和歌山時事で他の新聞社の社主の名誉を毀損したとして刑法230条の2第1項の罪に問われた事件。

「真実であることの証明がない場合でも、行為者が真実であると誤信し、それが確実な資料、根拠に照らして相当な理由があるときは、罪は成立しない」」
(夕刊和歌山事件・最S44.6.25)
⇒上記に記載した刑法の③の真実の証明は、表現者の側に重い負担がかかるので、証明責任を緩和して、表現をしやすくしました。表現の自由よりに解釈した判例です。

☆司法書士試験対策 判例

月刊ペン誌編集長が、創価学会と池田大作会長らの名誉を毀損する記事を執筆掲載したとして訴追された事件。

私人の生活上の行状でも「そのたずさわる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法230条の2第1項にいう『公共の利害に関する事実』にあたる場合があると解すべきである。」としました。
(月刊ペン事件・最S56.4.16)
⇒上記に記載した刑法の①の公共の利害に関する事実を緩和して、表現をしやすくしました。表現の自由よりに解釈した判例です。


◆わいせつ文書の規制

☆司法書士試験対策 判例

小説「チャタレイ夫人の恋人」の翻訳者と出版社社長とが、刑法175条のわいせつ物販売罪で起訴された。刑法175条が表現の自由に対する規制として合憲かが争われた事件。

判例は、わいせつ文書とは「徒らに性欲を興奮または刺激せしめ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と定義しました。

刑法175条は、「性的秩序を守り、最小限度の性道徳を維持することが公共の福祉の内容をなす」ことから合憲であるとしました。

また、芸術面においてすぐれた作品であっても、これと次元を異にする道徳的・法的面においてわいせつ性があると判断することは可能であるとしました。
(絶対的わいせつ概念 ・チャタレイ事件・最S32.3.13)

10 表現内容に中立的な規制
内容中立規制とは、表現の内容には関係なく、表現の手段・方法等を規制する場合を言います。

内容中立規制は、内容自体の規制とは異なり、緩やかな合憲性判定基準を採ることが許されます。ビラ貼り、ビラ配りなど表現の時・所(場所)・方法の規制は、表現内容の規制ほど表現の抑圧の危険性は少ないと考えられるからです。

☆司法書士試験対策 判例

大阪市条例に違反して橋柱や電柱などに決起ビラを貼り付けた者が罰金に処せられた。美観風致維持のために表現の自由を制限することは許されるか争われた事件。

「国民の文化的生活の向上を目途とする憲法の下においては、都市の美観風致を維持することは、公共の福祉を保持する所以であるから、この程度の規制は、公共の福祉のため、表現の自由に対し許された必要且つ合理的な制限と解することができる」として条例は合憲とした。
(大阪市屋外広告物条例違反事件 ・最S43.12.18)。

☆司法書士試験対策 判例

選挙人宅を戸別訪問して投票を依頼したことが、公職選挙法に違反するとして起訴された者が、戸別訪問を全面的に禁止した公職選挙法の規定は憲法21条に反するとして争った事件。

戸別訪問の禁止をしても「戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない反面、禁止により得られる利益は、戸別訪問という手段方法がもたらす弊害を防止することによる選挙の自由と更正であるから、得られる利益は失われる利益に比してはるかに大きい」

「戸別訪問を一律禁止している公職選挙法138条1項の規定は、合理的で必要やむをえない限度を超えるものとは認められず、憲法21条に反するものではない。」

「戸別訪問を一律禁止にするかどうかは、専ら選挙の自由と公正を確保する見地からする立法政策の問題で」あるとしました。
(戸別訪問禁止事件・最S56.6.15)。

司法書士試験対策・憲法21条その5

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

11 集会の自由
集会の自由とは、多数人が共同の目的をもって一定の場所に集まる一時的な集合体をいいます。表現の自由の一形態として21条によって保障されています。

この集会の自由は、多数人が集合する場所を前提とする表現活動で、行動を伴うこともあり、他者の人権と衝突する可能性があるため制約は免れません。

☆司法書士試験対策 判例

関西空港建設反対派が市民会館の使用許可を求めたところ、条例で定める不許可事由である「公の秩序をみだすおそれがある場合」に該当するとして不許可とされた事件。

「利用を拒否し得るのは、利用の希望が競合する場合のほかは、施設をその集会のために利用させることによって他の基本的人権が侵害され、公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られる」

「集会の開催が必要かつ合理的な範囲で制限を受けることがあるといわなければならない。」

「制限が必要かつ合理的なものとして肯認されるかどうかは、基本的には、基本的人権としての集会の自由の重要性と、当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の程度等を較量して決せられるべきものである」

「その危険性の程度としては・・・単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要である」
(泉佐野市民会館事件・最H7.3.7)。

12 集団行進の自由
集団行進も国民の意思表現の一つであるから、21条1項で保障されます(判例、通説)。ただ、①「動く集会」として集会の自由に含まれるのか、②「その他一切の表現の自由」に含まれるのかについては争われています。

集団行進は一定の行動を伴うものであるから、特に他の国民の人権との調整を必要とし、特別の規制に服します。現実には各地方公共団体によって制定される「公安条例」による事前規制の合憲性が争われます。なお集団行進の内容ではなく、表現の時・場所・方法に関する必要最少限度の規制は検閲にはあたりません。しかし、事前抑制禁止の原則により明確な要件の下においてのみ規制が許されます。

☆司法書士試験対策 判例

密造酒取り締りのトラブルによる警察署前での無許可集団行動(200~300人)が新潟県公安条例違反とされた事件

「単なる届出制を定めることは格別、そうでなく一般的な許可制を定めてこれを事前に抑制することは憲法の趣旨に反し許されない」

「特定の場所又は方法につき、合理的かつ明確な基準の下に、予じめ許可を受けしめ、又は、届出をなさしめてこのような場合にはこれを禁止することができる旨の規定を条例で設けても、これをもって直ちに憲法の保障する国民の自由を不当に制限するものと解することはできない。」

「公共の安全に対して明らかな差し迫った危険を及ぼすことが予見されるときは、これを許可せず又は禁止することができる旨の規定を設けることも、・・・直ちに憲法の保障する国民の自由を不当に制限することにはならない。」
(新潟県公安条例事件・最S29.11.24)。
⇒許可制には二つあり、一般的な許可制は許可の基準もあいまいで不当な抑制となる可能性があるから許されないが、合理的かつ明確な基準下での許可制なら合憲とします。届出制は単に届出さえすれば集団行進ができるので合憲としています。

☆司法書士試験対策 判例

東京都内で行われた学生運動でもが、東京都公安条例違反とされた事件。

「集団行動による思想等の表現は、・・・甚だしい場合には一瞬にして暴徒と化し、勢いの赴くところ実力によって法と秩序を蹂躙し、・・・警察力を以ってしても如何ともし得ないような事態に発展する危険性が存在すること、群集心理の法則と現実の経験に徴して明らかである。」

「本条例は規定の文面上では許可制を採用しているが、この許可制はその実質において届出制とことなるところがない。」から合憲である
(東京都公安条例事件・最S53.7.20)。

⇒「集団暴徒化論」により、規制の大幅な緩和を認めました。治安維持のために表現の自由の不当な制約を容認しているとの批判がある判例です。


4 結社の自由
「結社」とは、共通の目的をもった複数人の継続的な結合体をいいます。政党のような政治結社のほか、宗教、学問、芸術などを目的としたすべての結社を含みます。

結社の自由は① 団体を結成すること、しないこと。団体に加入すること、しないこと、団体に留まること、脱退することにつき公権力による干渉を受けないこと、② 団体の存続、活動につき公権力による干渉を受けないことを内容としています。

結社の自由も犯罪結社が許されないように限界があります。この点に関して破壊活動防止法が団体に対して解散の指定を行うことができるとしていることが結社の自由を害するのではないかが問題とされています。

司法書士試験対策・憲法22条

1 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

1 居住・移転の自由
「居住、移転の自由」とは、住所又は居所の決定・移転をする自由をいいます。

資本主義経済の存立にとっては、人と物の自由な移動が不可欠です。そこで、人の移動の自由は、経済的自由の一つに位置づけられて来ました。また、人は移転の自由を通じてさまざまな情報を獲得し、人格を形成していくことから、精神的自由権としての性格や人身の自由としての側面も持ちます。

2 職業選択の自由
「職業選択の自由」は、自己がいかなる職業につくかを選択する自由だけでなく、その選択した職業を遂行する自由(職業活動の自由、職業遂行の自由)すなわち「営業の自由」を含みます(判例・通説)。自ら選択した職業を遂行できなければ、職業選択の自由を認めた意味がないからです。営業の自由も憲法22条1項により保障されていると解されます。

(イ)営業の自由規制の合憲性審査基準
判例は、営業の自由を規制の合憲性審査基準をその規制目的により次の二つに区別します。

(1)消極目的(警察目的)の規制
生命・健康・安全の保護のために必要な規制を「消極目的規制」といいます。この場合には規制目的が「必要かつ合理的」なものであることが要請され、そして、規制手段が「よりゆるやかな制限によって目的を十分に達成できない」かどうかを要求します。これを「厳格な合理性の基準」といいます。

この規制は政策的なものではなく、裁判官にも十分判断できる事柄だから、合憲性を厳しく判断していこうとするものです。

(2)積極目的(政策目的)の規制
社会政策、経済政策(特に社会的・経済的弱者保護)のために必要な規制を「積極目的規制」といいます。この場合はその規制の目的および手段の選択に関して立法府の広範な裁量がみとめられるべきであり、その裁量を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白な場合に限って違憲となります。明白性の原則といいます。

政策目的による規制は裁判官の判断能力が十分でないので、国会の判断を尊重し、著しく不合理であることが明白な場合だけ違憲とするものです。

☆司法書士試験対策 判例

薬事法の「適正配置のための距離制限」」規定により知事から薬局開設不許可とされた者が、当該規定は憲法22条Ⅰ項に定める営業の自由を不当に制約するものだとして争った
事件。

「適正配置規制は、主として国民の生活及び健康に対する危険の防止という消極的・警察目的のための規制措置であり、」

「不良医薬品の供給の防止等の目的のために必要かつ合理的な規制を定めたものとはいうことができないから、憲法22条1項に違反し、無効である。」
(薬事法違憲判決・最S50.4.30)。

☆司法書士試験対策 判例

小売市場開設の距離制限(知事の許可を要する)に違反して小売市場を建て、これを賃貸した者が小売商業調整特別措置法違反で起訴された。そこで同法の許可制や距離制限の規定が憲法22条Ⅰ項に反するとして争った事件。

「小売市場の許可規制は、国が社会経済の調和的発展を企図するという観点から中小企業保護政策の一方策としてとった措置ということができ、一応の合理性を認めることができないわけではなく、また、その規制の手段・態様においても、それが著しく不合理であることが明白であるとは認められない。」
(小売商業調整特別措置法事件・最S47.11.22)。
⇒同じ距離制限なのに、薬局は違憲、小売商は合憲とされています。薬局の方の規制は消極目的規制で、小売商の方の規制は積極目的規制というところからきています。薬局の規制をしている薬事法が合憲性の判断が厳しく問われたからです。

☆司法書士試験対策 判例

酒類販売の免許申請をしたところ、所轄税務署長に「経営の基礎が薄弱である」として拒否された。そこで酒類販売業の免許制及び免許要件を定める酒税法の規定は憲法22条1項に反するとして争った。

「租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理なものでない限り、憲法22条1項に違反するものということはできない」
(酒類販売免許制事件・ 最H4.12.15)。

⇒本件は、財政目的による規制であり、積極目的とも消極目的とも性格を異にします。そこで判例は積極目的か消極目的かを明示することなく、税政策については裁判所の判断能力は十分でないから立法府の判断を尊重して、国会の判断が「著しく不合理である場合」に限り違憲となるとしました。

3 海外渡航の自由
憲法22条2項は、外国移住の自由を保障します。では、一時的な海外渡航(外国旅行)の自由の保障の根拠はどこにあるのか争われますが、22条2項により保障されるとする説が判例・通説です。

理由は、22条2項で国外移住の自由を保障したものですが、永住を保障し、一時渡航を保障しないとするのは不自然なので、移住の自由には一時渡航の自由も含まれると解するのです。

この海外渡航の自由を制限するのは旅券法です。海外渡航には旅券の所持を義務づけ、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」に対しては、外務大臣は旅券の発給を拒否できるとします(旅券13条)。これが違憲ではないかが争われていますが、判例は合憲とします。

☆司法書士試験対策 判例

元参議院議員帆足(ほあし)計氏がモスクワの国民経済会議出席のため旅券の発給を求めたところ拒否された事件。

「憲法22条2項の「外国に移住する自由」には、外国へ一時旅行する自由を含むものと解すべきであるが、外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきである」

「旅券法13条の規定は、外国旅行の自由に対し、公共の福祉のために合理的な制限を定めたものとみることかでき・・・右規定が漠然たる基準を示す無効のものであるということはできない」
(帆足計事件 ・ 最S33.9.10)。

司法書士試験対策・憲法23条

学問の自由は、これを保障する。

1 学問の自由
学問の自由の内容としては、①学問研究の自由、②研究成果の発表の自由、③教授の自由、④大学の自治があげられます。

なお、明治憲法では学問の自由の規定はありませんでした。

2 大学の自治
大学が学問活動の中心であることから、学問の自由の保障のため「大学の自治」という制度が23条で保障されると解されています(制度的保障)。大学の自治とは、大学の構成員が大学の管理・運営を大学設置者・資金提供者の干渉をうけずに自主的に行うことを意味します。

大学の自治の具体的内容としては、①研究・教育の自主決定権、②人事権、③財政の自治権、④施設、学生管理権などがあります。

④に関しては、警察権との関係が問題となります。

☆司法書士試験対策 判例

東京大学公認の学生団体「ポポロ劇団」が演劇発表会中、私服警官がいることを学生が発見し暴行を加えたとして、暴力行為等処罰に関する法律違反で起訴された事件。

「学生の集会が真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しないといわなければならない。また、その集会が学生のみのものでなく、とくに一般公衆の入場を許す場合には、むしろ公開の集会と見なされるべきである、少なくともこれに準じるものというべきである。」

「したがって、本件の集会に警察官が立ち入ったことは、大学の学問の自由と自治を犯すものではない。」
(東大ポポロ事件・最S38.5.22)。

司法書士試験対策・憲法24条

1 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
 
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊重と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

司法書士試験対策・憲法25条

1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

1 社会権とは
社会権とは、福祉国家(社会国家)の理念から国民に認められた権利の総称です。日本国憲法では、・ 生存権(25)・教育を受ける権利(26)・勤労の権利(27)・労働基本権(憲28)の権利を保障しています。初めて社会権が導入されたのは、ワイマール憲法です。

自由権との違いは、自由権は国の介入の排除を求める権利(国家からの自由)であるのに対し、社会権は国の一定の行為を要求する権利(国家による自由)であることです。注意すべきは、社会権も、公権力による不当な侵害があった場合には、その排除を求めることができる自由権としての側面も持っていることです。

2 生存権
憲法25条1項の生存権の保障は、国民は誰でも人間的な生活を送ることができることを宣言したものです。そして同条2項は、福祉国家として国が国民生活に積極的に配慮すべきことを義務として定めています。

生存権は社会権の代表的なものですが、国民の健康で文化的な最低限度の生活を公権力が侵害してはならないという意味で自由権的側面をもちます。

生存権の内容は、抽象的不明確だから国会が具体的な内容を定める必要があります。具体的な法律がない場合、裁判所は介入すべきではないと考えられます。

ここから生存権の法的性格については争いがあります。①も②も具体的な法律なくして、憲法25条を直接の根拠として裁判で争うことはできないと考える点では同じです。

①プログラム規定説
25条は、国に国民の生存を確保すべき政治的・道義的義務を課したもので、国民に対して法的権利を保障したものではないとする説です。

理由は、下記のことがあげられています。
・生存権の内容は抽象的で不明確であるから、25条を直接の根拠として生活扶助を請求する権利を導き出すことは困難であること。
・憲法は資本主義体制を前提としており、そこでは自助が原則であること。
・生存権の実現には予算が必要ですが、予算の配分は国の財政政策の問題であるから、政府の裁量に委ねられていること。

②抽象的権利説(通説)
25条は国民に法的権利を保障し、国に生存権を実現すべき法的義務を課しているとする説です。ただし、生存権の内容は抽象的で不明確であるから抽象的権利に止まるとします。

理由は、下記のことがあげられています。
・25条は権利という言葉を用いている。
・権利があるといっても生存権の内容が抽象的なこと、また財政の裏づけが必要であることから国会の制定する法律による具体化を要する。

☆司法書士試験対策 判例

結核療養所に入所中の朝日氏は、生活保護を受けていたが、実兄からの送金がなされだしたことを理由に支給の一部がカットされた。その処分が25条に違反するとして争われました。なお朝日氏は訴訟係属中死亡し、養子が訴訟の承継を主張したが、最高裁は、生活保護受給権は一身専属権であるから相続人に承継されず、原告死亡により訴訟は終了するとしたが、「なお、念のため」として次のように判示した事件。

憲法25条1項の規定は「すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」

「具体的な権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって、はじめて与えられているというべきである。」

「何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう厚生大臣の合目的的な裁量に委されており」

「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界を超えた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることをまぬかれない。」

「厚生大臣の認定判断は、与えられた裁量権の限界をこえまたは裁量権を濫用した違法があるものとはとうてい断定することができない」
(朝日訴訟・最S42.5.24)。

☆司法書士試験対策 判例

全盲で障害福祉年金を受けていた堀木フミ子氏は、離婚し二人の子供を育てていたため、さらに児童福祉手当ての請求もしたところ、児童福祉手当法の併給禁止規定に当たるとして請求が認められなかった。そこで同規定が憲法25条違反であるとして争った事件。

健康で文化的な最低限度の生活なるものは、「きわめて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって、憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない」
(堀木訴訟・最S57.7.7)。

司法書士試験対策・憲法26条

1 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。

3 義務教育は、これを無償とする。

1 教育を受ける権利とは
すべての国民、特に子供は、生まれながらにして教育を受け学習することによって人間として成長し、発展していく権利(学習権)を有していると考えられます。この子供の学習権を充足しうるような教育条件の整備や教育内容の整備を国家に対して要求しうる点に「教育を受ける権利」の主な意義があると考えられています。

教育を受ける権利は一般に、国に対し教育を施すよう請求する権利(社会権)として捉えられていますが、子の教育を受ける権利に対して国や地方公共団体などの公権力が圧迫や干渉を加えてはならないという意味では自由権的側面も持ちます。

教育を受ける権利については、教育内容や方法を決定する権能(教育権)はどこにあるかが争われています。大学については「大学の自治(23)」の内容として教員に教育内容の自主決定権が認められるとすることに異論はありません。小中高等学校のような普通教育機関の場合に問題とされます。

①国家教育権説
教育権の主体は国家であり、国家は公教育を実施する教師の教育の自由に制約を加えることができるとします。

②国民教育権説
教育権については、親を中心する国民全体にあり、公権力は国民の義務教育の遂行を側面から助成するための諸条件の整備に限られ、親が教育を任せている教師の教育の自由に制約を加えることは、原則として許されないとします。

③折衷説(旭川学テ事件・最S51.5.21
判例は、両説はいずれも極端であるとし、親・教師に一定の教育の自由が認められると同時に、国にも必要かつ相当と認められる範囲で教育内容を決定する権能があるとしました。

児童生徒には教育内容を批判する能力がないこと、教育の機会均等から全国的に一定の水準を確保する必要性があることなどから、国にも一定の範囲で教育内容を決定する権能を認めた判例です。

2 義務教育の無償の範囲
義務教育を実質的に確保するために、26条2項は「義務教育は、これを無償とする」と定めています。

どこまでが無償かについては争いがあります。教育の対価である授業料の無償を定めたものであるとする説が通説・判例(最S39.2.26)です。

司法書士試験対策・憲法27条

1 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

3 児童は、これを酷使してはならない。

国民の憲法上の義務は、人権保持の義務(12条)、教育の義務(26条2項)、勤労の義務(27条1項)、納税の義務(30条)があげられます。これらは、一般に国民に対する倫理的指針といった程度の意味合いしかありません。

司法書士試験対策・憲法28条

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

1 労働基本権とは
勤労者の「団結権」「団体交渉権」「団体行動権(争議権)」を総称して「労働基本権(労働三権)」と呼び、28条で保障されます。

労働基本権は、経済的弱者である労働者を保護するために、国に対して労働基本権の確保を請求する権利という意味で、社会権に分類されます。

しかし、労働基本権を規制する立法その他の国家の介入を禁止するという意味では自由権的側面をもちます。これにより争議行為が権利として保障されているので、刑事責任を問われないことになります(刑事免責)。

労働基本権も国家に対し適用がありますが、しかし主に使用者との関係で勤労者に認められる権利ですから、私人間にも直接適用されると解されています。これにより争議行為が権利として保障されるため、民事の責任を問われないことになります(民事免責)。

2 公務員の労働基本権
公務員の労働基本権は、法律(国公法、地公法、自衛隊法など)によって広汎な制限を受け、特に争議権は一律に禁止されます。これが労働基本権を定めた28条に違反しないかが問題となっています。

☆司法書士試験対策 判例

警職法改正は、警察による労働運動抑圧の危険があるとして、国家公務員である全農林の職員に対し争議行為(反対運動のための職場大会への参加)を呼びかけた者が、国家公務員法で禁止する「あおり行為」にあたるとして起訴された。そこで同規定は28条に反するかが争われた事件。

「公務員に対して団結権をはじめその他一切の労働基本権を否定することは許されないのであるが、公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるときは、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることは、十分な理由があるというべきである。」
(全農林警職法事件・最S48.4.25)。
⇒公務員の争議行為の争議行為の一律禁止も合憲であるとしました。

司法書士試験対策・憲法29条

1 財産権は、これを侵してはならない。

2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

1財産権とは
29条1項は(イ)個人が有している財産権の保障とともに(ロ)個人の財産権を保障する前提として私有財産制度の保障(制度的保障)をしていると解されています。財産権は一定の法制度(私有財産制度)を前提にしてなりたつ権利だからです。

財産権も、22条で述べたのと同様に消極的目的規制と社会権実現のための積極的目的規制に服すると解されています。29条2項の公共の福祉がそれを意味していると解されています。

29条2項は、財産権の規制は「法律」による旨明規します。そこで「条例」によって財産権を制約することができるかが問題となっています。通説・判例は、条例による制約を肯定します。条例は地方公共団体の議会によって民主的に制定される法であり、実質的に法律と変わらないというのが理由です。

☆司法書士試験対策 判例

奈良県が、決壊等による防災のためにため池の提とうの耕作を禁じたため、提とうの所有者が条例による財産権の制限は、憲法29条2項に違反するとして争った事件。

「ため池の提とうを使用する財産上の権利を有する者は、本条例1条の示す目的のため、その財産権の行使を殆ど全面的に禁止されることになるが、それは災害を未然に防止するという社会生活上の已むを得ない必要から来ることであって、ため池の提とうを使用する財産上の権利を有する者は、何人も、公共の福祉のため当然これを受忍しなければならない義務を負うというべきである。すなわち、ため池の破損・決かいの原因となるため池の提とうの使用行為は、憲法でも民法でも適法な財産権の行使として保障されていないものであって、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にあるものというべく、従ってこれらの行為を条例をもって禁止・処罰しても憲法及び法律に抵触又はこれを逸脱するものとはいえない」
(奈良県ため池条例事件・最S38.6.26)。
⇒判例も条例による財産権の制約を認めています。


2 財産権と補償
29条3項は、個人の私有財産を公共のために用いることができるとし、その場合には正当な補償を与えなければならないとします。

「公共のため」とは、道路、鉄道、空港建設などの公用収用の場合に限らず、たとえば戦後の農地改革のように個人が受益者となる場合でも収用全体の目的が広く社会全般の利益のためであればよいとされています。

「用いる」とは、強制的に財産権を制限したり、収容したりすることをいいます。

補償についてですが、従来の通説では、相隣関係上の制約や財産権に内在する社会的制約の場合には補償は不要であるが、それ以外に特定の個人に特別の犠牲を強いる場合に補償が必要だとします(特別犠牲説)。具体的には次の二点から特別の犠牲か否かを判断し、その二つの要件を満たす場合に補償が必要だと解します(形式・実質二要件説)。

①財産権に対する侵害が広く一般人を対象とするか、特定人を対象としているか(形式的要件)。
②侵害行為が財産権に内在する社会的制約として受忍すべき限度内か、それを超えて財産権の本質を的内容を侵すほど強度なものか(実質的要件)。

次に、特別な犠牲の場合に必要とされる「正当な補償」とはどの程度か争いがあります。

①相当補償説
当該財産について合理的に算出された相当な額であれば、市場価額を下回ることも許されるとします。

☆司法書士試験対策 判例

自作農創設特別措置法が極端に安い収用価額で小作農地を収用したことが憲法29条3項に反しないか争われた事件

「正当な補償とは、その当時の経済状態において成立することを考えられる価格に基づき、合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常にかかる価格と完全に一致することを要するものではない」
(農地改革事件・最S28.12.23)
⇒判例は相当補償説を採り、必ずしも時価と完全に一致することを要しないとして合憲としました。

②完全補償説
当該財産の客観的な市場価格を全額補償すべきとします。
29条3項の趣旨は、特定人の不利益によって国民全体が利益を受けた場合の不公平を調整する趣旨なので、完全な補償でないと被収用者に対し不平等というのが理由です。


3 補償規定を欠く場合
憲法上補償が必要な財産権の規制立法であるにもかかわらず、補償規定を欠く場合、当該法律は無効となるかが争われています。

通説・判例は、直接29条3項に基づいて補償を請求することができると考えます。
29条3項は侵害の場合に当該財産の交換価値を金銭で填補しようとするものですが、これは裁判所にとって明確であるからです。補償規定を欠く法律も違憲無効となりません。

☆司法書士試験対策 判例

河川敷で賃借に基づき砂利を採取して来た業者が、河川付近地制限令により知事の許可が必要となったにもかかわらず、無許可で採取を続けたため起訴された。そこで同令は財産権に対し特別の犠牲を強いるものであるのに損失補償の規定を欠いており、憲法29条3項に違反し無効であるとして争った事件。

「同条に損失補償に関する規定がないからといって、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず・・・直接憲法29条3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではない」
(河川付近地制限令事件・最S43.11.27)。

司法書士試験対策・憲法30条

国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

国民の憲法上の義務は、人権保持の義務(12条)、教育の義務(26条2項)、勤労の義務(27条1項)、納税の義務(30条)があげられる。これらは、一般に国民に対する倫理的指針といった程度の意味合いしかありません。

司法書士試験対策・憲法30条

国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

国民の憲法上の義務は、人権保持の義務(12条)、教育の義務(26条2項)、勤労の義務(27条1項)、納税の義務(30条)があげられます。これらは、一般に国民に対する倫理的指針といった程度の意味合いしかありません。

司法書士試験対策・憲法31条

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

1 適正手続の保障
31条は、刑罰を科す「手続」の法定のみを定めるように読めます。そこで、犯罪や刑罰を定める「実体」の法定(いわゆる罪刑法定主義)は31条で定まっていないのかが問題となります。

条文上は明確ではありませんが、当然「実体」の法定も31条は定めていると解されています。人権保障の確保の観点からです。

さらに、手続・実体の法定が「適正」でなければならないとします。「適正」でなければ人権保障が確保できないからです。

結局31条は、「手続の法定・適正」、「実体の法定・適正」のすべてを要求していると解するのが通説です。

*「手続の適正」とは、国民に刑罰などの不利益を科すときは「告知・聴聞」等の機会が与えられなければならないことを意味します。告知とはいかなる犯罪の嫌疑で訴追されているかを知らされることで、聴聞とは自己の言い分(反論・防御・弁護)を聞いてもらうことです。告知・聴聞がない手続は適正ということはできません。

☆司法書士試験対策 判例

貨物の密輸を企てた者が有罪判決を受けた際に、密輸に関する貨物の没収されたが、第三者の所有する貨物がまじっていた。そこで、所有者たる第三者に事前に財産権擁護の機会を与えないで没収することを定めた関税法118条は違憲であると争った事件

「第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、なんら告知、弁解、防御の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であって、憲法の容認しないところであるといわなければならない。」

「関税法118条は、・・・所有者たる第三者に対し、告知、弁解、防御の機会を与えることを定めておらず、・・・憲法31条、29条に違反するものと断ぜざるをえない。」
(第三者所有物没収事件・最S37.11.28)
⇒手続の適正(本件では、告知、弁解、防御の機会)が31条で要求されているとする判例です。

2 31条と行政手続き
31条は、文言上刑事手続に関する規定です。しかし、行政権による人権侵害の危険の大きい現代においては、人権保護の観点から適用を認めるべきではないかと争いがあります。判例は、微妙な表現ながら31条の行政手続きへの適用ないし準用を認めています。

☆司法書士試験対策 判例

成田空港の周辺の工作物が暴力主義的破壊活動者の集合等に用いられるのを防ぐための使用禁止命令を認めるいわゆる成田新法が違憲であるとして争われた事件。

「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続きについては、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。」

「しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続きは、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限される権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。」
(成田新法事件・最H4.7.1)

司法書士試験対策・憲法32条

何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

裁判を受ける権利を奪われないとは、

①刑事事件においては、憲法上(31・37条)、人を処罰するには裁判が必要であるという原則がとられているので、裁判所の裁判によらなければ刑罰を科されないことの保障を意味し、

②民事・行政事件においては、自力救済を禁止している見返りとして、各人が自己の権利・利益の救済を求めて裁判所に出訴する権利の保障(裁判の拒絶の禁止)を意味します。

司法書士試験対策・憲法33条

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

不当逮捕を防止するために、司法官権(裁判官のこと)の発する令状を要求しました。現行犯の場合は、不当逮捕の恐れが少ないので不要としています。

刑事訴訟法210条は、逮捕令状を請求している余裕がないほど緊急を要する一定の場合には、まず逮捕を行い、事後に直ちに逮捕令状を請求するという「緊急逮捕」の制度を認めています。違憲の疑いが指摘されていますが、判例は合憲としています(最S30.12.14)。事後に直ちに令状の請求をすることで、不当逮捕は防止できると考えているのです。

司法書士試験対策・憲法34条

何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

逮捕後一時的に身柄を拘束するのが抑留、比較的長期に拘束するのが拘禁です。

司法書士試験対策・憲法35条

1 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

捜査機関による不当な捜査・押収手続を防止するため、裁判官の発する令状に基づかせる趣旨です。

31条と同様に行政手続きにも適用ないし類推適用(準用)されるか問題となっています。

☆司法書士試験対策 判例

旧所得税法上の質問検査権(収税官吏が税務調査にあたって納税者等に質問し、帳簿等の物件を検査でき、これを拒否したものには罰則が適用されるという制度)に基づく調査を拒否した被告人が、質問検査権は、35・38条に違反すると主張した事件。

「憲法35条1項は、刑事責任追及手続における強制について、司法権による事前抑制の下におかれるべきことを定めたものであるが、当該手続が刑事責任追及を目的としないとの理由のみで、その手続における一切の強制が、当然、同規定の保障の枠外にあると判断することは相当ではない。」
(川崎民商事件判決・最S47.11.22)

司法書士試験対策・憲36条

公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

判例は「残虐な刑罰」に現行の絞首刑による「死刑」はあたらないとします(最S23.3.12)。

司法書士試験対策・憲法37条

1 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

☆司法書士試験対策 判例

審理が一旦中断され、15年後に審理が再開された刑事事件。

憲法37条1項の規定は「単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合は、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する。」
(高田事件・最S47.12.20)
⇒37条は迅速な裁判を保障するために、審理を打ち切るという非常手段(免訴)をも認めていると解しています。

司法書士試験対策・憲法38条

1 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

自白偏重による人権侵害を防ぐ趣旨の規定です。

38条1項で保障される不利益な供述を強要されない権利を「自己負罪拒否特権」といいます。

司法書士試験対策・憲法39条

何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

前段の前半は、遡及処罰の禁止を定めています。

前段後半・後段の意味については争いがあります。1つの有力説は、刑事裁判を受けると
いう手続的負担を二重にかけない趣旨と解します(二重の危険)。被告人になることは、精神的にも経済
的、社会的にも大変なことになりますが、それを防ぐというためです。

「責任を問われない」とは、二重に起訴されることがないことを意味すると解します。二
重に起訴がされないので、当然二重に処罰されることもなくなります。

なお、確定判決があったのに再び起訴をしてはいけないということですので、判決確定前
に検察官が上訴するのは二重起訴には当たりません(最S25.9.27)。

司法書士試験対策・憲法40条

何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

抑留又は拘禁によって人身の自由を侵害された者に対し、たとえ国家機関に故意・過失がなくても金銭による補償を請求できるようにして、事後的救済を図っています。

2006年08月15日

司法書士試験対策・憲法41条

国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

国会は、①国権の最高機関、②唯一の立法機関としての地位を有することを41条は規定しています。

①国権の最高機関
この「最高機関」の意味については争いがあります。

(イ)統括機関説
国会は国民の代表機関として、内閣や裁判所の上に立ち、それらを統括する機関であるとする説です。

憲法の「最高機関」という文言にはあいますが、権力分立の原則に反し、また国政の最高決定権は国民にあるとする国民主権の原理にも合わないと批判されています。

(ロ)政治的美称説(判例・通説)
最高機関に法的意味はなく、国会は国民に最も近い国家機関であるところから、国政の中心に位置する重要な国家機関であることを政治的に強調したものにすぎないとする説です。

②唯一の立法機関
「唯一」の立法機関であるとは、「国会中心立法の原則」と「国会単独立法の原則」を意味します。

(イ)国会中心立法の原則
国会中心立法の原則とは、国会が立法権を独占し、他の機関による立法を認めないという原則をいいます。

国会中心立法の原則にも、憲法上例外があります。議院の規則制定権(58条2項)、最高裁判所の規則制定権(77条1項)等です。

(ロ)国会単独立法の原則
国会単独立法の原則とは、立法には他の機関の関与なしに国会の議決のみで法律が成立する原則をいいます。

国会単独立法も例外が認められています。
(a)地方自治特別法には、住民の投票が必要であること(95)は、その例外です。
* 「地方自治特別法」とは、一つの地方公共団体にみに適用される法律をいいます。

(b)内閣の法律案提出権
法律案の提出は立法作用の一部であり、内閣に法律案の提出権を認めることは国会単独立法の原則に反しないかが問題となっています。
(ⅰ)違憲説
法案の提出、審議、表決という立法の過程に内閣が入ることは憲法上許されないとする説です。

(ⅱ)合憲説(通説)
行政の専門化・技術化に対応するため内閣に法律案の提出権を認めるのが実際的であること、また、内閣に提案権を認めても国会はそれを修正・否決できるのだから問題がないとする説です。

③41条でいう「立法」とは、何かについて、争いがあります。
ここでいう「立法」とは、国会が制定する「法律」という名称の国法のこと(形式的意味の法律)ではなく、特定の内容の法規範の定立行為(実質的意味の法律)を意味すると解されています。次に、実質的意味の法律の具体的内容についてですが、これは争いがあります。

(イ)国民の権利を制限し、義務を課する法規範をさすとする説です。

(ロ)一般的(=不特定多数人の人に適用される)抽象的(=不特定多数の事件に適用される)法規範をさすとする説です(通説)。

(ロ)は、肥大化した行政権に対する民主的コントロールを強化するために立法の範囲を広く解した方が良いと考える説です。(イ)説ではたとえば新たな行政組織を作る場合、行政機関の設置自体は国民の権利義務に関することではないから立法ではなく、従って内閣で組織して良いことになってしまい、行政権の肥大化に対する民主的コントロールが及ぼせなくなってしまうという批判があります。

司法書士試験対策・憲法42条

国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

1 二院制
憲法42条は二院制を採ることを明らかにしています。審議を慎重にし、民意を多元的に反映させる等の趣旨からです。

2 衆議院の優越
二院制にはメリットもありますが、反面両院の意見が対立した場合に国会が機能停止に陥ってしまうというおそれがあります。そこで重大な事項については、任期が短く解散の制度もあってより民意に近い衆議院の優越を認め、迅速な国会の意思決定ができるようにしています。

(イ)衆議院のみに認められる権限
①予算先議権(60条1項)

②内閣不信任決議権(69条)

(ロ)衆議院の決議の方が優先的な効力をもつ場合
①法律案の議決(59条)

②予算の承認・条約の承認(60条、61条)

③内閣総理大臣の指名(67条)。

司法書士試験対策・憲法43条

1 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。

2 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

43条は、国会が国民の代表機関であることを規定しています。ここの「代表」の意味については争いがあります。

①政治的代表(通説)説
議員は選挙民から選出されるが、議員は選挙民の意思に法的に拘束されないとする説です。この関係を「自由委任」といい、議員は選挙民から自由に発言し表決することができ、選挙民の意思に従わなくても解職されることはないと解します(命令委任の禁止)。

統一的な国会の意思の形成が容易ですし、憲法の条文上議員は全国民の代表(43)とされているからです。

②社会学的代表(半代表)説
(イ)の自由委任の考え方は、国民の意思と議員の意思の一致を問わないので民主主義という観点からは問題があります。

そこで自由委任をその本質とはしますが(命令委任の禁止)、議会の意思が選挙結果に現れた国民の意思をできるかぎり公正かつ忠実に反映することを意味すると捉えるべきとする説です。事実上選挙民の意思を反映しつつ、同時に統一的な政策形成をすることを要請します。

司法書士試験対策・憲法44条

両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

44条を具体化した法律は、公職選挙法です。なお、選挙犯罪者の選挙権・被選挙権の停止は、44条但書の選挙権・被選挙権の平等に反しません(判例)。

司法書士試験対策・憲法45条

衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

司法書士試験対策・憲法46条

参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

参議院議員の任期は6年で、3年ごとに参議院議員の半数は改選されることを定めています。

司法書士試験対策・憲法47条

選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

47条を具体化した法律は、公職選挙法です。

司法書士試験対策・憲法48条

何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

審議を慎重にするなどのために両院制(42条)をとった意味がなくなるからです。

司法書士試験対策・憲法49条

両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

議員がきちんと活動できるように、議員の歳費受領権が認められています。しかし、裁判官と異なり在任中に減額されないことまでは憲法上保障されていません(79条6項、80条2項)。

議員は憲法で3つの特権が与えられています。①歳費受領権(49条)、②不逮捕特権(50条)、③免責特権(51条)です。

司法書士試験対策・憲法50条

両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

1 国会議員の不逮捕特権
国会議員に不逮捕特権を与えています。地方議会議員にはありません。争いがありますが、① 行政権等による不当逮捕から議員の身体の自由を守る、②議院の正常な運営(審議権)を確保しようとする趣旨の規定と解されています。

本条にいう「逮捕」とは、上記の理由から、広く公権力による身体の拘束を指します。刑事訴訟法上の逮捕、勾引、勾留のみならず、警察官職務執行法上の保護措置などの行政上の拘束も含まれます。逆に、身体の拘束を伴わない訴追は含まれません。

2 不逮捕特権の例外
(イ)法律の定める場合
不逮捕特権は「法律の定める場合を除いて(50)」認められるから、逆にいえば法律が定める場合には認められず、会期中でも逮捕できることになります。国会法で次の二つの場合が例外として定められています(国会33)。

① 院外における現行犯の場合
犯罪事実が明白であって、不当逮捕という心配がないからです。
② その院の許諾がある場合
院の許諾があるということは、院の審議を害することがないことを意味するからです。

(ロ)会期外の場合
不逮捕特権は、院の審議の確保が目的だから、審議のない会期外についてまでこれを認める必要はないからです。

しかし会期外でも、「会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない」として、公権力からの身体の自由と会期における各院の審議権が確保できるようにしています。

司法書士試験対策・憲法51条

両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

1 免責特権
国会議員に免責特権が認められています。議院における議員の言論を保障するのが目的です。存分に発言ができるようにしているわけです。地方議会議員には認められていません。

(イ)免責の対象となる行為
①議院で行った行為
免責されるのは、「議院で行った」行為(議員活動)である。免責特権は、国会議員としての活動を保障するためのものだから、場所が議事堂内に限られるという意味ではなく、議員活動の一環であれば地方公聴会のような議事堂外の場所を含みます。

②免責される行為
条文は「演説、討論又は表決」の三つを掲げますが、厳格にこれらに限られるわけではなく、国会議員の職務行為に付随する行為を含むと解されています。私語・野次・暴力行為は含まれません。

(ロ)免責の内容
免責特権の対象となる「院外で」の責任とは、一般の民事(損害賠償責任)、刑事(名誉毀損など)、公務員としての懲戒責任すなわち法的責任を意味します。

従って政治責任まで免れることを意味しないので、議院において議員が行った発言や表決について、所属政党や支持団体、選挙民が政治的責任を追及することは禁止されません。

司法書士試験対策・憲法52条

国会の常会は、毎年一回これを召集する。

常会とは、毎年1回定期に招集される国会です。通常会もしくは通常国会ともいいます。なお、国会は天皇が初秋します(7条)。

憲法は、会期に関する明文の規定はありません。憲法の常会(52条)、臨時会(53条)、特別会(54条)の規定から会期制を採用していると解されています。会期制とは、国会が期間を限って活動能力を有するとする制度です。

司法書士試験対策・憲法53条

内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

常会の閉会後に国会の活動を必要とする事態が生じうる事に備え、臨時会の制度を設けています。

司法書士試験対策・憲法54条

1 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

1 衆議院の解散
「衆議院の解散」とは、衆議院議員の任期満了前に、その全員の身分を喪失させることをいいます(45条但書)。解説は、7条を参照してください。

2 参議院の緊急集会
参議院の緊急集会とは、衆議院が解散され、次の総選挙が行われないうちに、国会を召集する緊急の必要が生じたときに、「内閣」の求めに応じて開かれる参議院の集会のことです。解散中の緊急事態に対処するために国会の権能を代行します。

(イ)緊急集会の要件
①衆議院が解散されたこと
衆議院の任期満了の場合には緊急集会は開くことができません。
②国に緊急の必要があること
 
(ロ)召集手続
緊急集会の召集権者は「内閣」です(54条2項但書)。緊急事態か否かの判断は内閣が最もふさわしいからです。参議院議員に要求権はありません。

(ハ)衆議院の同意
緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後「10日以内」に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失います(54条3項)。

緊急集会はあくまで国会の代行にすぎず、また二院制の下では、両院の意思の合致により国会の意思が決まるのが原則だからです。衆議院による事後の同意が得られなかった場合は、将来に向って議決の効力は失われます。混乱防止のために遡及はしません。

司法書士試験対策・憲法55条

両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

各議院は、国会を構成する独立の合議体であり、その組織・運営・内部秩序等に関して、自主的に決定する権限が認められます。この権限を議院の自律権といいます。55条は、議院の自律権の一内容として、各議員がメンバー(議員)の資格の有無を自主的に判断する権限を定めています。

なお、「資格」とは、①被選挙権を有すること、②兼職を禁止されている公職についていないことを意味します。

この資格争訟の裁判は、76条の例外です。議院の裁判に不服があっても裁判所に出訴することはできません。

議院による議員の地位の喪失には、55条のほか、58条2項の懲罰による除名があります。

司法書士試験対策・憲法56条

1 両議員は、各々その総議員三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議院過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

56条1項の例外として、憲法改正の発議(96条)があります。

56条2項の「この憲法に特別の定のある場合」とは、次の5つを指します。

①資格争訟の裁判で議員の議席を失わせる場合(55条)
②両議院の会議で秘密会を開く場合(57条)
③両議院で議員を除名する場合(58条)
④衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案を衆議院で再び議決する場合(59条)
⑤憲法改正の発議の場合(96条)

司法書士試験対策・憲法56条

1 両議員は、各々その総議員三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議院過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

56条1項の例外として、憲法改正の発議(96条)があります。

56条2項の「この憲法に特別の定のある場合」とは、次の5つを指します。

①資格争訟の裁判で議員の議席を失わせる場合(55条)
②両議院の会議で秘密会を開く場合(57条)
③両議院で議員を除名する場合(58条)
④衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案を衆議院で再び議決する場合(59条)
⑤憲法改正の発議の場合(96条)

司法書士試験対策・憲法57条

1 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。

3 出席議員五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

会議公開の原則が定められています。国民の前に国会の活動を明らかにし、国民の監視と批判のもとに、民意による政治を実現しようという趣旨です。

しかし、公開が国の利益に反する場合があるため、公開されない秘密会が認められています。秘密会は、82条2項と異なりどのような議題でも秘密会となしえます。また、82条2項(裁判官の全員一致)よりも要件が緩やかです。

司法書士試験対策・憲法58条

1 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。

2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員三分の二以上の多数による議決を必要とする。

議院の自律権の内容として、1項で役員選任権、2項で規則制定権と議員懲罰権を定めています。

議員規則制定権は、国会中心立法の原則の例外になります。

議員懲罰権は、議院の自律権なので裁判所の審査は及びません。なお、議院による議員の地位の喪失には、58条2項のほか、55条の資格争訟裁判があります。

司法書士試験対策・憲法59条

1 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。

4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

59条1項の「この憲法に特別の定のある場合」は、2パターンあります。

(イ)両議院の可決がなくても法律が成立する場合

①衆議院が法律案を再議決した場合(59条2項)

②参議院の緊急集会で法律案について可決した場合(54条2項)

(ロ)両議院の可決があっても、なお法律が成立しない場合

地方特別法として住民の投票を要する場合(95条)

*両院協議会
両院協議会は、各議院の議員10人から構成される会議体です。両議院で異なった議決をした場合は、妥協の余地を探るため両院協議会を開いてできるだけ両院一致の意思決定をさせようとしたものです。両院協議会は必ず開かなければならない場合(必要的両院協議会)と開催が任意である場合(任意的両院協議会)とがあります。

・必要的両院協議会⇒予算(60条2項)、条約(61条)、内閣総理大臣の指名(67条2項)

・任意的両院協議会⇒法律(59条2項)

司法書士試験対策・憲法60条

1 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

予算についての衆議院の先議権と予算に関する議決の衆議院の優先権を認めています。衆議院の任期が参議員よりも短く、解散も認められており、より直接国民の意思を反映するからです。

60条2項の両議院協議会は、必ず開かないといけないことに注意してください。

司法書士試験対策・憲法61条

条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

60条の2項のみの準用なので衆議院の優越はありますが、、衆議院の先議権はありません。

司法書士試験対策・憲法62条

両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

1 国政調査権とは
国政調査権とは、「議院」が憲法上の権限を効果的に行使するために必要な調査を行う権限をいいます。国政上の諸権能を適切かつ十分に遂行するためには正確な情報や資料が必要だからです。

国政調査権の方法は「証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求すること」であり(62)、例えば刑罰による制裁をもって証人の出頭を強制することもできます。ただ、国政調査権の性質から住居侵入、捜索、押収、逮捕のごとき刑事手続上の強制力が認められないのは当然です。

2 国政調査権の性質
国政調査権の性質については、41条の「国権の最高機関」の捉え方との関連で争われています。
(イ)独立権能説
国政調査権は、「国権の最高機関」に基づく、国権を統括するための独立の権能とする説です(41条で統括機関説を採る説です)。

(ロ)補助的権能説(通説)
国政調査権は、議院の権能を実効的に行使するための手段として認められた補助的権能とする説です(41条で政治的美称説を採る説です)。

3 国政調査権の限界
国政調査権は国政の全般に及ぶのが原則ですが、権力分立と人権との関係で限界があります。

(イ)司法権との関係
① 「現に係属中」の訴訟事件については、裁判内容の当否を目的とした調査や訴訟指揮の当否を目的とする調査は、裁判官の独立(司法権の独立)を侵害し許されません。
② 「判決確定後」に裁判内容を批判するために行われる調査は、その裁判に影響することはもうないのでかまわないとする説もありますが、その後の同様の裁判に対する事実上の影響力があり、裁判官の独立を害するおそれがありやはり許されません。
③ 現に係属中の事件との「併行調査」は、裁判所の審理とは別の観点から、裁判所と無関係に行われる限りは直ちに司法権の独立を害するものはいえず許されます。

(ロ)行政権との関係
① 内閣は行政権の行使について国会に対して責任を負うとされているところから(66条3項)、行政権については全般にわたって調査権を行使することができます。
② 検察権も行政作用ですが、裁判と密接する準司法的性格をもつことから司法権に類似する独立性が認められなければなりません。そこで起訴・不起訴の当否を批判する目的や捜査に支障を及ぼすような方法による調査は許されません。

(ハ)人権との関係
基本的人権を侵害するような調査が許されないことは当然です。個人のプライバシーや思想・良心の自由を侵害するような調査権行使はゆるされません。

司法書士試験対策・憲法63条

内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

議院内閣制のあらわれの規定です。

司法書士試験対策・憲法64条

1 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

裁判の公正と国民の信頼を確保するために、裁判所外に裁判官をチェックする弾劾裁判所が設けられています。76条2項の例外です。

罷免のみで、懲戒はできません。

司法書士試験対策・憲法65条

行政権は、内閣に属する。

行政権とは、すべての国家作用のうちから立法権と司法権とを除いたものをいいます(控除説)。内閣が行政各部を指揮監督し(72)、全体を統括することを65条は意味しています。

1 独立行政委員会の意義
独立行政委員会とは、内閣から独立した合議制の行政機関をいいます。多様な行政活動の中には、政治的中立性を必要とする行政(人事院、国家公安委員会、公正取引委員会など)や、専門性・技術性の高い行政(公正取引委員会など)があり、それらは多かれ少なかれ内閣から独立して活動することが望ましいところから認められています。

独立行政委員会のような内閣から独立した行政機関を設けることは、「行政権は、内閣に属する」とする65条に違反しないか問題とされます。実際上の必要性から、違憲説はなく合憲説の中で理由が分かれます。

(イ)行政委員会も内閣が委員任命権と予算権を有している以上、内閣のコントロール下にあり、従って合憲とする説。

これに対しては、任命権と予算権があることだけで内閣の監督下にあるとするならば、裁判官の任命権は内閣にあり(79条1項、80条1項)、また予算権も内閣にあるところから、裁判所も内閣の監督下にあることになってしまうと批判されます。

(ロ)国会のコントロールが及べば合憲とする説
この説は、①と②を理由として挙ます。

①国会は「唯一」の立法機関とし(41)、司法権は「すべて」裁判所に帰属する(76条1項)と規定されているのに、行政権は「すべて」内閣に属すると規定されていないので、行政権を内閣が独占させる必要はないこと。

②行政権を内閣の下に置いたのは、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う(66条3項)」とされているからです。つまり、行政に対する民主的コントロールが及ぼしたいわけです。行政委員会も、国会が組織についての立法や国会に対する報告義務を課すなどによりコントロールできれば合憲としてよいと考えることができます。

司法書士試験対策・憲法66条

1 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。

2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。

3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

1 内閣
内閣は、内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織されます。閣議の議決方法について争いはありますが、全員一致を要すると解するのが通説です。66条3項の連帯責任がその理由です。

2 議院内閣制とは
立法権(議会)と行政権(内閣)との関係については、日本国憲法は、議院内閣制をとっています。議員内閣制とは、議会と内閣とを分離させながら、内閣の存立の基礎を議会の支持の上に置き、議会に対して連帯責任を負うという制度です。

議院内閣制は、権力分立という点は徹底していませんが、議会と内閣との協同による政策の推進が容易になるというメリットがあります。民主主義の要請から、行政権を民主的にコントロールするために設けられた制度です。

2 議院内閣制の本質
議院内閣制の本質的要素は次の点にあります。
(イ)議会と内閣とが一応分立していること。
(ロ)内閣が議会に対して連帯責任を負うこと。
(ハ)内閣が議会の解散権を有することが、議院内閣制にとり不可欠の要素かは争われています。
①均衡本質説(議院内閣制に解散権は必要)
内閣を議会が信任し、内閣が議会に責任を負うだけでなく、内閣に解散権が認められてはじめて議院内閣制を採っているといえるとする説です。内閣と議会との抑制・均衡を重視する考え方です。

②責任本質説(議院内閣制に解散権は不要)
内閣を議会が信任し、内閣が議会に責任を負うという体制を採っていれば、議院内閣制といえるとする説です。解散権は議院内閣制にとって本質的なものではないとする考え方です。

3 日本国憲法における議院内閣制
憲法上「議院内閣制」という文言はありませんが、以下の各規定により議院内閣制をとっていると解されています。

(1)内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う(66条3項)。
(2)内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない(69)。
(3)内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する(67条1項)。
(4)国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばなければならない(68条1項但書)。
(5)衆議院総選挙の後の国会で、内閣は総辞職しなければならない(70条)など。

司法書士試験対策・憲法67条

1 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。

2 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

両院が異なった指名の議決をしたときは、必要的両院協議会となります。しかし、10日以内に参議員が指名の議決をしないときは、両院協議会についての規定は無いことに注意してください。

司法書士試験対策・憲法68条

1 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。

2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

内閣総理大臣が国務大臣を任命・罷免することを定めています。なお国務大臣は、国会議員の中から過半数選ばれるのですが、一院のみから選んでも問題ありません。

任命及び罷免は、天皇により認証されます(7条5号)。

司法書士試験対策・憲法69条

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

衆議院の内閣不信任のとき、内閣は①総辞職するか、②10日以内に衆議院を解散するかを選択することになります。

司法書士試験対策・憲法70条

内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

内閣の総辞職とは、内閣構成員全員が同時に辞職することです。

70条前段は、内閣の一体性を確保するためです。

70条後段は、内閣の存立が国会の意思に委ねられるという議院内閣制からきています。新たに国会(衆議院)が構成されたと以上、それまでの内閣は、存立の基盤を失ったことになるので、総辞職しなければならないということになるわけです。

司法書士試験対策・憲法七十一条

前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。

国政に支障が生じないための規定です。

司法書士試験対策・憲法七十二条

内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

内閣総理大臣が首長として、内閣を代表して行う職務を定めています。

司法書士試験対策・憲法七十三条

内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること

1 条約(73条3号)
条約とは、文書による国家間の合意です。条約を締結することは内閣の権能ですが、国会の承認が必要となっています(73条3号)。国会による民主的コントロール下に置くためです。この承認手続きは、衆議院が優越します(61条)。

条約が国会の承認を得たときは、内閣が批准書を作成し、天皇がそれを認証します(7条8号)。成立した条約は、天皇によって公布されます(7条1号)。

2 政令(73条6号)
行政機関が制定する法規範を命令といいます。そのうち、内閣の制定するものが政令です。

国会を唯一の立法機関とする憲法のもとでは、行政機関による立法は、法律の規定を執行するための細目を定める場合(執行命令)、または法律によって委任された事項を具体的に定める場合(委任命令)にのみ認められます。

司法書士試験対策・憲法七十四条

法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

法律の執行責任、政令の制定・執行責任を明らかにするための規定です。

なお、署名や連署を欠いても法律や政令の効力には影響がありません。

司法書士試験対策・憲法七十五条

国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

内閣一体性を確保し内閣の正常な執行を妨げられないようにするための規定です。また、内閣総理大臣の首長性の強化のためです。

司法書士試験対策・憲法七十六条その1

1 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。

3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

76条1項は、司法権が裁判所に帰属する旨を定めています。

司法権とは、(イ)具体的な争訟について、(ロ)法を適用し、宣言することによってこれを裁定する国家の作用」をいうと解されています。社会生活上の紛争解決のための国家作用だから具体的な争訟(紛争)を要するわけです。また、客観的基準(=法)にしたがって裁定するのが合理的だからです。

「具体的な争訟」とは、裁判所法3条でいう「法律上の争訟」と同じ意味で、①具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、②法の適用によって終局的解決に適するものをいいます。

①具体的な権利義務に関する紛争がないのに、抽象的に法令の解釈又は効力について争うことはできません。

☆司法書士試験対策 判例

昭和25年の警察予備隊令により自衛隊の前身たる警察予備隊が設置された。当時の社会党の委員長が警察予備隊の設置は憲法9条に違反するとして、設置、維持に関する一切の国の行為の無効確認を求めて提訴した事件。

「裁判所が現行の制度上与えられているのは司法権を行う権限であり、そして司法権が発動するためには具体的な争訟事件が提起されることを必要とする。我が裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに、将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない。」

「最高裁判所は法律命令等に関し違憲審査権を有するが、この権限は司法権の範囲内において行使されるものであり、この点においては、最高裁判所と下級裁判所との間に異なるところはない。」

「現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない」
(警察予備隊違憲訴訟・最S27.10.8)。

②法令を適用して解決できる問題ではない個人の主観的意見の当否や学問上、芸術上の優劣をめぐる争い、純然たる宗教上の争いなどは、司法権の範囲外であり裁判で争うことはできない。

☆司法書士試験対策 判例

創価学会の会員が「正本堂」建立のため寄付したが、そこに安置された御本尊である「板まんだら」が偽物であり、自己の寄付は錯誤で無効だとして返還を求めた事件。

「具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であっても、法令の適用により解決するのに適しないものは裁判所の審判の対象となりえない、というべきである。」

「要素の錯誤があったか否かについての判断に際しては・・・宗教上の価値・・・宗教上の教義に関する判断がそれぞれ必要であり、いずれもことがらの性質上法令を適用することによっては解決することのできない問題である。本件訴訟は、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとっており、その結果信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断は請求の当否を決するについての前提問題であるにとどまるものとされてはいるが、本件訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものと認められ、・・・結局本件訴訟はその実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであって、裁判所法3条にいう法律上の争訟にあたらないといわなければならない。」
(板まんだら事件・最S56.4.7)

司法書士試験対策・憲法七十六条その2

1 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。

3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

司法権に属する事柄であっても、なお裁判所が審査をしない、又はできない例外があります。

1 憲法の明文上の限界
①国会議員の資格争訟の裁判(55条)と②裁判官の弾劾裁判(64条1項)は、裁判所で審査は行われません。

2 各議院の自律権に属する事項
各議院の自律権に属する行為については司法権は及びません。各議院の議事手続(定足数や議決の有無など)や議員の懲罰に関する事項などは、各議院が他の機関からの圧迫や干渉を受けないで自主的に決定すべき事柄なので、裁判所の審査も排除されます。

☆司法書士試験対策 判例

昭和29年改正新警察法は、野党議員反対の議場混乱の中で成立したため、その成立手続が違憲無効ではないかが争われた事件。

新警察法は、「両院において議決を経たものとされ、適法な手続によって公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重すべく、同法制定の議事手続に関する所論のような事実を審理してその有効無効を判断すべきでない」
(警察法改正無効事件・最S37.3.7)。

3 自由裁量に属する事項
行政機関や立法機関の自由裁量に委ねられた行為には、原則として司法権は及びません。それらは裁量の範囲内で行われている以上、当・不当の問題となるだけで、裁量権を著しく逸脱したり、著しく濫用した場合でない限り司法権は及びません。

4 統治行為
統治行為とは、国家機関の行為のうち、高度の政治性を有するものについては、法的判断が可能でも司法権が排除されるものをいいます。高度な政治問題は、非民主的な機関である裁判所が決定すべきではないからです。

統治行為論の根拠については、争いがあります。
(イ)自制説
高度な政治問題についての裁判所の審判・介入は裁判所が政治的紛争に巻き込まれ中立性や独立性を脅かすことになり、また収拾できないような混乱を引き起こすことともなるから裁判所は自制すべきであるとします。
(ロ)内在的制約説(判例)
統治行為は、裁判所の自制としてではなく、三権分立下における司法権の本質的限界すなわち内在的制約であるとします。高度の政治問題に対する判断は、国会・内閣の判断に委ねられており裁判所の審査外であるとします。

5 統治行為の範囲と限界
統治行為として、国家の外交的・対外的問題(条約の締結、国家・政府の承認など)や国会と内閣との相互の関係に関する行為(たとえば衆議院の解散が憲法上の要件を満たしているか)などがあげられます。

☆司法書士試験対策 判例

デモ隊が米空軍立川基地に立ち入り、安保条約刑事特別法で起訴されました。その中で被告人が日米安全保障条約は憲法9条に違反し無効だと主張した事件。

日米安全保障条約は、「わが国の存立の基礎にきわめて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、その内容が違憲かなりや否やの法的判断は、・・・裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、従って、一見きわめて明白に違憲無効であると認められない限りは、司法審査権の範囲外のもので」ある。
(砂川事件・最S34.12.16)。
⇒判決が統治行為論を採用したかどうかはっきりせず、曖昧な判例です。高度の政治性を有する日米安全保障条約には司法審査は一律に及ばないというわけではなく、「一見きわめて明白に違憲無効」であれば、司法審査が及ぶとしている点に注意が必要です。

☆司法書士試験対策 判例

衆議院の抜き打ち解散によって議員資格を失った苫米地(とまべじ)氏が、この衆議院の解散は憲法69条を根拠にしていないことや適法な閣議を欠いていたことを理由に違憲無効であるとして争った事件。

「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。」

「この司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と解すべきである。」
(苫米地事件・最S35.6.8)。
⇒衆議院の解散は、統治行為(内在的制約説が根拠)であるとしました。

6 団体の内部事項(部分社会の法理)
団体の自治を尊重し、純粋に団体の内部事項の問題は、司法審査の対象にならないという考えが部分社会の社会の法理です。

判例によると、団体が部分社会(国家ないし一般市民社会とは別に、自立的な法規範を有し、それによって、内部的秩序が保たれている団体)を形成する場合、一般市民社会秩序と関係を有しない内部的な問題は司法審査の対象から除外されるべきであるとします。

しかし、これを貫くと、団体内部の構成員の人権救済が一切図られなくなってしまうので、判例は「法律上の争訟が、団体(部分社会)の内部問題に止まる限りは司法審査は及ばないが、一般市民秩序と関わる場合には審査権が及ぶ」とします。

「一般市民法秩序に関わる」か否かが審査権が及ぶか否かの基準です。

☆司法書士試験対策 判例

地方議会の議員が3日間の出席停止の懲戒決議を受け、それが違法だと争った事件。

「自律的な法規範をもつ社会ないし団体にあっては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがある・・・本件における出席停止のごとき懲罰はまさにそれに該当する」

「議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止まらない」から、司法審査が及ぶ
(最S35.10.19)
⇒司法審査は、出席停止には及ばないが、除名処分は市民法秩序につながる問題であるので及ぶとしています。

☆司法書士試験対策 判例

単位不認定処分を受けた学生が、その処分の違法を主張して提訴した事件。

「単位授与(認定)行為は、・・・純然たる大学内部の問題・・・裁判所の司法審査の対象にはならない」

「専攻科終了の認定(卒業認定)についてはそれが連続すると除籍処分となり、これは一般市民法秩序と関わる問題なので司法審査が及ぶ」
(富山大学事件・最S52.3.15)

☆司法書士試験対策 判例

政党から除名処分を受けた者が、除名処分の無効を主張して提訴した事件。

「政党の結社としての自主性にかんがみると、政党の内部自律権に属する行為は、法律に別段の定めのない限り尊重すべきであるから、政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決に委ねるのを相当とし」

「政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審査権は及ばない」

「処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範・・・に照らし、・・・適正な手続に則ってされたか否かによって決すべきであり、その審理も右の点に限られる」
(共産党袴田事件・最S63.12.20)

司法書士試験対策・憲法七十六条その3

1 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。

3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

1 司法権の独立
司法権の独立とは、司法権が外部からの圧力や干渉を受けることなく、独立・公正に行使されなければならないという原則をいいます。裁判が公正にされるためには裁判所や裁判官が政治勢力や社会勢力から圧迫や干渉を受けないことが必要であるところから認められます。

司法権の独立には二つの意味があります。一つは司法権の立法権、行政権からの独立しているという意味(司法府の独立)と、もう一つは裁判官は裁判をなすにあたって独立して職権行使できるという意味です(裁判官の職権行使の独立)。

2 裁判官の職権行使の独立
76条3項を裁判官の職権行使の独立といいます。

ここでいう「良心」を憲法19条「思想・良心」でいうところの良心と同じ意味に解する説もありますが(主観的良心説)、それだと裁判官によって判決が変ってしまうので、通説は「裁判官としての客観的良心(職業倫理)」を意味すると解します(客観的良心説)。

3 裁判官の身分保障
裁判官の職権行使の独立を実効的なものにするために、憲法は裁判官の身分保障をしています。

(イ)裁判官の罷免
裁判官の罷免(免職)は、次の三つの場合以外は認められません。
①心身の故障
裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合です(78条前段)。
②公の弾劾
弾劾裁判所の裁判によって罷免される場合(68条前段)。
③最高裁判所裁判官の国民審査
最高裁判所の裁判官については、国民審査で投票者の多数が裁判官の罷免を可とした場合には罷免されます(79条2項・3項)。

(ロ)裁判官の懲戒
裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできません(78条後段)。立法機関による懲戒も禁じられていると解されています。

(ハ)裁判官の報酬
裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受け、在任中減額されることはありません(79条6項、80条2項)。報酬の面から身分を保障したものです。

4 司法府の独立
司法府の独立は、他の国家機関(立法府や行政府)からの干渉を排除することを意味します。つまりできる限り、運用を司法府の自主性に委ねる趣旨です。司法府の独立を定めていると解されている規定は以下のとおりです。

(イ)行政機関による裁判官懲戒の禁止(78条後段)
裁判官に対する行政権の不当な干渉を排除し、裁判所の自主的な処理に委ねて司法府の独立を保障したものです。

(ロ)下級裁判所の裁判官の指名(80)
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣がこれを任命します。最高裁判所の指名した名簿によることにして裁判官の人事に関する司法権の独立を保障しています。

(ハ)最高裁判所の規則制定権(77)
最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有します。司法運営に関する司法権の独立を保障したものです。

司法書士試験対策・憲法七十六条その4

1 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。

3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

1 特別裁判所
特別裁判所とは、特別の人や事件につき裁判するために、通常裁判所の系列から独立して設けられる裁判機関をいいます。戦前の軍法会議や皇室裁判所がその例で、通常裁判所に上訴ができませんでした。

特別裁判所は、これを設置することができません(76条2項前段)。通常裁判所にすべての司法権が統一的に帰属することになっています。これによって法の下の平等と法の統一的解釈が可能となるからです。

特別の人又は事件のみを扱う裁判所でも、それが通常裁判所の系列に属する裁判所であれば、それは特別裁判所ではありません。家庭裁判所は、特別の事件のみを扱う裁判所ですが、通常裁判所への上訴の途が開かれており、通常裁判所の系列に属するから特別裁判所に当たりません。

2 行政機関による終審裁判の禁止
(イ)行政機関は、終審として裁判を行うことができません(76条2項後段)。これは逆にいえば「前審」としてなら裁判を行うことができることを意味します。専門的・技術的な問題については、行政機関による裁判を認めた方が正確かつ迅速な裁判ができるところから認められています。

(ロ)公正取引委員会の審決、人事院の裁決などがありますが、いずれも「前審」として行われ、不服のある者は通常裁判所へ出訴することができるので違憲ではありません。

司法書士試験対策・憲法七十七条

1 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
 
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

司法権の独立の点から裁判所の自主性・独立性を確保するためと専門性の尊重の点から、最高裁判所に規則制定権を定めています。

77条で規則制定権で定めるとされる事項は、法律でも定めることができると解するのが通説・判例(最S30.4.22)です(競合事項説)。

司法書士試験対策・憲法七十八条

裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。

司法権の独立を確保するために不可欠な裁判官の身分保障について規定しています。

裁判官の身分保障のために、78条は裁判官の罷免事由を限定し、裁判官の懲戒処分について行政機関・立法機関(解釈)の関与を排除しています。

「公の弾劾」とは、憲法64条の弾劾裁判所による裁判を意味しています。

司法書士試験対策・憲法七十九条

1 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。

3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。

4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。

5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

最高裁判所の長たる裁判官である「最高裁判所長官」は、内閣の指名に基づき天皇が任命します(6条2項)。その他の最高裁判所の裁判官である「最高裁判所判事」は、内閣が任命し天皇が認証します(79条1項)。

最高裁判所の裁判官の国民審査を定めています。内閣の恣意的な任命の危険を防止するために、任命を国民の民主的コントロール下におく趣旨です。

国民審査の法的性格は、一種の国民解職(リコール)の制度であると解するのが通説・判例です。

☆司法書士試験対策 判例

現行の制度は罷免を可とする裁判官のみ「×」を付す方式なので、白票がすべて罷免を可としない方に算入されることになり、棄権の自由を奪い、思想・良心の自由(憲19)を侵害することにならないかが問題となった事件。

判例は解職説に立ち、国民審査は「解職の制度であるから、積極的に罷免を可とするものと、そうでないものとの二つに分かれるのであって、前者が後者より多数であるか否かを知らんとするものである。罷免をする方がいいか悪いかわからない者は、積極的に「罷免を可とするもの」に属しないこと勿論だから、罷免を可としない者に数えても思想・良心の自由に反しない」としました。
(最S27.2.20)

司法書士試験対策・憲法八十条

1 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。

2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

下級裁判所裁判官の任命・任期・定年・報酬について定めています。ちなみに定年は65歳(簡易裁判所判事は70歳)となっています。

下級裁判所とは、高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所を指します。

司法書士試験対策・憲法八十一条

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

1 違憲審査制の意義
違憲審査制とは、国家行為が違憲かどうかを審査する制度をいいます。これは、98条1項でいう憲法の最高法規性を裁判所の違憲審査権を通じて担保し、国民の基本的人権を確保することにあります。

2 違憲審査制の類型
(イ)付随的審査制(アメリカ型)
通常裁判所が、具体的事件の解決のために必要な限度で法令の違憲審査を行うとする制度。
(ロ)抽象的審査制(ドイツ型)
通常裁判所とは別の憲法裁判所が、具体的事件と関係なく抽象的に法令その他の国家行為の違憲性を判断する制度。

3 日本国憲法の違憲審査制
我国の違憲審査制は、上記(イ)の制度を採用したと解するのが通説・判例です。
①違憲審査を定めた憲法81条は「第6章司法」の中に規定されており、司法とは伝統的に具体的な権利義務をめぐる紛争の存在を前提とし、それに法を適用して解決する作用であること、②憲法が抽象的審査制を認めるなら、それを明示する規定(提訴権者、手続、判決の効力など)が置かれるはずですが、それがないことが理由です。

☆司法書士試験対策 判例

旧社会党の代表が抽象的審査制説を前提に、自衛隊の前身である警察予備隊の設置が違憲無効であるとして提訴した事件。

最高裁は「現行の制度の下では、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合にのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所が具体的事件を離れて抽象的に法令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない」として、訴えを却下しました(警察予備隊違憲訴訟・最S27.10.8)。

4 違憲審査権の主体
81条が「最高裁判所は・・・」と規定するところから、違憲審査権は最高裁判所のみに認められるのか問題となります。

判例・通説ともに下級裁判所にも違憲審査権を肯定します。違憲審査は司法権の行使に付随して行われるものである以上、同じく司法権を行使する下級裁判所にもこれが認められるのが自然であるからです。

そこで、81条は、最高裁判所が違憲審査権についての「終審」の裁判所であることを明らかにしたものであり、下級裁判所の違憲審査権を排除したものではないと解します。

5 違憲審査の対象
81条は、違憲審査の対象として「法律、命令、規則又は処分」を列挙しています。

(イ)処 分
「処分」とは、具体的・個別的な国家行為をいいます。「判決」もここでいう処分に含まれます(通説)。憲法は国政のあらゆる局面において憲法の最高法規性を貫徹しようとしていると考えられ、そうであるならば裁判所の処分である判決を除外する理由はないからです。

(ロ)条 約
81条に「条約」が書かれていないので、条約は違憲審査の対象とならないのかが問題となります。

これは条約と憲法とはどちらが優位にあるかの議論にかかわってきます。

①条約優位説
条約と憲法との効力関係につき、条約優位説を採れば、憲法は条約の下位規範であるから条約に違憲審査権が及ばないのは当然のこととなります。

この説は、憲法の採用する国際協調主義の立場から、条約優位と考えるべきとします。よって、81条が条約を明文からはずしているとします。

②憲法優位説(通説)
条約と憲法との効力関係につき、憲法優位説が通説となっています。

条約優位説を採ると、憲法に反する条約が締結された場合、法律より簡易な手続で成立する条約によって憲法が改正されたのと同じことになってしまい国民主権に反すること、また、そもそも条約の締結権は憲法によって付与されたものであるので(73条③号)、自らの根拠となった憲法に条約が優位するのはおかしいというのが理由です。

③憲法優位説内部の争い
憲法優位説から直ちに条約に対する違憲審査が肯定されるわけではありません。
(a)憲法優位説に立ちつつ、条約は違憲審査の対象とならないとの説。
これは、81条から条約が外されていること、条約は国家間の合意で政治性があることを理由とします。

(b)憲法優位説に立ちつつ、条約も違憲審査の対象となるとする説
これは、81条は例示列挙にすぎないとします。条約に違憲審査権が及ばなければ、違憲の条約により国民の人権が侵され、憲法の基本的人権尊重主義に反することを理由とします。

判例は、条約の違憲審査は可能であることを前提とした上で、その条約が「高度の政治性」を有し、「一見極めて明白」に違憲でない場合は憲法判断を控えるという論理をとっています(砂川事件・最S34.12.16)。

6 違憲判決の効力
裁判所が具体的事件を解決する過程である法律の条文を違憲無効と判断した場合、その法令の効力はどうなるか争いがあります。

(イ)一般的効力説
違憲判決により、その法令は無効となるとする説です。すなわち一般的に効力を失い、国会による廃止の手続をとるまでもなく廃止されたのと同じになると解します。
①最高裁判所が違憲と判断した法令は、98条1項により「その効力を有しない」ことになる。
②個別的効力説に立つと、その法令はなお残ったままとなり、それが他の事件で適用された場合に不平等となるおそれがある。

(ロ)個別的効力説(通説)
裁判所が違憲と判断した法令も当然効力を失うわけではなく、その事件に限って適用しないという効果が生ずるだけであるとする説です。

①付随的審査制の下では、当該事件の解決に必要な限りで審査が行われる。従って違憲判決の効力も当該事件に限って及ぶと解すべきであること。
②一般的効力説は、裁判所による法令の廃止(消極的立法)を認めることになり、それは権力分立に反すること(41条に抵触する)。

個別的効力説を採っても、最高裁によって法令の違憲が確定すれば、それに沿って立法府はその法令を改廃するであろうし、行政府もその執行を差し控えるから、実際には一般的効力説に近い効果をもたらします。結局、両説に大きな差異があるわけではありません。

司法書士試験対策・憲法八十二条

1 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。

2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない

裁判の公正を確保するために、裁判を国民の監視下におく裁判の公開を原則としました。

対審については、裁判官の全員一致で公序良俗を害する恐れがあると決定した場合は非公開にできます。

必ず公開するものは、下記のとおりです。
①判決
②政治犯罪、出版に関する犯罪、人権に関する問題の対審

司法書士試験対策・憲法八十三条

国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

財政を国民代表機関の議会の統制下におく趣旨の規定です(財政民主主義)。

司法書士試験対策・憲法八十四条

あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

財政民主主義の国の収入面に関する具体化した規定です。租税法律主義を定めます。

☆司法書士試験対策 判例

長年物品税法上非課税とされてきた物件を、通達によって課税対象としたことを争った事件。

「課税がたまたま所論通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基く処分と解するに妨げなく、所論違憲の主張は、通達の内容が法の定めに合致しないことを前提とするものであって、採用しえない。」

司法書士試験対策・憲法八十五条

国庫を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

83条の財政民主主義を支出面で具体化した規定です。

司法書士試験対策・憲法八十六条

内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

83条の財政民主主義を受けて、国会が予算の最終決定権を有することを定めています。

憲法は、予算の作成・提出権は内閣が有すること(73条5号)、そして国会の議決は衆議院に先議権があることを定めています(60条1項)

司法書士試験対策・憲法八十七条

1 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。

2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

不足の事態による予算の不足に対応するため、予備費の制度が設けられています。

予備費の支出について、国会の承認が得られなくても支出行為の法的効力には影響がありません。内閣の政治責任が問われるだけです。

司法書士試験対策・憲法八十八条

すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

戦前のように、皇室が莫大な財産によって不当な支配力を有しないように皇室の財産を国会のコントロール化に置いています。

司法書士試験対策・憲法八十九条

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

89条の前段の趣旨は、政教分離原則を財政面から保障したものです。

公の支配(国のコントロール)に属さない金を出すのはダメで、公の支配に属する団体にはお金を出しても良いとする89条の後段の趣旨については争いがあります。

①私的事業の自主性確保が趣旨とする説

⇒自主的に活動している私的団体に国が金を出すと、金を出す以上口も出すということで国が不当に介入するおそれがあるのを防止する趣旨と考えます。もともと自主的に活動していない団体なら金を出しても良いことになります。

「公の支配」とは、事業の自主性がないといえるほどの国の強い監督下にあることと解します。そこで、私学助成法の私立学校への助成は、強い監督下に私立学校がないので違憲と解します。

②公費の濫用防止が趣旨とする説

⇒国のコントロールが及ばない団体に無駄遣いされるのを防ぐ趣旨と考えます。無駄遣いしないように国が監視・監督している団体になら金を出して良いこととなります。

「公の支配」とは、公費の濫用を防止しうる程度に監督で足りると良いと解します。そこで、私学助成法の私立学校への助成は、公費の濫用を防止しうる程度の緩やかな監督下に私立学校があるので合憲と解します。

司法書士試験対策・憲法九十条

1 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
 
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

国の収入支出の決算は、会計検査院が検査します。国の会計を国会と会計検査院で二重に監督するわけです。なお、会計検査院とは、合議制の独立行政委員会です。

司法書士試験対策・憲法九十一条

内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

内閣が、国会及び国民に対して財政状況を布告する義務があることを規定し、財政状況公開の原則を明らかにしています。

司法書士試験対策・憲法九十二条

地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

地方自治の本旨とは、地方自治にとって本質的要素である①住民自治と②団体自治を意味します。

①住民自治とは、地方自治が住民の意思に基づいて行われることを意味します。民主主義の表れです。

②団体自治とは、地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体自らの意思と責任の下でなされることを意味します。権力分立(自由主義)の表れです。

司法書士試験対策・憲法九十三条

1 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

住民自治より、議会を設置すること、地方公共団体の長や議員等が住民の直接選挙で選ばれることを規定しています。

地方公共団体とは、都道府県と市町村を指します。

☆司法書士試験対策 判例

特別区が憲法上の地方公共団体であるかが争われた事件

「地方公共団体であるといい得るためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもっているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることを必要とするものというべきである。」とし特別区はこの基準に当てはまらないとした。
(最S38.3.27)

司法書士試験対策・憲法九十四条

地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

条例とは、地方公共団体がその自治権に基いて制定する自主法をいいます。議会が定めるものだけでなく、長の制定する規則や委員会の制定する規則等も含まれます。

条例は①自治事務に関するものでなければならない、②法律に反してはならないという限界があります。94条が「法律の範囲内で」条例制定権を認めており、条例の効力は法律に劣るからです。

☆司法書士試験対策 判例

集団行進について道路交通法と徳島市公安条例による規制の競合が問題となった事件。

「条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾定職があるかどうかによってこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体から見て、右規定の欠如が当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項を規律する国の法令と条例が並存する場合でも、校舎が前者と別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんら矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえない」
(徳島市公安条例事件・最S50.9.10)

司法書士試験対策・憲法九十五条

一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

国会単独立法の原則(41条)の例外の規定です。地方自治特別法の制定にあたっては、国会の議決だけでなく地方公共団体の住民の過半数のどういた必要です。

司法書士試験対策・憲法九十六条

1 この憲法の改正は、各議院の総議員三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

憲法改正の手続が通常の立法手続より厳格な手続をふまないといけない旨を定めます。このように改正手続が厳格な憲法を硬性憲法といいます。日本国憲法は、硬性憲法です。

司法書士試験対策・憲法九十七条

この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

98条とセットの規定です。憲法が最高法規の実質的理由がなによりも重要な人権保障を定めたものだからということを述べています。

司法書士試験対策・憲法九十八条

1 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

98条1項は、憲法が最高法規であることを定めます。

なぜ最高法規なのかは、1つ前の97条に記載されているように憲法は人権保障という最も大切なものを定めたルールだからです。97条と98条はパックの規定と解されています。

司法書士試験対策・憲法九十九条

天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

憲法は、国家権力を縛るためのものです。よって99条は、国家権力側の者に憲法を尊重養護する義務を課しています。99条中に国民は、当然入っていません。